日高税務会計事務所

役に立たない経営計画は作らない方が良い!?

15.01.13 | 所長メルマガ

正月に個人の一年の計画を立てる方も多いと思います。紙に書かなくとも、どうしようかあれこれ考えることで、行き当たりばったりの惰性で過去の延長線上にある人生と異なる生き方ができる可能性が広がります。もちろん、本気でトライするかどうかで達成度は変わってきます。会社においても次年度の経営計画を作成してある方が、経営計画の無いところよりも業績が良いと言われています。私ども税理士等も融資の関係から経営計画作成のお手伝いをすることもあります。しかし、実際計画通りになることは滅多にありません。私は全ての会社で細かい数値の計画が必要だとは思っていません。そこで中小零細企業の経営計画について参考となる考えを紹介します。

年末に竹田陽一さんの講演会に参加しました。社員30名以下を対象とし、ランチェスターの法則を使った経営コンサルタントで、多くの教材を開発されている方です。経営計画がテーマでした。「価値=資本の力×人の力(労働)」の式から零細企業は「人の力」で勝負するしかない。「人の力」は知識・技能×労働時間に分解できる。経営で大きなウエイトをしめる「商品力」「営業力」も人の力に負うことが多い。会社は粗利益で存在でき、社長の一番の関心を持つべきは粗利益を増やすこと。ところで、シェア一番手の企業の粗利益は2番手より数%高い。さらに販売費も2番手以下より同じ効果を上げるのに少なくて済む(効率が良い)。そのことから経営者が考える経営計画とは、シェアNO1が取れる商品の開発(発掘)、営業地域の選定、業界・客層の絞り込み、そして、商品の効果的な営業方法の選択などであり、これらを長期的な視点で試行錯誤しながら実行することとなる。日本の経営計画の歴史を調べると、指導する人に会社全般に精通した人が少なかったため、主として簿記や会計の大学の教授が行った。そのなごりで数値目標が中心なっているとのこと。また、経営計画に理念哲学なども入れてあることが多いが、それも零細企業ならば無くても問題ない。発表会等のための儀式的なものや特定目的だけの計画など必要ない。
 次に紹介するのは、最近出たばかりの税理士の岡本史郎さんの『中小企業経営者のための本気で使える経営計画の立て方・見直し方』(すばる舎リンケージ 2800円税別)からです。この本で経営計画の具体的な作成の立て方については中程の三分の一しか書かれていません。前後三分の一は経営計画を作る意義活用についての筆者の考えです。根拠の無い楽観・希望的想定に基づく、役に立たない計画など作るのは時間の無駄と言ってあります。ポイントは、まず今期の実績売上を3つに区分することです。「確実売上」(来年も絶対確実な売上)、「浮動売上」(売上が確実にあるとは言えないもの)、「新規売上」(新商品、新規事業、新規顧客から得られたもの)です。次年度計画作成のため「浮動売上」と「新規売上」を、プラスはもちろんマイナスのシミュレーションをします。マイナスの危機感を十分予測した上で 強気・中立・弱気 の3通りの「計画売上」を作成します。「確実売上+計画売上(中立)」が次期の売上(目標)です。さらに、重点項目の月別行動計画表を作成します。いつまでに何をするか決まっていないと実施されないからです。あと、撤退や中止の基準も決めておきます。それが無いと対応が遅くなり失敗や損失が大きくなるからです。検証は、3ヶ月実績と計画の増減比較表、実績3ヶ月プラス予定9ヶ月推移表で行います。
 経営計画は、ただ形式的に立派に見えるものを作成することよりも、何回もシミュレーションし考えることが大事であり、また結果を検証することで活かすことになるのです。

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