税理士法人ユリウス

今週の税務ニュース(12/16~22)

14.12.23 | ニュース・情報


 先週一週間の税についてのニュースをピックアップして解説します。
 ご質問にもお答えしますので、お気軽にご連絡ください。

(サマリー)
 法人税率引き下げ 来年度2.5%へ調整
 消費税「10%時に軽減税率導入」 自公が連立政権合意
 2013年の相続税申告は前年比22%増の1.5兆円
 地方への本社移転・事業所拡大で税額控除 政府検討
 日印の二重課税回避制度の承認取得へ 商社
 住宅減税延長2019年6月末まで、贈与税の非課税枠も拡大
 法人税率、3年で20%台に引き下げを検討
 昭和電工グループの商社、所得隠し2億円超

12/16 法人税率下げ、来年度2.5%へ調整

 税率の引き下げは課税ベースの引き上げがセットで、今回も外形標準課税の強化などで2%分の財源を確保しますが、今回は実質3~4000億円の実質減税となる見通しです。

 このお金が外に出てくれば景気向上につながるのですが、投資意欲は乏しく、実際にはお金が会社に貯められたままになっています。
 先日も、企業の内部留保が323兆7000億円と、過去最高を記録したばかりです。

 ところで、法人税率は将来に向かって引き下げられる傾向がありますので、節税による利益の先送りには経済合理性があります。
 ただし、節税をし過ぎるとキャッシュが無くなり、経営に支障を来すことも。くれぐれも慎重に検討しましょう。


12/16 「10%時に軽減税率導入」明記 自公が連立政権合意

 消費税の軽減税率は制度設計が難しく、実務の現場の混乱が予想されるので止めてほしいというのが正直なところです。
 例えば、スーパーで買うお米が自宅用なら5%、飲食店が使う場合は8%、なんてことになると、お店ではそれをどうやって判断するのでしょう。
 とても難しい問題です。

 軽減税率の対象となった商品はサービスはそれだけ価格的に有利なので、それだけよく売れることになります。
 そうすると、そこに利権が生まれます。新聞業界等が軽減税率の導入に熱心なのは、それが理由のひとつです。


12/17 2013年の相続税申告は前年比22%増の1.5兆円

 国税庁によると、2013年に亡くなった人の財産にかかった相続税は1兆5367億円で、2012年に比べて22.8%増加したとのことです。
 また、1人当たりの相続税額は2824万円で、これも前年に比べて18.6%のアップでした。

 2015年1月からの相続税の基礎控除額の縮小と税率の引き上げがいよいよ間近に迫ってきました。
 対策をお考えの方はお早めにご相談ください。


12/18 地方への本社移転・事業所拡大で税額控除 政府検討

 企業が本社を地方へ移転したり、地方での雇用を増やした場合に、その投資額を特別償却したり、税額控除を受ける事ができる制度を政府・与党が検討しています。
 これは、現政権が重要課題に掲げる地方創世の一環で、特に首都圏に集中する人口の流入を分散して東京への税収の偏りを修正し、地方に雇用を創出して経済を活性化しようというものです。

 検討中の案では、社屋などへの投資額の25%特別償却、最大7%の税額控除、地方での雇用に対し1人当たり140万円の税額控除などがあるようです。

 ただ、この制度がきっかけで企業の地方移転が進むかというと、?マークです。
 雇用促進税制も、所得拡大促進税制も、それを理由に人を雇ったり、給料を上げたりはしません。

 とはいえ、例えばたまたま地方に事業所を作ったり、現地に人を置いたりという会社には恩恵がありそうです。
 そのような予定の会社は、念頭に置いておかれるとよいでしょう。


12/19 日印の二重課税回避制度の承認取得へ 商社

 三井物産がインド子会社との間で行われる取引について、移転価格税制に基づく課税を避けるための事前承認を取得するというニュースです。

 移転価格税制とは、海外の子会社との取引について、取引価格を通常よりも安くすることで所得が海外に移転したと見なされる場合に課税される制度です。

 例えば、日本本社がから海外子会社に商品を販売し、海外子会社がこれを顧客に販売した場合、親会社から子会社への販売価格の設定によって、海外子会社で利益を多く出すことができます。
 この時、「利益が海外に移転している」と認定され、「正しい利益」を課税される場合があります。(下図)
 


 なぜこのような課税が行われるかというと、海外の方が税金が安いから、海外の利益を高くして日本で税金逃れをしているからだと考えるからです。
 
 このような課税処分を避けるため、あらかじめ「正しい価格」がいくらか、ということを、あらかじめ政府に申請をして承認してもらう制度が、今回の事前確認制度といいます。
 そうすることで、後から利益移転を理由に課税されるということを避けることができるわけです。


12/20 住宅減税延長2019年6月末まで、贈与税の非課税枠も拡大

住宅をローンで購入した場合、その金額に応じて所得税が減税となる住宅ローン減税が延長される見通しです。
これも、減税があるからといって住宅を購入する人はいないと思いますが、住宅購入を考えている人にはありがたい制度ですね。


なお、住宅資金を贈与された場合の贈与税の非課税枠についても、期間の延長と枠の拡大が検討されています。
ただ、2017年4月の10%への増税をにらみ、その駆け込み需要が見込まれる2016年1月~9月は、この非課税枠を一時的に縮小し、増税後は一層拡大する案も検討されているようです。

少し先の話ではありますが、今後の議論に注目して行きたいと思います。


12/21 法人税率、3年で20%台に引き下げを検討

政府は法人税の実効税率を3年で20%代に引き下げる検討をしています。6月の基本方針では「数年で」とされていたところ、3年に短縮する方向のようです。

法人税の減税に具体的な目処がついてきましたね。

ところで実効税率とは、国税と地方税を含めた実質的な負担割合で、東京都の場合36%程度です。ここに含まれるのは法人税、復興特別法人税、都民税や県民税、市民税、事業税、均等割りなどで、その会社の規模や所得金額によって変化します。なお、消費税や印紙税などは含まれません。

実効税率は企業の税金の負担を計算するのに使います。税収なども平均の実効税率を使って計算できます。また、経営計画などを作る場合には、この数字を使って概算の税金を計算し、借入金の返済計画を立てます。


12/22 昭和電工グループの商社、所得隠し2億円超

 半導体などを扱う商社「昭光通商」が東京国税局の税務調査で、4年間で2億数千万円の所得隠しを指摘されたというニュースがありました。

 内容は、業務委託費の支払先が経営の実態のないペーパーカンパニーで、実際は第三者へ資金提供だったというものです。同社は支払先を明らかにしなかったため、使途秘匿金と認定されたようです

 使途秘匿金とは、企業がその支払先を明らかにしない支出で、税法上、重い税金がかかります。まずその支出が費用として認められません。また、その支出そのものに40%の税金がかかります。
 これらは国税だけですので、地方税も加えると全体で90%近い税率になります。

 さらに、今回のように支払先を仮装している場合、重加算税が加算されます。重加算税は法人税の35%。これを含めると、支出した金額とほぼ同じ金額の税金がかかることになります。

 今回のケースでも、所得隠しの金額とほぼ同じ金額が追徴課税されています。



(お問い合わせ先)
  植田ひでちか税理士事務所
  〒134-0088 東京都江戸川区西葛西5丁目1-11-701
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