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広告ビジネス界における世界最高峰の国際賞“カンヌライオンズ”2017の受賞作品から③

17.12.27 |

前々回から、世界最高峰の国際賞“カンヌライオンズ”の2017年話題作についてご紹介しています。 

前回は、4冠を獲得した『Fearless Girl(恐れを知らぬ少女)』と、もう1つの話題作『Cheetos Museum』を例に、第1の視点“起点創造クリエイティブ”についてご説明しました。 

今回は第2の視点から話題作を見ていきましょう。

第2の視点“データ体感クリエイティブ”とは? 

2016年は、INGグループ(Internationale Nederlanden Groep)という世界最大手の総合金融機関が行った『The Next Rembrandt(次のレンブラント)』が話題を集めました。 

これは、バロック期を代表する画家“レンブラント”の346作品を詳細に分析し、構成の仕方から絵の具の盛り方までをデータ化。 
そのデータを元に、最新の3Dプリンターを使ったデジタルペインティングによって、“次のレンブラント作品”を本人の没後347年目に創造したものです。 

このような“データを体感できる形で表現した作品”すなわち、“データ体感クリエイティブ”といえる話題作が2017年も多く見られました。 

その中でも特に目立っていたのは、オーストラリアの交通安全協会(TAC)による、『Meet Graham』(PR、アウトドア、デザイン、プロモ&アクティベーションのゴールド他受賞)です。 

TACは従来からショッキングな動画で安全運転を呼びかけてきましたが、交通事故の犠牲者数は増加する傾向にありました。 
そのため、TACは、人々がショッキングな動画に慣れていると考え、過去数十年にわたって蓄積されたデータを分析。 
外科医、エンジニア、アーティストらが協力して“交通事故に遭っても生き延びるグラハム氏”という人造人間を創り上げたのです。 
グラハム氏は、強烈なインパクトを与える、非常に奇妙な姿をしています。 
そのため、見た人の記憶に残り、結果として交通安全への広範な議論が巻き起こったといいます。 


データをリアルタイムで反映させることも 

もう一つの例として、ナイキ(Nike, Inc.)による『NIKE UNLIMITED STADIUM』(アウトドア、サイバー、デザインのゴールド他受賞)をご紹介します。 

このイベントでは、ランニングシューズ『LUNAREPIC』の認知度を高め、履き心地の良さと軽さを体感してもらう目的のもと、靴底を模した巨大スタジアムをフィリピンのマニラに建設。 
RFIDチップが内蔵された『LUNAREPIC』を履いたランナーが1周走っている間に、そのデータを蓄積。 
2周目を走る際には“1周目の自分”がアバターとして壁面に映し出され、2週目を走る自分と競争できるという催しです。 
2016年のリオデジャネイロオリンピック期間中、人々の関心がスポーツに集まっているタイミングで開催されたこともあり、イベントは大盛況。
多くのメディアにも紹介されました。 

こうしたデータをベースにしたクリエイティブは、徐々に定着しつつあります。 
今後もこうした体感型のイベントが増え、世界にブームを巻き起こしていくのではないでしょうか。 


次回:広告ビジネス界における世界最高峰の国際賞“カンヌライオンズ”2017の受賞作品から④



佐藤達郎のマーケティング論

●プロフィール●
佐藤達郎(さとう・たつろう)
多摩美術大学教授(広告論/マーケティング論)、コミュニケーション・ラボ代表。2004年カンヌ国際広告祭日本代表審査員。浦和高校、一橋大学、アサツーDK、(青学MBA)、博報堂DYを経て、2011年4月より現職。著書に、『NOをYESにする力!』『アイデアの選び方』『自分を広告する技術』『教えて!カンヌ国際広告祭』がある。

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