SS経営コンサルティンググループ

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中小企業の経営を丸裸にする5つの重要指標!【前編】

22.03.23 | 【代表コラム】

桜の花咲く頃となりましたが、皆様お健やかにお過ごしでしょうか。さて、税理士を超えた経営のパートナーであるSS総合会計では、決算書が読めるようになり経営を改善したいとお考えの経営者様のお役に立つべく【決算書】にまつわるコラムをお送りしております。 今回はお待ちかねの第4弾!ぜひご覧ください。

《目次》
中小企業の経営を丸裸にする5つの重要指標!【前編】
1.5つの重要指標とは?
2. まず指標を出すために今の決算書を財務会計⇒管理会計に加工する必要がある!
3. 重要指標1:固定費生産性
4. 重要指標2:労働分配率

中小企業の経営を丸裸にする5つの重要指標!【前編】
1.5つの重要指標とは?

それは、①固定費生産性②労働分配率③総資本経常利益率(ROA)④当座比率⑤自己資本比率の5つです。損益計算書分析における重要指標は①②であり、貸借対照表分析においては④⑤が重要指標になってきます。③だけは特殊で貸借対照表と損益計算書の両方を使う重要指標となります。またもう一つの重要な観点をお伝えします。決算書を分析する上で意識すべき重要な2点があります。一つは収益性です。つまりどれだけの投資に対してリターンがあるかが分かるものでなければなりません。もう一つは安全性です。経営は収益性が高いことが大事であると同時に安全でなければなりません。この2つを満たして初めて経営がバランスが取れているといっていいでしょう。それでは実際に重要指標の解説に入りましょう。

2.まず指標を出すために今の決算書を財務会計⇒管理会計に加工する必要がある!

実は、会社の儲けの構造を理解するためには決算書を眺めていても何も見えてきません。大切なことは、決算書を加工することです。どのように加工するのか?それは損益計算書を変動損益計算書に直してください。変動損益計算書とは、簡単に言えば、経費項目を「変動費」と「固定費」に分類して表示したものをいいます。通常の決算書は年に1回税務署や銀行に提出することを目的としており、過去の情報しか載っておらず将来の意思決定にはまったく役に立たないため過去会計であるといえます。それに対し変動損益計算書は、儲けの構造が明確にわかるため将来の意思決定に役立てることができ、まさに未来会計であるといえます。加工手順としましては、まず通常の損益計算書の「製造原価」「売上原価」「販売費及び一般管理費」「営業外損益」を、「変動費」と「固定費」に分類します。変動費とは、売上の増減に伴って変動する経費のことで具体的には原材料や商品仕入、外注加工費、販売手数料などが該当します。一方固定費とは売上の増減にかかわらずかかってくる経費のことで、例えば家賃や水道光熱費、そしてもっとも大きな項目だと人件費がそれに該当します。それが出来たら次にストラック図を書いていきます。ストラック図は、西研究所の代表取締役で「戦略会計入門」などの著書でもある西順一郎先生が考案した図表のことです。変動損益計算書に直した数字をこの図に落とし込むと非常に分かりやすく会計に精通していない人でも簡単に分析することが可能となります。さあここまでできたらいよいよ重要指標の具体的な説明に入ります!

3.重要指標1:固定費生産性

固定費生産性とはズバリ限界利益(粗利)÷固定費のことをいいます。つまりここで投入は固定費、成果とは付加価値であり、付加価値は売上高から変動費を引いた粗利となります。基本的に損益計算書では経常利益を安定して最大化することがもっとも大事になります。なぜなら経常利益が最終的に会社の儲けの源泉になってくるからです。それを念頭においた上でこのストラック図を見てみると明確に分かることがあります。それは粗利(限界利益)で固定費を賄えば経常利益が出る仕組みになっているということです。変動損益計算書に直すと、儲けの構造がいとも簡単にわかってくるのです。粗利最大化のためには、売上を上げる②変動費を下げるかのどちらかになります。売上を上げるための施策として主に①単価を上げる②客数を上げる③リピートを増やすの3つがあります。通常経営者は売上を上げるためには②③ばかりをやっきになって行う傾向にあります。しかし一番効率がよいのは当然①単価を上げるになります。②③は数量が多くなるために変動費は比例的増加し、さらにそれをこなすために固定費も緩やかに増加傾向になります。しかし単価UPであれば、変動費固定費はそのままに粗利額を簡単に増やすことができるのです。稲盛和夫先生が「値決めは経営」とおっしゃっていましたが、まさに粗利を上げるためにはこの値決めが最重要課題となってきます。変動費を下げるためには金額よりも比率を意識する必要があります。変動比率をいかに下げるかが粗利最大化のポイントとなるのですが経営者が意外と苦手としている分野となります。やはり経営者は事業を拡大していく攻めの戦略は好きなのですが経費節減といった守りはおろそかになる傾向にあります。変動比率を下げるポイントとしては、原価管理や在庫管理といった地道なマネジメントが最終的に功を奏します。やはり経営はバランスが大事なのです。様々な手を尽くして粗利を最大化させることが固定費生産性を向上させる大きなポイントとなります。
では、固定費生産性はどれくらいが適正と言えるのでしょうか?当然100%を超えていないといけないは言うまでもありません。100%を切れば赤字ということになりますから。合格点としては115%になります。ここをクリアすれば収益性はまずまずといったところになります。もし125%を超えることがあればかなり生産性が高いと言っていいと思います。スーパーグッドですね!この固定費生産性は売上高経常利益率と違って全業種において共通する指標になりますので、是非ここを目指してみてください。

4.重要指標2:労働分配率

次にもう一つ重要な収益性及び生産性を示す指標が労働分配率になります。労働分配率=人件費÷粗利(限界利益)×100%で表されます。先ほど固定費生産性のところで固定費についてはあまり触れませんでしたが、中小企業において固定費の中で最も大きな割合を占めるのは間違いなく人件費なのです。では、適正な労働分配率はどれくらいになるでしょうか?中小企業の場合には業種問わず、50%~60%台であれば、まず経常利益を出すことができます。しかし、70%を超えてくると途端に利益が出にくくなります。80%を超えると黄色信号でこの状態が続くと事業再生の危険性が出てきます。今50%~60%の労働分配率が適正といいましたが、例えば製造業の中でも機械の稼働率によって生産性が高まるような業種であれば当然労働分配率は低くなってくるケース(例えば30%台等)もあります。ただ、中小企業の場合には、やはり人が粗利を稼ぐという構造は変わりません。なぜならビジネスモデルのほとんどが労働集約型ビジネスだからです。最近流行ののネット上のプラットフォーム型ビジネスであれば、労働分配率は少なくて済むかもしれません。しかし、人が中心の中小企業はやはり労働分配率が高めに出る傾向にあります。だからこそ参入障壁が高くなるという利点もあるのです。ビジネスモデルがシステムによってしまったら財務が強固な大企業にお金をかけられてたちまち真似されてしまいます。そうではなく人がめんどくさいことを親身になって解決してくれるビジネスモデルを構築しているからこそ大企業から真似しにくくなっているということがあるのです。しかしマネしにくいだけあって自社での再現性に乏しく、人が足りなくなってしまったり高齢化してしまうとたちまちリスクになってしまうビジネスモデルでもあるわけです。ここが何とももどかしいところでもあるのです。

いかがでしたでしょうか。次回の代表コラムでは、中小企業の経営を丸裸にする5つの重要指標!【後編】をお伝えしていきます。どうぞご期待ください!

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