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人材育成における損得
13.09.15 | ビジネス【人的資源】
日本の企業の強みは、長い間、
人材育成にあると言われてきました。
その昔、商家では農村から
奉公人として若者を雇い入れ、
一人前になるよう仕込んだ上、
のれん分けと言って独立させてやったものです。
仕事を覚えることと
独立開業がメリットになりますから、
奉公中の待遇は最低限だったでしょう。
現代の大企業では、
新卒を採用して年功序列賃金で若い時は安く、
独立開業はなくとも定年まで
雇用を保障するという形になりました。
このような雇用制度は、
人材育成に力を入れました。
若いフレッシュなうちに仕事を
覚えてもらうわけですから、
企業にとって得策です。
教育訓練は、外部に委託することもありますが
内部の職場訓練が多く、
企業内でつぶしが効くように異動が頻繁にできる、
企業への帰属意識が強くなる、などが特徴です。
他方、時代が進むと若者の側から、
年功賃金の不公平感や好きな仕事ができないなどの不満が出てきました。
また、自社で培った能力がよそで役に立たないとか、
新しい知識や技術を学ぶ機会が少ないことも問題となります。
このような昔ながらの人材養成は、企業にとってもいたしかゆしです。
スモールビジネスの場合は、
あまり長期的視野からの人的投資はもとがとれないため、
即戦力のエキスパートを雇い入れることが多いでしょう。
けれども、少し長い目で見て、若い人を育てるとか、
幹部候補生を確保する必要もあるかもしれません。
人材育成の目的として重要なのは、仕事上のスキルだけでなく、
健康・やる気・チームワーク・向上心などの醸成があります。
そしてまた、従業員によっては、給料重視型もいれば、
キャリアに関心を持つタイプの人もいるでしょう。
経営側と従業員側とのニーズをマッチさせることも大切です。
●プロフィール●
佐野 陽子(さの・ようこ)
慶應義塾大学名誉教授。1972年慶應義塾大学商学部教授。87年から2年間、日本労務学会代表理事。89年から2年間、慶應義塾大学商学部長・大学院商学研究科委員長。96年東京国際大学商学部教授。2001年から4年間、嘉悦大学学長・経営経済学部教授。主な著書:『はじめての人的資源マネジメント』『企業内労働市場』(ともに有斐閣)。
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