さんだん會計事務所

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行政法を守るために! 企業法務が果たすべき役割とは

23.01.10 | ビジネス【企業法務】

企業活動は、常にさまざまな法律を確認して行う必要があり、時には法的な判断を迫られることもあります。
企業活動に関する法律として、『行政法』と呼ばれる法律があり、その行政法の中には、独占禁止法や特定所取引法、食品衛生法や建築基準法、薬機法といったさまざまな法律があり、これらは公官庁が運用しています。
今回は行政法と企業の関係、行政法に対応するうえで企業法務が果たすべき役割について解説します。

官公庁が運用する行政法の性質とは

一般に、企業が日々の業務を行うにあたって、行政法を意識する場面はあまりないかもしれません。
しかし、行政法はさまざまな形で、私たちのビジネスに影響を及ぼしています。
たとえば、『独占禁止法』や『特定商取引法等』は、ビジネスに関わる行政法としてよく耳にするかと思われます。

行政法は、憲法や刑法などと同じく『公法』に分類されますが、行政法を運用しているのは、名前の通り、行政すなわち官公庁です。
先にあげた独占禁止法であれば公正取引委員会、特定商取引法であれば消費者庁が運用主体となります。

また、行政法の特徴として、民事法等と異なり当事者間の合意により内容を変更することはできません
行政法に反するような内容を合意として締結すると、民法90条の公序良俗に反するとして契約が無効になることもあります。
さらに行政法を巡る紛争を裁判で行う場合には、行政訴訟と呼ばれる管轄で処理をされることになります。


さまざまな取引が適正に行われるよう規制

ビジネスにおいて行政法が果たす役割は、必要な規制や許認可を定め、企業が適正な形でビジネスを行うようにすることにあります。

いくつか例を見てみましょう。
先程からあげている独占禁止法であれば、適正な競争を守るためにさまざまな規制が定められています。
たとえば、談合や優越的地位の乱用の禁止など、世の中の取引が公正に行われるように定められています。
特定商取引法であれば、消費者を保護するために、企業に対する規制を定め、悪質な取引方法で無理に消費者が商品やサービスを購入しないように制限をしています。
最近では、特に通信販売に関する取引が増えてきており、この点での規制に重点が置かれるようになりました。

一方で、ビジネスを行う際の許認可について定めている法律もあります。
『食品衛生法』や『建築基準法』、薬機法と呼ばれる『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律』などでは、関連する商品やサービスを販売しようとするのであれば、管轄の官公庁に申請をして、許認可を受けるよう定められています。
このように許認可が定められているのは、扱う商品などが一歩間違えると生命や身体に甚大な被害を与えるからです。
そのため、厳格な許認可制をとり、許認可を受けた人以外のビジネスを制限しています。
このように、行政法は数多く存在しており、さまざまな役割を果たしています。


行政法への抵触回避も法務部門の役割

それでは企業としては、行政法のどのような点に気をつければよいでしょうか。
当然のことながら、法律に従うことが大原則となります。
行政法に違反すると、軽微なものであればまず行政指導がされ、指導に応じない・重大な法令違反に該当する場合等は、法律に基づいた罰則が課されることとなります。
罰則の内容はさまざまで、金銭に関わるものであれば課徴金や罰金などが、営業に関することであれば業務停止命令や許認可の取り消しなど、重たい罰則が科されることがあります。
また、実際に罰則を受けた場合、世間の評判に対しても大きな影響を与えることとなり、企業のブランドやイメージに傷を残すことにもなります。
こちらのペナルティーも見過ごすことができない大きいリスクといえるでしょう。

したがって、企業としては行政法の違反は絶対に避けるべき事態といえます。
そのためには、単純で地道ですが、企業が行う、ないしは行っているビジネスの内容を一つひとつ確認し、疑義が生じた場合は、必ず各担当の官公庁に問い合わせをし、確認を行うことが重要です。
企業法務の役割は、契約の締結や契約書のチェックがメインといったイメージもあるかもしれませんが、行政法への抵触を回避するのも重要な役割なのです。

他方で、行政法に関連する業務は実務に近く、事業部が中心となって実施していくケースが多いという実態もあり、法務部門が入りにくい分野ではあります。
しかし企業のなかで、厳格な法令順守の意識は、法務部門がもっとも強く持っているといえます。事業部だけに任せず、必ず法務的な視点も絡めて確認をしていきましょう。


※本記事の記載内容は、2023年1月現在の法令・情報等に基づいています。

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