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契約内容は自由に決められる! ……それ、本当?

18.04.24 |

民法には、『どんな内容・形式で、誰と契約をするのかを自由に決めてよい』という原則があります。
これを“契約自由の原則”といいます。 

契約自由の原則により、分割払い・リース契約・業務委託契約・秘密保持契約など、時の社会情勢に適合した契約をすることができるのです。
お互いが求める内容を自由に決められるので、経済活動を行う際には極めて重要な原則といえるでしょう。 

では、どんな内容の契約でも許されるのでしょうか?

契約自由の不都合 

『ベニスの商人』という話をご存知でしょうか? 

ある商人が「返済ができなければ、借主の肉を1ポンド切り取って貸主に渡す」という内容の契約を交わし、ある男に金を貸しました。 
そして商人は男が返済しなかったため、裁判所に対し契約に基き、男の肉を1ポンド引渡すように請求しました。 

契約自由の原則では、当事者は自由な意思により合意した契約を守らなければなりません。
そのため、裁判所は商人の請求を認めざるを得ません。 

物語では、裁判所が一休さんのような“とんち”を効かせて、商人の請求を事実上認めない判決を出しています。 

では、実際の日本の法律では、どのようなことが起こり得るのでしょうか? 


契約自由の修正 

日本の民法では、『公の秩序または善良の風俗』(以下、公序良俗)に反する契約を無効とする規定が設けられています(民法90条)。 

たとえば、誰かに殺人を依頼する契約をした場合、そのような契約を法律が強制させるべきではないのは明らかですよね。 
そのため、たとえベニスの商人のような契約を基に裁判を起こされても、日本の裁判官は『公序良俗に反する契約は無効にする』という法律を用いて判決を下すので、“とんち”を効かせる必要はありません。 


何が“公序良俗”に反するの? 

日本で“公序良俗に反する”とされた例は、以下のとおりです。 

・代物弁済により、債務額の約5倍程度の価値のある不動産の所有権を債権者が取得すること 
・売春することを約束すること 
・賭博の負け金を返すことを目的として、金銭を貸し付けること 
・やむを得ない事由があっても、組合が脱退を許さないこと   など 

一方、“公序良俗に反さない”とされた例は以下のとおりです。 

・不倫相手に財産の3分の1を相続させること 
・全財産を相続人以外に相続させること 
・精肉業者をするために必要な許可がないのに、精肉を売ること  など 

何が公序良俗に反するのかは、その契約時点の社会状況により判断されることになります。
そのため、時代の経過とともに公序良俗に反するか否かの判断は変化していきます。 

また、労働基準法や独占禁止法など、民法以外にも契約自由を修正する法律は存在します。 

契約は“自由に決められ、経済活動を円滑にできる”というのが大原則です。
しかし、その契約が本当に有効か否かを一度、検討してみるとよいかもしれません。 

契約内容の有効性などについてご不安なことがあれば、専門家へお問い合わせください。

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