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来年10月開始の消費税インボイス制度は免税事業者(弱者)イジメの改悪なのか!

22.11.15 | 所長メルマガ

お客様の多くは消費税の課税事業者です。従って早めに(出来れば年内に)適格請求書発行事業者の登録申請を行いましょう。期限の来年3月末ごろは多数の申請が集中し混乱が予想されるため、税務署からの協力の要請もありました。分かりにくいのですが、課税事業者=インボイス発行事業者とはなりません。売上の全てが個人の消費者の場合、インボイス発行事業者でなくても問題ありません。しかし、売上の一部でも個人や法人事業者である場合は、相手は購入した商品等を課税仕入として控除できなくなるので、インボイス発行事業者に登録しておくのがマナーでしょう。だから一般に登録する必要があります。

課税売上1000万円以下の免税業者は、難しい選択が求められます。インボイス発行事業者では無いから、今までの取引先から取引が断られたり、取引金額額が減らされる可能性があります(上記の理由のため)。あるいは消費税分を請求できなくなるため、その分の値引を求められる可能性も有ります。だからといって、インボイス発行事業者に登録すると課税事業者を選択したことになります。そうなると消費税を払わなければなりません。売上と仕入・経費が全く同じでも利益がその分減ります。新型コロナの影響が残り、さらに円安等から来る原材料、諸経費、人件費等の値上げで零細事業に追い打ちで負担となると思われます。結果として、インボイス発行事業者になってもならなくても、現状より儲けが減ることは確実です。また、課税の計算も原則(一般)課税か簡易課税の適用の選択を求められますので、そこもシミュレーションして有利・不利を確認する必要もあります。手続等も大変です。来年10月1日の実施に確実に間に合うためには来年3月末まで諸届出書を提出しておく必要があります。(期限等が延期になる可能性もゼロでは有りませんが、いまのところ国税からの発表はありませんので準備は必要です)
 マスコミの多くはインボイス制実施が免税事業者である小規模事業者の負担増に同情的です。確かに、この時期においてはそうかもしれません。しかし、私も含め消費税を納付している事業者からすると、事業者が消費者から預かった税金を納付するのは当然のことです。そもそも、基準期間(2年あるいは2期前)の売上で免税になる規則自体が間違いだと思います。創設時は、税率3%、免税点3000万円、簡易課税は5億円までで2区分でした。当時としては消費税という新しい税を定着させるために、零細事業に配慮したこと、納税義務者を増えすぎて対応に混乱が無いようにするため等の理由が考えられます。その後、免税点は平成16年4月から1000万円になり、簡易課税の上限も5000万円で現在に至ります。税率は5%、8%、10%と上がっていきました。そこで、問題となるのが「益税」すなわち支払われた消費税が国等に納められず事業者の収入に成ることです。消費税率が3%や5%の時は目をつぶっても良かったが、10%だと限界と思われます。免税業者で実際、消費税を計算してみると数万円から数十万円になることもあります。これでは納税している事業者との間に不公平感が生じます。今回の改正は、今まで長きにわたって免税の零細事業者に実質補助金として支援してきたことが終了するだけです。
 国は将来、さらなる消費税率アップを考えているようなので、インボイス制度は今回是非とも導入しておきたいようです。また、インボイス登録業者番号の表示は、上で述べたように、事業者間の免税業者排除に繋がりますので、以前のように消費税を出来るだけ逃れたくて、事業開始は個人で始めて2年後に法人成りをすることで4年間免税となる方法や、業績が伸びている部門を新たな別会社に移行させて当初の節税を図る方法も難しくなります。会社の経理は大変ですが、正式なインボイスの書面等から非課税・課税の区別を迷うことがなくなります。
 以前より消費税で複数税率を採用するならば、インボイスなる書面が必要だろうと言われていました。将来の増税も頭に入れて、制度導入となったわけですが、今の時期は零細業者に取って不運だと思われます。ですが別の方法で弱者を支援していけば良いと考えます。

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