大阪プライム法律事務所

大阪プライム法律事務所

この4月からは18歳で成年

22.01.30 | ニュース六法

成年年齢を18歳に引き下げる民法改正が、2022年4月1日から施行されます。明治時代から今日まで約140年間、成年年齢は20歳と定められていましたが、これまで未成年であった18歳から19歳までの方は、この4月1日に一斉に成年になります。成年になった時点で、どのような扱いになるのでしょうか。変わる点と変わらない点があります。

■誕生日との関係
未成年の方は、生年月日によって成人となる日が次のようになります。

2002年4月1日以前生まれの人は、20歳の誕生日が成人になった日。
2002年4月2日から2003年4月1日生まれの人は、まだ19歳ですがこの4月1日に成人となり、2003年4月2日から2004年4月1日生まれの人は、まだ18歳ですが、やはりこの4月1日で成人となります。
2004年4月2日以降生まれの18歳未満の人は、18歳の誕生日を迎えた日に成人となります。 

■契約関係
民法は、未成年者が法律行為をするには法定代理人(通常は親)の同意を得なければならず、親の同意なしに行われた法律行為は、あとで取り消すことができると定められています。今までは18歳から19歳の方も契約をするには親の同意が必要でした。仮に契約をしてしまっても、まずいと思われた場合は、あとで取消できるという保護がありました。

しかし、4月1日以降は、18歳以上の方の契約は基本的に自己責任で、後から未成年であったことを理由に取り消すことはできなくなります。18歳や19歳が契約をする一般的な場面としては、携帯電話の利用契約や、クレジットカード契約と利用、自動車やエステなどのローンを組むことなどが考えられます。いちいち親の同意を得ることなく契約ができるということは便利ですが、18歳、19歳の社会経験の乏しさを狙った悪徳商法などに引っかかって消費者被害にあうリスクがあります。自分で契約をしたらその契約に基づく債務も自分が負うことになるのだということを、よく理解して契約に臨むことが必要です。 

■親権からの離脱
また、民法では、未成年の子は父母の親権に服すると定められています。4月からは18歳以上であれば親権に服さなくなります。その結果、進路や仕事、住む場所なども自分で決めることができるようになります。 

■養育費
離婚に伴い養育費を取り決める場合は、これまでは養育費の終期を「成年に達するまで(20歳まで)」と定めることがありました。今後、「成年まで」と定めると18歳までになってしまうため、合意をする際には気をつける必要があります。ただ養育費は、子供が未成熟であって経済的に自立することを期待することができない場合に支払われるものであるから、成年に達したても経済的に自立していない場合は養育費の必要性は高いため、成年年齢が引き下げられたからといっても、養育費を「子供が18歳に達するまで」ということになるわけではありません。例えば、従前どおり20歳になるまでとか、大学に進学している場合には大学を卒業するまで養育費の支払義務を約定するということなどは、これからもあると考えられます。

なお、この従前に「成年に達するまで」という合意をしていたような場合は、必ずしも18歳になった時点で終了となるわけではなく、その合意をした当時の解釈として、成年=20歳までという解釈になると思われますが、具体的な事案で判断することになるかと思われます。

 ■できるようになること
10年有効のパスポートを取得することができるようになります。また、日本と外国、両方の国籍を持っている人の国籍選択や、性同一性障害の人の性別変更の申し立てなども18歳からできるようになります。

さらに、医師や公認会計士、司法書士、行政書士などの資格を得られる年齢も18歳からに引き下げられます。弁護士の場合は年齢制限がありません。なお、医師については6年間学ぶ必要がある大学の医学部を修了しないと国家試験を受験できないため、現実的には18歳で資格を得るのは難しいとされています。また、裁判員に選ばれるようになる年齢も20歳から18歳に引き下げられます。 

■結婚年齢
女性が結婚できる最低年齢は16歳から18歳に引き上げられました。このため結婚できるのは男女ともに18歳以上となります。 

■少年法
成人年齢の引き下げにあわせて少年法も改正されました。18歳と19歳は「特定少年」として、引き続き少年法の適用を受け一定の保護を受けますが、17歳以下とは一部異なる取り扱いも設けられています。例えば、原則として家庭裁判所から検察に送り返す「逆送」と呼ばれる手続きの対象事件が拡大されたのと、起訴された場合に実名や顔写真などを報道することも可能となりました。 

■変わらないこと
成年年齢が18歳になっても、飲酒や喫煙、競馬などの公営競技に関する年齢制限は、これまでと変わらず20歳です。健康面への影響や非行防止、青少年保護等の観点から、現状維持となっています。国民年金の加入義務が生じる年齢も20歳以上のままです。 

■成人式
成人式の時期や在り方に関しては、法律による決まりはなく、各自治体の判断で決まります。対象を18歳の方に変えるのかは難しい判断です。というのは、18歳の1月ころというと、高校3年生の受験シーズンと重なるからです。とにかく、施行後初となる2023年1月の成人式を、18歳、19歳、20歳の3世代同時に実施するのかといった問題もあるようです。 

TOPへ