生きがいラボ株式会社

ノーレイティングでは管理職の役割が変わる

20.10.08 | 人事制度【ノーレイティング】

2016年ごろから、ノーレイティングが人事の世界で話題になることが増えてきました。

しかし一方で、明らかに事実と違った情報や、私の長年の経験からは違和感のある情報も散見されるようになっています。

これは、ある意味で仕方のないことで、ノーレイティングは従来型人事制度とは大きく異なるコンセプトですから、固定観念が邪魔をしてなかなか理解できないということもあるでしょう。

また実際には、点数づけやランクづけのないノーレイティングを、設計・運用した経験のある人も少ないですから、具体的なことがイメージできないということもあるかと思います。

私は、2010年から点数づけやランクづけのない人事制度を設計・運用してきましたので、その経験を踏まえてノーレイティングへの誤解について解説したいと思います。

◆明らかに間違った情報もある

まず、ノーレイティングへの誤解に入る前に、ノーレイティングへの認知度が高まるにつれて、明らかに間違った情報も目にするようになりました。

ある月刊誌で「ノーレイティング導入」についての特集があったのですが、「ノーレイティング」と称して、点数づけや点数の正規分布への調整などの「レイティング」の手法が書かれてありました。

このように、明らかに間違った情報もありますので、ご注意いただきたいと思います。さて、本論に入ります。

 

◆ノーレイティングへの誤解

ノーレイティングについての誤解としては、下記の3つが代表的なものとして挙げられるかと思います。

 

① ノーレイティングでは、人事評価がない

② ノーレイティングによって、管理職に大きな負担がかかる

③ ノーレイティングを導入しないと時代に乗り遅れる

 

1番目の「人事評価がない」という誤解については、以前にもお伝えしましたが、ノーレイティングでは、点数づけやランクづけという「人事査定」は廃止しますが、部下の長所や課題を明確にして成長をサポートする「人事評価」は行っています。

点数づけやランクづけは行わないですが、上司から部下へのフィードバックはより頻繁に行うことになります。

ノーレイティングが日本で紹介され始めた頃に、目を引くために「米国のグローバル企業が人事評価を廃止した」というキャッチコピーで紹介されることが多かったことが影響していますが、これは誤解を招く情報です。

 

◆ノーレイティングでは管理職の役割が変わる

2番目の「管理職の負担が大きくなる」については、たしかに部下の給与決定を行うことになりますし、今まで以上に部下と頻繁にコミュニケーションをとる必要性が増しますので、そのように見えるのはある意味で仕方のないことです。

しかし、私の考えでは、従来型人事制度からノーレイティングに移行することで、上司として時間をかけて行うべき業務に集中できるようになります。

従来型人事制度では、部下が納得するような点数づけを行ったり、部下の点数を正規分布に調整したり、部署間でも点数を調整する必要もあったり、非建設的な業務に時間を費やす必要がありました。

しかし、ノーレイティングでは、部下の点数をつける必要がありません。部下の点数を正規分布に調整する必要も、部署間で調整する必要もありません。

従来型人事制度で必要とされてきた非建設的なそれらの時間を、部下の目標達成を支援したり、成長をサポートすることに使えるようになります。

管理職の役割が、部下の「査定者」から「支援者」に変わることになります。

たしかに、ノーレイティングでは、部下とのコミュニケーションをより密接にとることを求められますので、大変といえば大変だと思います。

しかし、部下の支援者としての役割は、管理職の本質に近い業務だと思いますし、管理職という役割を担うことによる「本当の喜び」を感じられると思います。

 

少し長くなりましたので、「ノーレイティングへの誤解」の3番目については、次回に解説したいと思います。

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