相続事例005家族のことを思って準備したのに

15.04.20 | ビジネス【相続】

本日は、相続人に意思を伝えたにも関わらず、伝え方に不備があり、結果として相続がうまくいかなかった事例をご紹介いたします。伝え方の重要性をご理解いただきたいと思います。

 

Kさん(仮名)の父親は、長年工場で勤めてきて、15年前に定年で退職し、穏やかな日々を過ごされてきました。

そんな父親が、ちょっと具合が悪いと病院に行ったら、腫瘍が見つかり、手術することになりました。長くても1か月半くらいの入院だろうとのことで、Kさんは少し心配しましたが、そのうちに退院し、元気になると思っていました。


ところが、手術が終わり2週間もした頃、他に悪いところが見つかり、再度手術が必要になると知らされました。その手術が終わっても、なかなか退院できず、3か月が過ぎました。


ある日、心配しているKさんに、父親から、「話があるので一人で病院に来てほしい」と連絡があり、一人でお見舞いに行きました。そうしたら、父親から、「自分はもう長くないと思うから、よく聞くように。自分が亡くなった後に、子供たちが困らないように、財産のリストと、どのように引き継いでほしいかを書いておいた。長男であるお前(Kさん)を中心に、間違いなく手続するように」と話がありました。突然のことでびっくりしたKさんでしたが、父親を思い、きちんとすると約束しました。


それから2か月後、父親は亡くなりました。相続人は、Kさんと弟と妹の3人です。父親が作った財産リストを基に、手続きをすることとしました。まず、各金融機関等に連絡をし、残高の確認と手続書類を送ってもらいました。財産リストの中に、「○○2,000万」という項目があり、金融機関名も書いてありません。どこに問い合わせても、実在が確認できませんでした。また、遺言ではありませんでしたが、財産リストには誰に何を引き継いでほしいと書かれてあり、相続人間ではそのようにしようと決めていました。


「○○2,000万円」はまったく見つからないまま、4か月が過ぎました。遺産分割もほぼ決まっていたにもかかわらず、その分が不明なので、それを引き継ぐ予定の弟及び妹との話し合いもうまく進まなくなってきてしまいました。


結局、その分は見つからなく、ないものとして相続人間で何度も話し合いを行い、父親が亡くなってから1年後に、やっとまとまり、手続きを完了することができました。


父親の思いを大切にしようとしてきたKさんでしたが、結果として、違う形になってしまったこと、兄弟仲がギクシャクしてしまったことをとても悔いていらっしゃいました。


残された者のことを思い、自分の意思を伝えることは大切です。それが、不備の無いようにするためには、正確に書くこと、また意思を正確に伝えるためには、相続人全員のことを考えて、遺言という方法もあること、更に、手続きで困らないようにするためには、エンディングノートの活用という方法もある、ということをもっと広く認知いただくようにしていかなければいけない、と改めて感じる案件でした。


次回は、相続の手続き上の困ったことの事例をお送りいたします。

 
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