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制約社員制度、その『ココロ』とは

14.06.15 | ビジネス【人的資源】

制約社員というとき、そのココロはなんでしょうか。

それは「あくまで正社員」ということでしょう。

海外から見ると日本の正社員は不思議な存在です。
海外では、本人が希望しない配置換えはあまりないですし、
本人が希望すれば能力と空席がある限り異動もありですから。

企業成長のための人的資源熟考

その代わり、事業所がまるごと閉鎖になれば
失業ということにもなります。
本人の希望が満たされないときは転職をもって応える、
というのが基本型です。

日本が突出して多いのが非正規労働です。

とくに、本人が正社員を希望するのに
いったん路線からはずれると
正規雇用に入り難いということが問題です。

片や、正社員でも、ある期間、非正社員の条件で働きたい、
けれどもいったん正規を離れると元に戻れないということで
いやいや働くか、退職するか、という人も増えています。
制約社員とは、両者を調和させようというものです。

制約社員でなく契約社員の事例を挙げます。

日本の代表的な光学機器企業で、40年間、
契約社員として働いた女性社員がいます。

美術系の学校を出た彼女は、希望してはじめから正社員でなく
契約社員として入社しました。
定年年齢を超えても、請われて何回も契約を更新して通算40年になったそうです。

普通、契約社員というと特技とか資格を活かす例が多いのですが、
長くいると企業から何でも任せられて、
結局コーディネーターとしてその部局の仕事は全部こなしていました。
いわばベテラン管理職のような立場でしょうか。

契約は年単位かそこらだと思いますが、
彼女はなぜ、ボーナスも退職金も捨てて契約社員を通したかというと、
そのつど交渉したほうが高給となり得策だったからだそうです。

また、事実、彼女の能力は優秀だったのでしょう。
現在は、大手企業を退職した夫と都内で悠々自適の生活を楽しんでいます。

何が言いたいかというと、会社と対等に交渉できる場合は、
契約社員でも正社員でも関係ないということ。
そうでない場合の救済装置が正社員制度なのです。


[プロフィール]
佐野 陽子(さの・ようこ)
慶應義塾大学名誉教授。1972年慶應義塾大学商学部教授。87年から2年間、日本労務学会代表理事。89年から2年間、慶應義塾大学商学部長・大学院商学研究科委員長。96年東京国際大学商学部教授。2001年から4年間、嘉悦大学学長・経営経済学部教授。主な著書:『はじめての人的資源マネジメント』『企業内労働市場』(ともに有斐閣)。

[記事提供]

(運営:株式会社アックスコンサルティング)

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