大阪プライム法律事務所

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大手回転ずしチェーンの「おとり広告」

22.06.12 | ニュース六法

回転ずしチェーン大手の「スシロー」が、去年、実際と異なる表示で不当に客を誘う「おとり広告」を行っていたとして、消費者庁が、先日、再発防止などを命じる措置命令を出しました。「おとり広告」とは、どのような広告をいうのでしょうか。

(写真は、消費者庁が公表した措置命令書に掲載されたものの一部)

■「おとり広告」とは
景品表示法5条3号の規定にもとづく告示「おとり広告に関する表示」(平成5年公正取引委員会告示第17号)で、以下のように詳しく定義されています。分かりやすく言うと、商品・サービスが実際には購入できないにもかかわらず、購入できるかのような紛らわしい広告を言います。このような広告で顧客が誘引されて店舗に来たものの、目当ての商品やサービスがないと別のものを購入することが多くあります。甘い広告で誘っておきながら別のモノをうるというのは、消費者からみて許せない行為ですし、業者間の公正な競争を害することにもなるので、そうした商法を排除するものです。 

(1)取引の申出に係る商品・サービスについて、取引を行うための準備がなされていない場合のその商品・サービスについての表示(あるかのような広告)
(2)取引の申出に係る商品・サービスの供給量が著しく限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明りょうに記載されていない場合のその商品・サービスについての表示(数が限られているのに、そのことを隠した広告)
(3)取引の申出に係る商品・サービスの供給期間、供給の相手方又は顧客一人当たりの供給量が限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明りょうに記載されていない場合のその商品・サービスについての表示(売る期間や顧客を限っているのに、そのことを隠した広告)
(4)取引の申出に係る商品・サービスについて、合理的理由がないのに取引の成立を妨げる行為が行われる場合その他実際には取引する意思がない場合のその商品・サービスについての表示(自由に買えないのにあたかも自由に買えるような広告) 

■違反した場合
事業者が、「おとり広告に関する表示」に規定されている不当表示を行っていると認められた場合は、消費者庁長官はその事業者に対し、「措置命令」などの対応を行うことになります。 

■今回の事例
6月9日に消費者庁から措置命令を受けたのは、回転ずしチェーン「スシロー」を展開する大阪・吹田市に本社がある運営会社「あきんどスシロー」でした。消費者庁は、実際と異なる表示で不当に客を誘う「おとり広告」をしたということで、景品表示法に違反するとして再発防止などを命じる措置命令を行いました。 

問題になったのは、同社が供給する以下の料理でした。
①「新物!濃厚うに包み」と称する料理
②「とやま鮨し人考案 新物うに 鮨し人流3種盛り」と称する料理
③「冬の味覚!豪華かにづくし」と称する料理

 これらに係る表示(広告)について、消費者庁及び公正取引委員会(近畿中国四国事務所)の調査によって、景品表示法に違反する行為(同法第5条第3号(おとり広告))が認められたことから、同法に基づき「措置命令」を行ったということです。

消費者庁と公正取引委員会によると、昨年9月と10月に、キャンペーンとして期間限定のうにを1貫110円、3種盛り528円で売り出しました。しかし、すぐに在庫がなくなり、全国の9割以上にあたるおよそ500余りの店で、一時、提供を取りやめたということです。しかし、提供をやめていた間もウェブサイトなどでキャンペーンを続けていたということでした。

また、その翌月の11月から12月には、十分な在庫を整えないまま「豪華かにづくし」などと銘打ってキャンペーンを行ったものの、初日から販売できない店が相次いだということでした。

■不動産広告における「おとり広告」
賃貸不動産を探す際に、よくあるのは、実在しない「架空の物件」を客寄せのために「広告」として打ち出していたのではないだろうか、という例です。これもよく聞くケースで、私自身も、「あれはそうだったのかもしれない」というような経験をしています。

手口としては、実在しない”好条件の物件”をネットに掲載し、それをみた客が、それを目当てにその店舗に来た際に、「先ほど先約が入った」とか、「この物件は更新料が高い」「定期借家」などと適当な理由を言って諦めさせたうえで、別の物件を案内する、というものです。

時間を見つけて、せっかく不動産屋さんに来た以上は、残念だけど折角だから他を探そう、という気持ちにつけこまれて、他の利幅の大きい物件へと誘引されてしまうわけです。

こういった不動産に関するおとり広告は、宅建業法違反にあたるほか、「不動産の表示に関する公正競争規約」でも禁止されています。この公正競争規約とは、不動産の広告表現に関して、業界団体(不動産公正取引協議会)が設定したルールで、法律ではありませんが、公正取引委員会の認定を受けています。ルール違反の事業者に対しては、警告または50万円以下の違約金が課され、警告に従わない場合は、500万円以下の違約金を課し、除名処分または、消費者庁に通報するなどの措置が取られます。

これらは、業界団体の自主規制となりますが、宅地建物取引業法違反と認められれば、業務停止または免許取り消し、罰則で6ヶ月以下の懲役、30万円以下の罰金または併科となっています。

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