相続事例004 遺言書があるがために困ったことに!

15.04.13 | ビジネス【相続】

前回は遺言書があったためにうまくいった相続の事例をご紹介いたしましたが、

本日は遺言書があったために困ってしまった事例をご紹介いたします。

 

Iさん(仮名)は長年父親を手伝って事業を営んでこられてきました。数年前に父親が入院してからは、Iさんが事業の中心となりがんばってきました。そんなある日、父親が体調を崩し、入院したまま亡くなってしまいました。

Iさんは、事業をしてきた土地・建物は実質自分が使っているから、当たり前のように相続するもので、そして兄弟(兄と弟)も異存はないものと思っていました。そして、兄弟で相続の話を進めようとしたところ、長兄から、父親は公正証書で遺言書を作成していたので、これからその内容を確認しようと話がありました。遺言は「不動産のすべてを長男に、二男(Iさん)と三男には500万円ずつ相続させ、残ったものは三人に均等に相続させる」という内容でした。Iさんは、事業で使っている土地・建物を相続できないことになり、困ってしまいました。

 
長男は、遺言通りにしたい意向、二男(Iさん)と三男は、遺産総額からして、500万円では少ない、不動産すべてを長男が相続するでは非常に困る、という意見です。


意見は真っ向から分かれていますが、相続人たちは元々仲が悪いわけではなく、誰もが長期化や、今以上の争いになることは避けたい意向です。事態は、伯父さんを中心とした親族を巻き込み、親族会議に発展しました。


遺言の証人でもある伯父さんから、父親がどんな思いで遺言を作ったのか、について話がありました。伯父さんから、「不動産は田舎で、売買も難しそうだから、唯一男の子の子供がいる長男に引き継がせ、今あるお金(遺言作成当時)は1,000万円だから、二男と三男に引き継がせよう、残りはほとんどないと思うが、みんなで相談して引き継いでほしい」というようなことを父親が言っていた、ということでした。


誰かを贔屓したり、誰かが作らせて、遺言を残したわけでないことが分かりましたが、二男(Iさん)の事業のことが抜けているし、財産調査も不十分で、遺言に記載されているよりかなり多くのお金があり、遺言の内容では話が決まらないことは明らかでした。


数か月の後、伯父さんから、遺言は確かにあったが、このままでは何も進まないようなので、相続人3人で遺産分割協議をして進めたらどうか、と話がありました。

熟慮の末、最終的には長男が納得し、遺産分割協議をすることとなりました。


難航した場面もありましたが、父親が亡くなってから、8か月後になんとか相続人全員が同意をし、遺産分割協議がまとまりました。

 
Iさんは、事業の不動産を確保することができ、ようやく安心して、仕事に精を出すことができるようになりました。

遺言書を作成するときには、相続人の状況をよく考慮し、また財産調査を正確に行い、遺言内容は、具体的に決めること、またどんな思いで遺言を作成したのか、付記事項を残すとより効果がある、と改めて深く感じた案件でした。

次回も、相続の事前対策が不十分で困った事例をお送りいたします。

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