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カンヌライオンズ2014から、広告・マーケティングの最前線をレポート:その1

14.09.28 |

10年以上前は、カンヌライオンズと言えば、テレビCMや雑誌広告の祭典。
応募者も参加者も広告代理店の制作部門の人がほとんどでした。
ところがここ数年、加速度的に部門が増え(2014年で17部門)、広告主側やメディア企業など、広告とマーケティングそしてコミュニケーションに関わる多くの人が集まり、参加者も12,000人にも上るようになりました。

話題作とその傾向も毎年新しくなり、その変化をつかんでおくことは、皆さんにとっても、きっと何らかのヒントになることと思います。

佐藤達郎のマーケティング論

ここ10年、毎年のようにフランスはカンヌまで出かけているのですが、今年の話題作の傾向は、4つのキーワードにまとめられると感じました。

第1のキーワードは、「DBC(データ・ベースド・クリエイティブ)」。
デジタル・テクノロジーの発達で、“ビッグ・データ”が注目ワードになっているのは、何も広告界に限りませんが、そのトレンドを色濃く反映した事例が話題作となりました。
データに基づいてこそ出来る表現法です。

それは、英国航空のThe Magic of Flying(飛行の魔法)。
ロンドンのピカデリーサーカスと呼ばれる繁華街。
東京で言えば、銀座4丁目の交差点のような、象徴的な場所です。

そのビルの上に設けられたデジタル・サイネージ。
映像を流せる看板広告ですね。
そのデジタル・サイネージの上空を英国航空の飛行機が飛ぶと、画面が急に切り替わり、2~3歳の男の子が映し出されます。
まだ足元もおぼつかないくらいの男の子は、真っ白な画面の中を、通り過ぎる飛行機を指さしながら、追いかけて行きます。
小さな男の子なら誰でもが抱く“飛行機への憧れ”を表現しながら。
空いたスペースには、その飛行機に応じて、「英国航空〇○便、バルセロナから」とか「英国航空△△便、パリから」などの文字が映し出されます。

この表現を可能にしているのが、飛行機から発信されている信号を瞬時に読み解いてデジタル・サイネージにデータを表示するテクノロジー。
英国航空以外の飛行機が上空を飛んでも反応してはいけないし、上空を飛んでいる飛行機が何便でどこから来たのかどこへ行くのか表示しなければいけない。
まさしくデータありき、データ活用をベースに置くことで、高く評価されました。

夜のビールの席では、「あれ、ホントかな? 裏で誰かが手動で操作しているんじゃないの?」と真顔で言う人が複数いました。
いやいや、その方が難しいですよね。
目視でやっていたら、タイミングがずれる可能性があるし、他の会社の飛行機が通った時にも反応しかねないし、その方がよっぽどリスキーでしょう。
 
こんなふうに“データを使い切る”ことで、新しい驚きと豊かな共感が生まれたのです。


次回の「佐藤達郎のマーケティング論」は『カンヌライオンズ2014から、広告・マーケティングの最前線をレポート:その2』をお届けします。


[プロフィール]
佐藤 達郎(さとう・たつろう)
多摩美術大学教授(広告論/マーケティング論)、コミュニケーション・ラボ代表。2004年カンヌ国際広告祭日本代表審査員。浦和高校、一橋大学、アサツーDK、(青学MBA)、博報堂DYを経て、2011年4月より現職。著書に、『NOをYESにする力!』『アイデアの選び方』『自分を広告する技術』『教えて!カンヌ国際広告祭』がある。

[記事提供]

(運営:株式会社アックスコンサルティング)

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