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生産性を上げるにはワキから攻める方法も?

14.09.14 | ビジネス【人的資源】

何のために生産性を上げますか?
おそらく企業は競争力を高めるためでしょう。
それもいまは地球上で競争する時代ですから、国際競争力が問題になります。
毎年、スイスのビジネススクールから発表される国際競争力ランキングというのがあります。
2014年の60ヵ国中では、アメリカが1位で日本は21位でした。

国際競争力というのは、企業にとってのビジネス環境を表すもので、ここでは経済状況・財政政策・ビジネスの効率性・インフラを毎年調査します。
1990年代に調査が始まったころは、日本が1位になった年も1回ありましたが、そのほかでは日本は2位をキープ。
それが失われた20年の間の、日本の凋落ぶりは絵に描いたようです。

企業成長のための人的資源熟考

いずれにしても、競争力を決めるものは、企業の外的環境が第一。
けれどこれは、宇宙人でもなければ自由に選べるものではありません。
次に、どのようなビジネスをどのように行うかでしょう。
けれども大部分の場合、ゼロから出発するのではなく、既存の設備や人材やのれんなどを持っていますから、それを活用しようと思えば制約が多くなります。
でも、企業には目に見えない財産があるものです。
それは、経営の考え方であり精神です。

ここに、単なるお題目でなく、社長の考えを実践した例を紹介しましょう。
東証一部上場の株式会社大塚商会は、2013年末の利益が昨年に続いて2期連続の増益。
創業は1961年で創業者は38歳で起業した大塚実会長。
2000年の上場を機に長男の大塚裕司氏に社長の座を渡し、在位40年を期に引退しました。
資本金は103億円、従業員数は子会社を含め8,000人です。

この企業の特徴は、コピー機を中小企業に普及させ、次いでオフコンそしてパソコンとOAシステムを軒先に届けるというやり方。
さらに今は、オフィス用品のお届けもしています。
これほどの生産性の高さは、これまでの歴史と工夫と見通しからもたらされたものでしょうが、私は大塚実会長の考えに興味があります。

「自分は、業界の付き合いだけはしたくない。その時間があれば社員とメシを食う」というのでした。
そして社員との会食を大切にしていました。

日本では、業界の付き合いを大切にします。
群れたがるからでしょうか。
また、官公もそのように指導しています。
いざというとき統制しやすいからでしょう。
でもこの時間は目に見える生産性には寄与しません。
それより大塚会長との会食は、その後の社員の脳裏に刻み込まれ、生きていることでしょう。

会社への一体感や忠誠心は、簡単に消えるものではありません。
2000年以前のこのような経験が、現在の生産性にどれくらい影響を与えているか。
測ることはできなくとも、その精神はこの会社の中に生きているのではないでしょうか。


[プロフィール]
佐野 陽子(さの・ようこ)
慶應義塾大学名誉教授。1972年慶應義塾大学商学部教授。87年から2年間、日本労務学会代表理事。89年から2年間、慶應義塾大学商学部長・大学院商学研究科委員長。96年東京国際大学商学部教授。2001年から4年間、嘉悦大学学長・経営経済学部教授。主な著書:『はじめての人的資源マネジメント』『企業内労働市場』(ともに有斐閣)。

[記事提供]

(運営:株式会社アックスコンサルティング)

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