日高税務会計事務所

利益を出す(増やす)ために粗利益を増やそう!

20.11.16 | 所長メルマガ

企業の赤字の原因として一番に上げられるものは、昔から売上不振です。今後も変わらない。だから、経営者は社員に売上アップを要求する。間違いでは無いのだが、社員(特に営業)の中には会社の収益構造を理解して無く、個人の売上目標は達成したが最終利益に貢献しないケースも発生する。理由は、販売のため経費が増えたことと値引である。

損益計算書の構造から、利益を出すには、売上の増加か、原価及び経費の削減しかない。
売上増加は、お客様や競合との関係で自社の思うようにはならない。質を落とさず原価を下げるのは仕入先との関係からこれも難しい。下手に安くて質の落ちるものにすると、当然売上は下がる。経費は中小零細企業では元々削る余地が少ない。金額の大きい家賃等、金利は交渉の余地はあっても減額は難しい。金額が最も多いのは人件費である。しかし、役員等は生活費として減額しづらい。従業員分は国の言う「中小企業」水準以下なのに減額となればモチベーションが下がり、退職(転職)の可能性も増える。人手不足の環境から逆に増加も考慮する必要がある。
 ところで、売上と原価、費用の関連性も、損益計算書をそのまま見ても分かりにくい。そこで、管理会計では、原価・経費を、売上との関連性が強い「変動費」と、売上との関連性が少ない「固定費」に分けて対比させる。これを正確にやろうとするのは面倒である。そこで、一般的に 販売業では仕入原価を「変動費」とし、他の経費は全て「固定費」とみなす。また、製造業や建設業は、原価内訳書より材料費と外注費のみを「変動費」とし、その他の原価科目は、他の経費と共に「固定費」とみなす。
そうすると、 売上 - 変動費 = 限界利益(粗利益)・・・・・ 販売業では売上総利益と同じ
          限界利益(粗利益)- 固定費 = 利益(経常利益、税引前利益)  となる。
下の式から、「固定費」分相当の「粗利益」を創り出せれば、赤字にならないことが解る。
必要な売上高は、粗利益(限界利益)÷ 粗利率(限界利益率)で求められる。これが損益分岐点売上高です。例えば、固定費(経費等)が年間1千万円必要ならば、粗利益も1千万円いる。もし、粗利益率が35%だとすれば、必要な売上高は 1千万円÷0.35=2千857万円と計算出来る。売上は通常、売上単価×数量の集合から成り立つ。数量の増加だけで上記の数値が達成出来ない場合は、売上単価のアップが可能か検討する。売上単価が上がると粗利率も上がるので数量をあまり増やさなくても粗利額は達成できる。取扱商品の利益率が一定と言うことは無いはずだから、粗利益率の高い商品を積極的に進めることも有効。とにかく必要な粗利額を確保するために、様々な策を組み合わせることである。
色々シミュレーションしてみると解ることだが、値引は極力避けた方が良い。もちろん生鮮食料品等品質の劣化陳腐化等で値下をすることは考えられる。しかし、大手が安く売っているから同じ値段で販売すれば、売上金額では変わらなかったとしても粗利額は大幅な減少となる。中小零細企業は価格競争しない方が良い。同じ土俵で戦えば負けるのは目にみえている。むしろ、お客様が納得していただける範囲で高く売ることである。中小零細企業では、そのための工夫が足らないことが多い。多量生産や規格品等で無いその商品の価値を十分伝えたり、他所がやらないその店(会社)だけの特別なサービス等を積極的にアピールすることによって少し値段を上げても喜んで買っていただけるケースは多いものである。商品が良くても、その良さ(価値)を伝えないと、より安いほうが選択されるものである。
  経営計画では、固定費+目標利益=目標粗利額 を確保するための売上(販売)計画を作ります。
売上(上から)ではなく粗利益(下からの積みあげ)で考えると間違いは少ないです。

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