響き税理士法人

響き税理士法人
  • HOME
  • 【税務】
  • 経営者なら知っておきたい、事業承継を支援する『事業承継税制』

経営者なら知っておきたい、事業承継を支援する『事業承継税制』

20.09.03 | 【税務】

経営者が高齢となり、事業承継を視野に入れる場合、税金についても対策が必要です。 
後継者が企業や個人の事業を承継すると、法人税や贈与税やあるいは相続税の納税義務が生じることがあります。 
これらの税金を節税できる事業承継税制の基本を理解しましょう。

<事業承継税制で後継者の税負担を軽減>
事業承継がどのように行われるかによって、納税する税金の種類は異なります。
たとえば、経営者の死後に後継者が事業に関する資産又はその事業を行っていた会社の株式等を引き継いだ場合は相続税がかかり、経営者が存命中に事業用資産や株式などを後継者に贈与して事業承継をした場合は贈与税が課税されます。
事業承継税制は、後継者である受贈者・相続人等が、円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与または相続等により取得した場合や、青色申告に係る事業を行っていた事業者の後継者として円滑化法の認定を受けた者が、贈与または相続等により特定事業用資産を取得した場合に、一定の要件のもとで後継者が納税するべき相続税・贈与税の納税が猶予される制度です。
さらに一定要件を満たせば後継者の死亡等により猶予されていた税金が納税免除となります。
また、要件を満たさなくなれば猶予は打ち切りとなります。
後継者が引き継いだ資産が高額になるほど税金も高くなりますが、事業承継時は後継者もまだ経営に慣れておらず、一時的に業績が落ち込むこともあります。
そこで事業承継税制を活用すれば、以下のような節税効果が期待でき、円滑に事業の引継ぎを行うことができます。

①非上場会社で行う事業を承継する場合(法人版事業承継税制)
法人版事業承継税制には、「一般措置」と「特例措置」があります。
「一般措置」は、一定要件のもと、発行済み株式等の3分の2までが、贈与では100%、相続では80%納税猶予となり、一定条件を満たせば相続税・贈与税ともに納税免除となります。
「特例措置」は、令和5年3月31日までに「特例承継計画」を作成して都道府県知事に提出し確認を受けた場合に、令和9年3月31日までの贈与・相続等が対象となるものです。
一定要件のもと、発行済み株式等のすべてが贈与・相続で100%納税猶予となり、一定条件を満たせば相続税・贈与税ともに納税免除となります。

②個人事業主が行う事業を承継する場合(個人版事業承継税制)
令和6年3月31日までに「個人事業承継計画」を都道府県知事に提出して確認を受けた事業後継者が、令和10年12月31日までに青色申告に係る事業の特定事業用資産を贈与または相続等で取得した場合に、一定要件のもと、贈与税または相続税額のうち、特定事業用資産に対応する相続税または贈与税の納税が猶予され、一定条件を満たせばどちらも納税免除となります。


<事業承継のハードルを下げる2018年の税制改正とは?>
2018年の税制改正では、法人版事業承継税制について税制適用の入り口要件を緩和し、税制適用後のリスクを軽減することをねらいとして、以下のとおり要件が大きく変更された制度が期間限定措置として創設されました。
これまでの制度を「一般措置」、新たな制度を「特例措置」といいます。

●納税猶予の対象株式数の変更
一般措置では、納税猶予の対象となる株式は発行済み株式等の3分の2までですが、特例措置ではすべての株式等が猶予の対象となり、承継時の税負担がゼロになりました。
また、相続税の納税猶予割合も80%から100%へとなっています。
●人的要件の拡大
従来は1人の先代経営者から1人の後継者に贈与・相続される場合のみが対象でしたが、特例措置では親族外を含む複数の株主から最大3人の後継者への承継も、対象となりました。
承継元の株主は親族以外でもよく、多様な事業承継に対応しています。
●課税基準の時期の変更
後継者が途中で自主廃業や株式の売却をすると、猶予が打ち切りとなります。
その際、従来は承継時の株価を基に相続税・贈与税が課税されていましたが、特例措置では売却時や廃業時の評価額を基にすることになりました。
●雇用要件の抜本的見直し
一般措置は事業承継後5年間で平均8割以上の雇用を維持しなければなりませんが、特例措置ではこの要件が未達成である場合も猶予継続が可能となります。

事業承継税制を受けるためには、まず特例承継計画書を作成しなければなりません。
贈与税または相続税の申告期限後5年間は毎年年次報告書を都道府県庁へ、継続届出書を税務署へ出す必要があります。
6年目以降は、猶予期間中は税務署に継続届出書を3年に1回定期的に提出しなければなりません。これらの手続を忘れないよう管理することが大切です。

TOPへ