歯科医療の特徴を考える
14.11.12 | 業種別【歯科医業】
1998年に歯科の業界に入ったころ、さまざまなことに戸惑いを覚えたことがあります。
その一つが、「最終補綴物」という言葉です。
一見、「終末期の高齢者に最後の入れ歯を…」という話に見えますが、そうではなく、咬み合わせや色などを調整しながら、金属焼付陶材(メタルボンドと言います)による人工歯などをセットする際に使われます。
歯科業界誌編集長の手記
歯科医療は、口腔機能の回復を目的とする形態の復元とリハビリテーションを主軸としていますが、ここで用いられる人工物が自費診療の場合、高額になるためか、人工物の「持ち」を医療従事者も医療消費者も、非常に気にする傾向にあります。
「自費の材料の方が硬くて長持ちしますよ」というアナウンスを、患者さんだけでなく、歯科医師自身も本気で信じ、「人工物の長持ち」を、治療の目的とすら考えているふしがあります。
もう一つ、歯科界でしか通用しない言葉が「予知性」です。
無理に英訳して、さらに日本語に直訳し直すと「予言可能性」という不気味な言葉になりますが、この言葉も、極端に言えば、単に「最終補綴物」による治療が、どれだけ長持ちするかという意味にしか解釈されていません。歯科医療はモノを媒介とする医療であるが故に、他の医療とは異なる性格を持っていると言えるでしょう。
その典型が、咀嚼能力と歯牙形態の復元を目的として、骨に意図的、かつ不可逆的な損傷を与えるインプラント治療だと言えます。
「インプラントの“予知性”」と言う場合、そのインプラントが骨の中に刺さっている期間のことを指します。生体に相応のリスクがあるはずですから適応を限定し、全身状態の把握、術後のメインテナンスが欠かせませんが、これまで、あまりそのような側面は注目されてきませんでした。
しかし、近年になり、歯科医師の意識に変化が見られ、インプラントのメリットとともにリスクやデメリットを考慮するようになってきました。
小社はこのほど、歯科医師100人へのアンケートやインタビューをもとにした『歯科医師100人に聞いたインプラントのメリットとデメリット』(日本歯科新聞社、1800円+税)を刊行しました。
これには、そのような最新の意識変化が反映されています。
【記事提供元】
月刊アポロニア21(日本歯科新聞社)
編集長 水谷惟紗久
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