「介護福祉士」を育てる養成課程数の激減と若者の介護離れ
15.07.03 | 業種別【介護業】
少子高齢化の影響で、介護業界は常に人材不足に悩まされています。実は、この介護業界には欠かせない「介護福祉士」を育てる大学や短大、専門学校などの養成課程の数も激減していることがわかりました。
毎日新聞の取材記事(2015.5.26)によると、「介護福祉士」の養成課程数が2008年度の「434校507課程」をピークに、2013年度の「378校412課程」へと、5年で約20%減少しています。
介護保険制度の創設に伴い、多くの大学や専門学校等が「介護福祉士」の養成課程を設け、2008年度までは増加が続きました。が、介護業界の給与水準の低さや労働実態の過酷さ等を理由に入学希望者が減少。2009年度以降は課程数が減り続けています。
入学定員についても2008年度の計2万5407人から2013年度の1万8861人へ約25%の減少。定員充足率は2013年時点で69.4%と厳しい状況を強いられています。
このような状況は地方において特に深刻化しています。たとえば、高知県内の専門学校2校はこの春の定員120名に対して入学者79名と、定数を大きく割り込んでいます。愛媛の短期大学では、定員割れが続いていた生活科学科介護福祉専攻(定員40人)の2016年度の入学生募集を停止し、同専攻は学生が在籍する間は教育内容を維持して続け、現1年生の卒業とともに廃止すると表明しました。
その一方、東京都では、「介護福祉士」の取得を目指す若者に向けた福祉科のある専門高校方針を公表し、若い人材確保のために動き出しており、動向が注目されています。
10年後の2025年には約248万人の介護職が必要とされると言われています。このままの状況が続けば約30万人の介護人材不足に陥ることが想定されており、人材確保対策は切実な問題です。
人材不足を解消するためには、まず次の世代を担う若者に「介護業界で働きたい」とイメージできる業界へと改革する必要があります。しかし、介護現場の多くは「仕事が体力的にきつい」「人手不足で休めない」「仕事の割に給与が安い」など、他の業界と比較しても労働条件や労働環境が整備されていない状況に陥っています。このようなマイナスイメージの増大によって、若者の進路から「介護」への道が除外されていきつつあることがうかがえます。
マイナスイメージを払拭するためにも、国と介護業界全体が一体となって、若年者の労働条件の向上、キャリアパス計画、賃金水準の引き上げ、従業員研修・管理職研修の充実などの対策を着実に積み重ねて、堅実な経営基盤を築き上げることができる介護業界としての土壌の整備が大切ではないでしょうか。
介護事業最前線
[記事提供]
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