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今年も取材に行って来ました。“カンヌライオンズ2015”ご報告。その1

15.08.28 |

今年もカンヌライオンズに行って来ました。毎年6月末に行われる広告/マーケティング界の一大イベントです。 

2015年も、17の部門に100ヵ国以上から3万7426点の応募が集まり、1万3000人以上が参加。日本からも400人以上が会場を訪れました。広告/マーケティング界で最も評判が高く、影響力の強いイベントであることに変わりはありません。

僕は、このカンヌライオンズに、もう12回行きました。ネット時代の現在、受賞作の概要は日本にいても見られるのですが、それでもカンヌへ赴き、そこでどんなことが語られ、どんなキーワードがあったか、雰囲気も含めて感じて来るのは、広告研究者にとっては、非常に重要です。言ってみれば、広告/マーケティング界の「最新の風」を感じに出かけています。 

今年、現地で語られていたのは、「ソーシャル・グッド」の流れが加速化した、ということです。ソーシャル・グッドとは以前ここでもご紹介しましたが「社会に良いことをブランドや広告がやった方が、消費者の賛同が得られやすく効果が高い」という現象です。

例えば、ハイブリッド車は燃費もいいし、地球環境にも優しい。その場合「地球環境に優しい」という社会に良いことをメインに訴えた方が、ハイブリッド車を買う人が増える、といった風に。 

今年の傾向としては、ソーシャル・グッドといった「なんとなく社会にいいこと」から、ブランドの「強烈な自己主張」に移ってきたという印象を持ちました。 

P&Gの「オールウェイズ」という生理用品の「#LIKE A GIRL」は、その代表例。日本の「ウィスパー」に当たるこの商品で、P&Gは英語の「LIKE A GIRL(少女みたいに)」が「侮蔑的な偏見に満ちた意味で使われることが多く、成人した女性はその偏見に縛られている」と訴えます。そして、そんな偏見に満ちた「LIKE A GIRL」から自由になろう! と「大人になるきっかけとしての生理用品」に関連した「強い自己主張」を行いました。 

何をしたのかと言えば、まず、何人かの普通の大人に「少女みたいに、ボールを投げて」「少女みたいに、闘ってみて」「少女みたいに、走って」と頼み、妙にクネクネと闘い、変な風にヨロヨロと走ってみせるその様子をビデオに収めました。 

次に、10歳になる前の(つまり生理前の)当の少女に同じ要望をすると、彼女たちはまったく異なる反応を見せます。真剣に走り、必死に闘ってみせたのです。彼女たちのように「LIKE A GIRL」の偏見から自由になろう、われわれのブランドは「LIKE A GIRL」の意味を変えたいのだ、とメッセージ。PR部門のグランプリとチタニウム・ライオンをはじめとして、ゴールドだけ見ても、サイバー部門、ダイレクト部門、フィルム部門、メディア部門、プロモ&アクティベーション部門と多数受賞し、カンヌライオンズ2015を象徴する受賞作となりました 。

さて次回からも、“カンヌライオンズ2015”について、ご紹介していきましょう。 


次回の「佐藤達郎のマーケティング論」は『今年も取材に行って来ました。“カンヌライオンズ2015”ご報告。その2』をお届けします。 


佐藤達郎のマーケティング論 


[プロフィール] 
佐藤 達郎(さとう・たつろう) 
多摩美術大学教授(広告論/マーケティング論)、コミュニケーション・ラボ代表。2004年カンヌ国際広告祭日本代表審査員。浦和高校、一橋大学、アサツーDK、(青学MBA)、博報堂DYを経て、2011年4月より現職。著書に、『NOをYESにする力!』『アイデアの選び方』『自分を広告する技術』『教えて!カンヌ国際広告祭』がある。 

[記事提供] 

(運営:株式会社アックスコンサルティング)

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