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人前であがらずに、そして臨機応変に話すための「ビジネス会話術」その1

15.08.14 |

僕は、広告代理店でクリエイティブ・ディレクターという職を長く務めていました。この職は、コピーライターやデザイナー、CMプランナーなどからなるクリエイティブ・チームのリーダー役。そして、重要な仕事の一つが、広告主にプレゼンをし、広告主からの厳しい反応を引き受け、臨機応変に受け答えをし、提案にOKをもらうことでした。 

また今では、大学での授業や講演などで、100人、200人を前に話すことを毎週毎週行っています。そうした経験から、人前であがらずに、臨機応変に話すための「ビジネス会話術」について、しばらくご紹介していきたいと思います。

今回のテーマは、「原稿の暗記をやめる」です。友人や先輩、後輩を見ていると、話すのが苦手な人ほど、原稿を暗記しようと必死になっているように思えます。きっととてもマジメで努力家の人が多いのでしょう。失敗してはいけない、という気持ちから暗記しようとします。でも実は大事なのは、「暗記をやめる」こと。今まで努力の方向が間違っているのです。 

暗記をやめた方がいい理由は、4つあります。 

1.「完璧に暗記するのは、そもそも難しい」 
暗記には多大な努力が必要で、完璧にはできないことが多い。できないとイヤになって、苦手意識がますます高まります。 

2.「どこかでつまずくと、全体に影響が出てしまう」 
暗記しているときに、例えば「7行目が出て来ない」ことが続くと、本番でもそこでつかえないようにと考えます。ますます不安がつのり、ちょっとでも忘れるとパニックになってしまいます。 

3.「やっと覚えた暗記は、想定外の事態に弱い」 
ビジネスには想定外の事態が付き物です。話す順番が変わったり、時間を短縮してくれと要求されたり。そういった事態に対して、“暗記しているからこそ”対応できなくなってしまいます。 

4.「暗記したことを思い出すことに一生懸命になりがち」 
スピーチはさまざまな環境で成り立っています。暗記したことを思い出す以外に、気を配るべきこと、エネルギーを使うべきことがたくさんあるのに、そこに対応できなくなります。 

では、どうすれば良いのでしょうか? 

基本的には、ポイントだけをメモしておいて、ときどきそれを見ながら進めるのがおススメです。例えば、アメリカ政府の広報官(スピーチのプロ中のプロです)が話すのをテレビで見ていても、暗記はしておらず、ときおり手元のメモに視線を落としながら、スラスラとよどみなく話していきます。 

ポイントを5つくらい書いておく分には、ちょっと視線を走らせただけで読めるので、どこを話しているか分からなくなってパニックになることもありません。話す順番がゴチャゴチャになってしまうことも防止できます。 

それでも不安な人のための秘策は、ポイント・メモとは別に、話す内容を全部書いたものをポケットに忍ばせておくこと。どうしてもあがってしまったら、それを読めばいいのです。そう思うと安心できて、落ち着いて話せます。一種のお守りですね。 

次回は『人前であがらずに、そして臨機応変に話すための「ビジネス会話術」その2』です。 


佐藤達郎の今すぐ使える!マーケティング手法 


[プロフィール] 
佐藤 達郎(さとう・たつろう) 
多摩美術大学教授(広告論/マーケティング論)、コミュニケーション・ラボ代表。2004年カンヌ国際広告祭日本代表審査員。浦和高校、一橋大学、アサツーDK、(青学MBA)、博報堂DYを経て、2011年4月より現職。著書に、『NOをYESにする力!』『アイデアの選び方』『自分を広告する技術』『教えて!カンヌ国際広告祭』がある。 


[記事提供] 

(運営:株式会社アックスコンサルティング)

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