大阪プライム法律事務所

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ボランティアバスに特例(災害半年まで法適用除外)

16.11.20 | 非営利・公益

NPO団体などがボランティアを被災地に派遣する「ボランティアバス」について、観光庁が、今年の5月末、公募した参加者から参加費を直接集めるのは実費を徴収するだけでも旅行業法に違反する恐れがあると全都道府県に出したことから、被災地支援のための活動自粛が広がっていました。これについて、観光庁を定める方針を決めたことを、11月08日の毎日新聞が報じています。

それによれば、ツアー内容などを社会福祉協議会(社協)が承認し、災害から半年程度以内の場合などは同法を適用しないとの内容のようです。11月中にも、都道府県や運輸局に通知するようです。

 

■観光庁の5月通知

ボランティアバスは、日本大震災の際に広がり、多くのボランティアが休日を利用して被災地に駆けつけ、復興に向けた大きな原動力となっていました。今年発生した熊本地震でも各地からバスツアーが企画実施されていました。

 

しかし、以前から、バスツアーの企画をNPOなどがすることと旅行業法規制との関係が指摘されてはいましたが事実上黙認されてきましたが、一転して厳格化の方針を打ち出したのが、5月25日付の観光庁通知でした。どうも、同庁には、こういったボランティアバスについて「旅行業法に抵触しているのではないか」との電話が多数あったことからの対応とのことでしたので、旅行業者サイドからの圧力があったのではと思われます。

 

この通知では、「登録を受けていないNPOや社会福祉協議会が主催者となり、参加代金を収受してボランティアツアーを実施する事例が見受けられる」と参加費の徴収を問題視した上で、一定のお金を集めるボランティアバスについて、実施主体が旅行業者の登録を受けるか、ツアー企画や参加費徴収を旅行業者に委託するかのいずれかでなければ違反になるとしました。違法にならないのは、参加費を徴収しないか、公募をせずにごく顔見知りだけで行く場合のみということになったわけです。このために「この条件では実施は困難」との声が上がり、熊本地震へのボランティアバスの多くで派遣を取りやめたり、すべてを無料にしたりするなど動きが出て混乱していました。しかし、被災地でのボランティア活動の重要性は言うまでもないことであり、それを続けるためには何らかの対策が必要であるとも言われてきました。

 

■新たな動き
そういった声に動かされたのでしょうか。今回の11月08日の毎日新聞の記事(ボランティアバス 観光庁が特例方針)によると、

観光庁が予定している新たな通知では、「▽発生から半年程度以内の時期にNPO法人などが地元の社協の承認を得て参加者を募る▽大学や大学のサークルが学生を対象に募集する--場合は特例として同法の適用外とする。また、従来の法解釈でも可能な方法として、▽参加者がバス会社や宿泊施設に参加費を直接支払う▽被災地1カ所につき1回だけ運行する--といったケースも明示する。」とのことです。
観光庁は「被災地へのボランティアバスは参加人数や旅程などが直前まで決まらず、旅行業者に委託することが困難なことも多いことから特例を設けた」と説明しているとのことですが、今回の特例でもボランティアバスの運行には一定の制約があるため、観光庁は10月に有識者検討会を発足し、災害ボランティアバスの実施団体が旅行業者登録をしやすくするなどの法改正も検討するとしています。

■気になる点
この動きは、厳しすぎた規制を緩くする意味で喜ばしいところだと思います。しかし、記事だけでは詳細が不明ですが、気になる点もあります。社会福祉協議会が承認する場合だけでは狭すぎる気がします。また、災害から半年程度以内の場合に限るのもどうでしょうか。熊本地震は半年が過ぎてもボランティアの必要性はあるでしょうし、東日本大震災の現場では、いまだにその必要性は残っていることからして、期限設定はニーズに合わせた配慮は必要だと思います。

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