響き税理士法人

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意外とムズかしい!?「休憩時間」と「労働時間」

14.10.07 | 【社会保険・労務】

◆待機時間・休憩時間に関する争い

横浜地裁相模原支部にて、会社が賃金を支払わなかったトラックドライバーの待機時間について、「荷物管理を要求されて移動や連絡待ちもあり、休憩時間と評価するのは相当でない」として、労働時間に該当するとの判決が出されました(平成26年4月24日)

◆待機時間・休憩時間に関する争い
トラックドライバーの待機時間が労働時間に該当するとの判決に対し、会社側は「待機中は休憩も自由であり、労働時間には該当しない」と主張していました。
しかし、裁判所はこれを認めず、従業員・元従業員計4人に対する2年分の未払い賃金と同額の付加金の支払いを会社に命じました。
すでに会社側は控訴しています。

◆「休憩時間」とは?
休憩時間とは、労働者の権利として労働から離れることを保障されている時間をいいます。
つまり、仕事の指示を待っているような時間は、働かないことが保障されていませんので休憩時間には該当しません。

上記のドライバーの待機時間以外にも、深夜勤務の場合の仮眠時間や昼休みの電話当番の時間など、労働時間になるのか休憩時間になるのかが問題になるケースがあります。

厚生労働省の通達(昭和22年9月13日基発17号)では、「休憩時間とは単に作業に従事しない手待ち時間を含まず、労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間の意であって、その他の拘束時間は労働時間として取扱うこと」とされています。


◆休憩時間かどうか
休憩時間なのか?それとも労働時間なのか?問題になるケースについて、いくつか取り上げてみます。

○手待ち時間
手待ち時間とは、実際に作業はしていないが、指示が出されたら直ちに作業に取り掛かれる状態の時間をいいます。
この時間は、会社の一定の指揮監督下に置かれているため、休憩時間には当たらず労働時間とされ、上記判決では、ドライバーの待機時間はこの手待ち時間に該当すると判断されたと考えられます。

会社にとって、労働者の手待ち時間は利益を生み出さずして賃金を支払う義務がありますので、経営効率性の観点から改善の余地がある時間といえます。

○電話当番
いわゆる休憩時間に電話当番を置いているケースがありますが、電話対応は通常の業務ですので、その時間はもちろん労働時間となります。電話当番にあたった社員には、別の時間に休憩を与えなければなりません。

また厚生労働省のHPでは、
Q.私の職場では、昼休みに電話や来客対応をする昼当番が月に2~3回ありますが、このような場合は勤務時間に含まれるのでしょうか?
A.休憩時間は労働者が権利として労働から離れることが保障されていなければなりません。
従って、待機時間等のいわゆる手待ち時間は休憩に含まれません。
ご質問にある昼休み中の電話や来客対応は明らかに業務とみなされますので、勤務時間に含まれます。
従って、昼当番で昼休みが費やされてしまった場合、会社は別途休憩を与えなければなりません。
といった問答が掲載されています。

○手空き時間
手待ち時間のように待機している時間とは違って、業務の都合によって空いた時間が生じることがあります。
この場合についても、個別的なケースごとに休憩時間になるか労働時間になるかが判断されます。
例えば、喫茶店でコーヒーを飲んでも良い、どこかで仮眠を取っていても良いという状態であれば、会社の指揮監督下にはないとして休憩時間とする事ができると考えられます。


◆トラブル防止のために
「労働時間」か「休憩時間」かの判断については労使間で曖昧になっているケースが多く、非常にトラブルが生じやすい問題です。
「労働時間に該当する時間」及び「休憩時間に該当する時間」を社内ではっきりさせておき、労使双方が納得のうえ規定化しておくことでトラブル防止に繋がると思われます。

キリサワ税理士法人 情報発信委員会

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