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コロナ禍で苦境にある企業を支援する『新型コロナ税特法』について

20.11.12 | 【税務】

4月30日、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、苦境に立たされている法人や個人事業主を支援する『新型コロナ税特法』が国会で成立しました。
この『新型コロナ税特法』について知っておきましょう。

4月30日、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、苦境に立たされている法人や個人事業主を支援する『新型コロナ税特法』(正式には新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律、および地方税法等の一部を改正する法律)が国会で成立しました。
この法律には、多角的に事業者を支援するための、税金の猶予措置が盛り込まれています。
いまだ先の見えない経営環境が続いています。
ぜひ、この『新型コロナ税特法』について知っておきましょう。


【『新型コロナ税特法』、国税に関する措置は 】
閣議決定から法案の成立まで、わずか11日間のスピード成立となった『新型コロナ税特法』。
新型コロナウイルスによる企業経営の悪化を緩和することが目的です。
したがって、コロナ禍のあおりを受けて、業績が不振に陥っている法人や個人事業主へ向けての制度になります。
まず、国税に関しては、以下の7つの措置が取り決められました。

●1年間、所得税・法人税など、ほぼすべての国税について納付の猶予が受けられる
●欠損金のある法人が、2年前まで繰戻して法人税の還付が受けられる
●中小企業向けに、テレワークなどのための設備投資額についてを、即時償却または7%の税額控除が受けられる
●文化芸術やスポーツイベントが中止になった時、観客が主催者にチケットの払い戻しを求めず放棄した払戻請求額分を、寄附金控除の対象とする
●新型コロナウイルス感染症の影響で、住宅ローン減税の期限内に入居できなかった人に対しても、減税を適用できるように要件を弾力化する
●消費税の課税事業者となることを選択し、承認を受けたあとでもやめることが可能に
●新型コロナの影響により貸し付けを受ける事業者について、契約書の印紙税を非課税とする

今回は、このなかから、支援効果の大きい『納税の猶予制度の特例』と『欠損金の繰戻しによる還付の特例」について、説明していきます。


【ほぼすべての国税の納付が延滞税なしで猶予に】
まず、『納税の猶予制度の特例』について解説します。
この措置は、新型コロナウイルスの影響を受けて、収入が前年同期に比べて概ね20%以上減少した事業者を対象に、令和2年2月1日から令和3年21月31日までに納税の期限が到来するほぼ全ての国税に関して、1年間の納付を猶予するものです。
法人税はもちろん、所得税や消費税など、ほぼ全ての税目が対象となり、延滞税も発生しません。
また、担保を用意する必要もありません。
収入が前年同期に比べて概ね20%以上減少しており、納税に苦慮している事業者は、納付期限が来るまでに申請を行うことで、猶予を受けることができます。
すでにコロナウイルス感染拡大の影響で、国税の猶予を受けている事業者についても、さかのぼってこの特例を利用することができます。
つまり、延滞税がかかる別の猶予を、特例に切り替えることで、延滞税がかからないものとして猶予が受けられるようになるわけです。
特例の申請には収入や現預金の状況がわかるような資料を提出する必要がありますが、難しい場合には口頭で説明することも可能です。
また、猶予の適用期間が終了したら定められた税金を納めなければいけませんが、従来の制度を利用することで、分割で納めることもできます。
納税することによって事業運営に支障が出る企業は、制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。


【欠損金の繰戻還付も枠が広がる 】
次に『欠損金の繰戻しによる還付の特例』について解説します。
これまでも制度として、『欠損金の繰戻しによる還付』はありました。
前年度が黒字だった青色申告を提出する法人が、経営悪化などによって当年度が赤字になった場合に、前年度に納付した法人税の還付を受けることができる仕組みです。
確定申告書を提出した事業年度において欠損金額がある場合に、請求すれば、その事業年度から1年以内に開始したいずれかの事業年度に繰り戻して法人税の還付を請求することができました。
この還付については、通常は資本金の額が1億円以下の法人を対象としていました。
しかし、今回の特例によって、資本金が1億円超、10億円以下の法人も対象になることが決まりました。
資本金が1億円を超えていて特例を受けることのできなかった法人にとっては、大きな救済措置となります。
ただし、資本金が10億円を超える大規模法人の100%子会社や、100%グループ内の複数の大規模法人に発行済株式をすべて保有されている法人は、対象外となり、制度を利用することができないので注意が必要です。
また、令和2年2月1日から令和4年1月31日までの間に終了する事業年度に生じた欠損金についてのみ適用されるので、それ以外の欠損金は対象になりません。
請求については、欠損金額の生じた事業年度の確定申告書の申告期限までに、還付請求書を提出する必要があります。
しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で手続きをするのが難しい場合には、個別に延長が認められています。
他にも様々な救済措置が設定されており、それぞれ企業の業績に応じて申請する必要があります。
新型コロナウイルス感染症の終息が見えないなか、どのように事業を継続させていくか、しっかり検討することが、事業者の急務といえます。
先の読めない時代ですが、『新型コロナ税特法』をはじめ、さまざまな行政措置を活用しながら、経営のかじ取りをしていきましょう。

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