大阪プライム法律事務所

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NPO法人の社員総会と新型コロナ対応

20.04.29 | 非営利・公益

新型コロナウィルスの感染拡大のために、5月から6月にかけて定時社員総会を予定していたNPO法人などは、その開催に大変に苦労されているものと思います。
内閣府からは、6月末までに提出期限が到来した事業報告書等(法29条)について、NPO法人からの提出が遅延した場合でも、9月末までを目安に督促等を行わないことを含めた柔軟な対応を各所轄庁に依頼したということですから、まずは、開催時期をずらすという対応も検討されてよいと思います。認証NPO法人は念のために各所轄庁に相談することがよいと思います。
実際に社員総会を開催するにあたって、いろいろと工夫も可能です。その点についてご紹介いたします。

■社員総会や理事会の開催について
新型コロナの感染予防のためとしても、社員総会の開催を省略することはできません。また、定款において「社員総会に付議すべき事項」を理事会議決として規定している法人が大半だと思いますが、その場合は、社員総会の前に理事会での議決も必要となります。 

■なるべく人を集めずに社員総会や理事会を開催する工夫
(1)「書面による表決」・「電磁的方法による表決」・「表決の委任」を勧める
ご自身の法人の定款において、社員総会と理事会の(表決権等)の条項で、「書面による表決」・「電磁的方法による表決」・「表決の委任」を定めていれば、この方法で表決した方は、実際に出席しなくとも、会議の出席者数に含めることができますので、それを最大限に活用することをお勧めします。その際には、新型コロナウィルス感染防止のため、会場参加者数を抑えるために、できる限りこれらを用いての決議参加を呼び掛けてよいものと考えます。ただし、これら「書面による表決」「電磁的方法による表決」「表決の委任」は,定款で定めていないと、会議自体が無効になることがあるので、必ず定款を確認してください。

なお、社員総会の開催には、議事録作成のために議長1人と定款で定める議事録署名人に必要な人数は、実際に参集する必要があります。全く誰も集まらない、ゼロというわけにはまいりません。 

「書面による表決」とは
事前の総会資料に「書面表決票」を同封し、各議題への賛否を記入して返送してもらう方法です。ファックスでもかみません。
「電磁的方法による表決」とは
総会資料を送付した上で、「電子メール」など紙媒体で出力することが可能なもので各議題への賛否を表決してもらう方法です。
「表決の委任」とは
総会資料に「委任状」を同封し、総会に出席する他の者を代理人として表決を委任するものです。これはおそらくどの法人でも前からされていたものと思います。
議事録について
こうした方法で開催をした場合に、議事録の出席者数には、例えば、社員総数○名のうち出席者○名(うち書面表決者○名、表決委任者○名)といったように、表決方法別の内訳人数を記載し、全体の出席者数に含めるようにしてください。 

(2)「オンライン会議システム」による開催
WEBやネットワーク経由で社員総会を開催することについて、内閣府は3月5日に同省のサイトで公表した「新型コロナウイルス感染拡大に係るNPO法Q&A」において、「社員が実際に集まらずとも、様々な新たなIT・ネットワーク技術を活用することによって、実際上の会議と同等の環境が整備されるのであれば、社員総会を開催したものと認められます。」との見解を示しています。この方法ならば、理事会でも同様に可能と解されます。

この方法での理事会や社員総会を開催する場合は、議事説明者だけでなく、出席者が発言したいときは自由に発言できるようなマイクが準備され、その発言を他者や他の会場にも即時に伝えることができるような、「情報伝達の双方向性、即時性」のある環境が整っていることが必要となります。機器のトラブルが発生した場合の対応等については、事前に協議しておくことも重要です。 

(3)社員全員から「同意」書面を集める(いわゆる「みなし総会」方式)
これは、「理事又は社員が総会の目的である事項について提案した場合において、社員の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の総会の決議があったものとみなす」ことができるという、NPO法第14条の9で定められた方法です。

この方法をとると、実際に社員総会を開催せずともよいのですが、「全社員の同意」が必要となるため、社員数の多い法人にとっては極めて高いハードルになります。

この方法は、社員総会の場合は法律上どのNPO法人でも可能ですが、理事会で同じような方法をするためには、定款でその旨を定めておかないとできません。 

■社員総会を延期した場合の税の納付について
(1)国税(国税庁ホームページでの案内内容)
〇法人税については、確定した決算に基づいて申告を行うものとされていますので、新型コロナウイルス感染症に関連して、定時株主総会の開催が延期され、申告期限までに決算が確定しないという理由があれば、申告期限の延長が認められます。
〇消費税及び地方消費税については、法人税の場合と異なり、確定した決算に基づいて申告を行うものではありませんので、定時株主総会の開催延期 により決算が確定しないという理由だけでは、その期限を延長することはできません。

(2)地方税
事務所の所在する市町村までお問い合わせください。 

■新型コロナウイルスの感染拡大に係る特定非営利活動法人(NPO法)制度の運用について
3月5日に内閣府のサイトにて、「新型コロナウイルス感染拡大に係るNPO法Q&A」が公表されていましたが、4月21日に更新版が出されました。更新されたのは所轄庁への提出書面の期限についてです。そのQA内容は以下のとおりです。 

Q1. 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、社員総会が開催しづらい状況です。社員総会の開催を省略することはできますか。また、WEBやネットワーク経由で社員総会を開催、決議してもよいですか。
A1. NPO法人は、毎年1回必ず社員総会を開催することが義務づけられていますので、社員総会の開催を省略することはできません。
この法律では「社員総会の決議の省略」(法第14条の9)を定めており、書面と電磁的記録による社員総会の開催や「持ち回り決議」も制度上可能とされています。
また、社員が実際に集まらずとも、様々な新たなIT・ネットワーク技術を活用することによって、実際上の会議と同等の環境が整備されるのであれば、社員総会を開催したものと認められます。その場合、役員のみならず、社員も発言したいときは自由に発言できるようなマイクが準備され、その発言を他者や他の会場にも即時に伝えることができるような情報伝達の双方向性、即時性のある設備・環境が整っていることが必要です。(出典:「解説特定非営利活動法人制度(平成25年5月)」P51~52)
上記を御参考にしていただき、社員総会について、柔軟な方法による開催を御検討ください。

 Q2. 新型コロナウイルスの感染拡大により、法第29条で規定されている事業報告書等の提出が遅れそうな場合、どうすればいいですか。(4月21日更新し、黒の下線部を追記しました。)
A2. 本Q&A 3-10-1では、特定非営利活動法人の認定に際し、「天災の影響などを申請法人の責に帰されない事情や、特にやむを得ない事情による事業報告書等の提出の遅延等があった場合にまで、実績判定期間中の期限内提出の有無のみによって認定等の可否が決定されることは適当ではありません。そうした事情がある場合には、認定申請を行う所轄庁に対して、当該事情を十分説明した上で、所轄庁と相談しつつ、認定の手続を進めることとなります。」と記載しております。
今般の新型コロナウイルスの感染拡大は、上記の「天災の影響など」に相当すると考えられますので、事業報告書等(法29条)や役員報酬規程等(法55条)の提出の遅延につき、所轄庁に相談することを推奨します。
内閣府から所轄庁に対しては、運用上の工夫として、2020年1月1日以降6月末までに提出期限が到来した事業報告書等(法29条)や役員報酬規程等(法55条)について、提出が遅延した場合、2020年9月末までを目安に督促等を行わないことを含めた柔軟な対応を依頼したところです。(4月21日付依頼)
※上記は認定NPO法人に限るものではなく、認証NPO法人も含めたNPO法人について、事業報告書等や役員報酬規程等の提出が期限内に進められない場合、所轄庁に相談することを推奨するものです。
なお、条例の制定等による特別措置を実施予定の所轄庁もありますので、各法人におかれましては、最新の動向も踏まえ所轄庁にご相談ください。
2020年7月1日以降に提出期限が到来する事業報告書等や役員報酬規程等の扱いについては、今後の情勢を踏まえ必要に応じ検討します。

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