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「電子版お薬手帳」時代のクリニック

14.09.07 |

政府のIT戦略本部が打ち出した「どこでもMY病院」構想で、「電子版お薬手帳」のサービス開始は2013年度からとされていることを受けて、自治体や大手調剤薬局チェーン、その他の企業からさまざまなお薬手帳アプリや、医療・健康情報管理アプリが開発されています。

これらはあくまで個人が自分の医療や健康データを自分で管理し、健康づくりに役立てるもので、IT専門家の間では「PHR(Personal Health Record)」と呼ばれるものです。

選ばれるクリニックへのナビゲーション

電子お薬手帳への最も大きい期待は、携帯電話やスマホに搭載されることにより、お薬手帳が「携帯されるようになる」ことでしょう。

紙ベースのお薬手帳を忘れても、医師にスマートフォン等を示すことで重複した薬の処方が避けられるし、災害時や救急時にも携帯さえあれば常用薬がわかります。

そもそも平常時でさえお薬手帳の携帯率は6割程度。災害時に持ち出してもらえるとは到底期待できません。

それに加えて、「服薬管理」「投薬のムダを省く」機能があるものも。例えば、神奈川県内で実証実験が進められている「マイカルテプロジェクト」で用いられているアプリでは、あらかじめ服薬時間を入れておくと、飲むタイミングを知らせてくれます。

大手調剤薬局チェーンのアイセイ薬局が独自に開発したアプリ「おくすりPASS」では、予定通り服薬するたびに画面をタップすることで服薬記録を管理し、服薬達成率を%で表示。極めつけは「お薬代ムダ見表」で、飲み忘れ分の薬代を代金に換算して、月ごとにグラフ表示してくれます。

具体的なお金を表示して日本人の“もったいない”精神をかき立てつつ、記録を薬局側のサーバーで共有化し、次回の処方からは残薬分を減らすことで医療費のムダ削減にも役立てるわけです。

その背景にはちゃんと調剤薬局側のソロバン勘定があり、残薬確認に対する薬剤服用歴管理指導料加算を狙ったものと推察されます(現在のところはまだ算定できるのは「紙」のみですが)。


ちなみにアイセイ薬局のアプリには、「処方箋FAX送信機能」も搭載されています。つまり、医療機関で処方せんを受け取ったら、その場でパチリと処方せんを撮影し、自分が受け取りたい薬局(当然、このアプリの場合はアイセイ薬局)にあらかじめFAXで送信しておくことで、患者側から見れば薬局での待ち時間を減らせるメリットはあると思われます。

こうしたシステムが普及すると、混んでいる門前薬局を避けて、自分の帰路にある薬局が利用されるようになる可能性があります。

とすれば、「電子版お薬手帳」時代のクリニックは、より広域の調剤薬局とのリレーションに加え、かつ、患者さんのデータを共有しながら、調剤薬局・患者さんと一緒に服薬管理を行うことが求められそうです。

そうそう、待合室で処方せん撮影のために患者さんがスマホを取り出して電源をオンにすることも認めなければなりません。
個人情報保護の観点から、他の患者さんが写り込むことは避けなければならず、このあたりも一定のルール作りが求められそうです。


次回の選ばれるクリニックへのナビゲーションは、『ネットの医療情報、打率は3割』をお届けします。


[プロフィール]
中保 裕子(なかほ・ゆうこ)
医療ライターとして全国のがん医療、地域医療の現場を中心に医療者、患者、家族へのインタビューを行うほか、新聞広告等での疾患啓発広告制作、製薬企業等のマーケティング調査の実績も多い。有限会社ウエル・ビー 代表取締役。 
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