生きがいラボ株式会社

ノーレイティングの特徴

20.09.08 | 人事制度【ノーレイティング】

「No Rating(ノーレイティング)」という人事制度をご存じでしょうか? 

当社が設計・運用のコンサルティングをしている「ノーレイティング」は、2015年ごろから米国を中心に導入が進んでいる新しい人事制度のことで、日本の人事業界でも大変注目されています。 

なぜ注目されているかというと、ノーレイティングは、従来の人事制度とは「まったく違うコンセプト」によって設計されている人事制度だからです。 

何が違うかについてはこれから解説していきますが、人事制度の知識をお持ちであれば、おそらく驚かれる内容だと思います。

◆従来型人事制度との違い

ノーレイティングとは、その名の通り、「レイティング(=格づけや点数づけ)」を廃止した人事制度という意味です。

ノーレイティングの説明に入る前に、従来の人事制度の仕組みについて簡単に説明します。

このメルマガのなかでは、ノーレイティングと区別するために、レイティングを行う人事制度を「従来型人事制度」と呼ぶことにします。

従来型人事制度は、「等級制度」「評価制度」「給与制度」の3つの制度が、密接に“連動”する構造になっています。

組織成員を等級制度で格づけし、評価制度で点数をつけ、給与制度で点数に応じた給与額を決めるという仕組みです。

何によって給与額を決めるか(=何で評価するか)によって、

 -属人主義 :年齢や勤続年数、家族構成などの属人的要素によって給与を決める。

 -職能主義 :職務遂行能力(職能)によって給与を決める。コンピテンシーは職能の一部。

 -職務主義 :担当する職務によって給与を決める。

 -役割主義 :担当する役割によって給与を決める。

 -責任主義 :担当する責任によって給与を決める。

 -成果主義 :創った成果によって給与を決める。

などと、制度の呼び名が変わりますが、どの制度でも基本的な構造は等級制度・評価制度・給与制度の連動によって成り立っています。

従来型人事制度が持つ構造の本質は、「お金の刺激によって人を働かせよう」ということです。

ノーレイティングが、従来型人事制度と本質的に違う点は、「お金の刺激で働かせようとしない」という哲学に基づいていることです。

この哲学を仕組みに反映すると、「等級制度での格づけ」や「評価制度での点数づけ」がなくなります。

従来型人事制度では、期末に上司が部下一人ひとりを評価して、点数づけやS~Dなどのランクづけを行い、その点数やランクに応じて、昇給額(減給額)や賞与額を決定します。

ノーレイティングとは、この点数づけやランクづけによって給与を決定しないということです。

では、どうやって給与を決めるかというと、米国でノーレイティングを導入している企業では、管理職が部下の給与を決めています。これについては、次回のメルマガで扱います。

◆ノーレイティングの特徴

米国企業で導入が進んでいるノーレイティングの主要な特徴は「点数づけ・ランクづけの廃止」です。

ここで、よく誤解されているのが、「ノーレイティングでは人事評価がない」という情報です。

ノーレイティングが日本で紹介され始めた頃に、目を引くために「欧米企業が人事評価を廃止した」というキャッチコピーで紹介されることが多かった影響ですが、これは誤解を招く情報です。

このメルマガでは誤解を生まないために、「人事評価」と「人事査定」を別々に定義しておきます。

 -人事評価 : 部下の現状を振り返り、成長課題を明確にすること

 -人事査定 : 部下に点数づけやランクづけを行うこと

ノーレイティングを導入している企業は、「人事査定」は廃止していても「人事評価」は行っています

なぜなら、人間が成長するためには、自分が現在置かれている状況や、自分の長所や課題を把握することが必要だからです。

つまり、部下の成長を促進するためには「人事評価」は有効ですから、ノーレイティングを導入している企業も「人事評価」を行っています。

一方で、ノーレイティング導入企業が「人事査定」を廃止した理由は、管理職が部下の「点数づけ」のために費やす時間は、部下の成長にとってあまり効果がないからです。

人事査定を行うことによって、管理職と部下の話し合いは「過去の実績をどう解釈するか」というテーマに、ほとんどの時間が費やされるようになります。

たしかに、過去の実績の評価も必要なことではありますが、それよりも大切なのは、

「経験を通して何を学んだのか」

「その学びを今後どのように活用していくのか」

「目標達成のためにこれからどんな取り組みを行っていくのか」

「そもそも目標は適切なのか」

という未来に向かって話し合うことです。

管理職と部下の話し合いに同じ時間をかけるとしても、「過去をどう解釈するか」あるいは「未来をどうしていくか」のどちらを話し合った方が建設的な時間になるかは、明らかでしょう。

当然ながら、未来について話し合った方が建設的であり、部下の成長も促進されます。

ノーレイティングの導入が急激に進んだのは、人事査定を廃止することで、管理職と部下が建設的なテーマで話し合えることが大きな理由です。

今回は、ノーレイティングの主要な特徴についてお伝えしました。次回は、ノーレイティングではどのように給与を決めるのかについてお伝えしたいと思います。

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