税理士法人SKC

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パナマ文書の影響

16.04.25 | 堺俊治の独り言的情報

パナマ文書と呼ばれている文書によって、アイスランドでは首相が退陣に追い込まれるほどの大きな騒動になっています。日本ではあまり大きな問題になっていませんが、世界では国を揺るがすような重大な問題となっています。

パナマ文書とは、パナマにあるモサック・フォンセカ法律事務所のデータがハッキングされて流出した機密文書のことです。この文書がICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)によって4月3日に公開されました。モサック・フォンセカ法律事務所のサービスはオフショアでの企業の設立、オフショア企業の管理と資産管理サービスの提供で、流出事件が発生するまで、モサック・フォンセカ法律事務所は「世界で最も口が堅い」オフショア金融業界のリーダーと評価されていたようです。そんなところからのデータ流出ですから、この流出事件は世界では「データジャーナリズム史上最大の漏洩事件」といわれているようです。
 この文書に何が記載されてあるかというと、オフショア(タックスヘイブン等)を利用して、節税や租税回避あるいは脱税をしようとしてこの法律事務所を利用した1970年から2016年までの世界中からの顧客21万4千社以上のデータです。
 オフショアというのは、金融の用語では、法人や個人の所得の全部又は一部に対して、全く税を課さなかったり、著しく低い税率しか設けていない国や地域の金融マーケットをさし、タックスヘイブン(租税回避地)といわれるものがその代表的なものです。日本の税制ではタックスヘイブンを利用した租税回避をさせないための税制を設けてありますが、残念ながら全てを課税出来ないのが現状のようです。
 タックスヘイブンを使っての、脱税やマネーロンダリングは犯罪ですが、節税のためにタックスヘイブンを利用することは、それが即違法という訳ではありません。しかしほとんどのオフショアに設立される会社はペーパーカンパニーで、現地での経済活動の実績はなく、モサック・フォンセカ法律事務所の様な代行業者が管理しているようです。そのペーパカンパニーの設立・管理のデータがパナマ文書の内容です。端的に言えば、タックスヘイブンでペーパーカンパニーを設立して租税回避をした会社や富裕層のデーターの一覧がパナマ文書です。まだ一部しか公開されていないようですが、それでも有名人(歌手やスポーツ選手なども)がぞくぞく挙がってきています。しかし、今問題とされているのは、各国の指導者や政府要人の名前(家族名も含め)です。
 租税を司る政府要人や国を守り国民の幸福のために活動する指導的政治家が、自国に治めるべき税金を回避して自国以外に蓄財するという行為に対し、その倫理観が問われています。中国では役人の不正に厳しい態度で挑んでいるはずの習主席の親族の名が挙がっています。その影響でしょうか、中国ではネットの検索に「パナマ文書」と入れても全く何も出てこないそうです。今のところは、日本の政府関係者や政治家の名前は出てきていないようですので、このまま出てこなければいいがと願っています。
 国内での節税は、その節税分は必然的に給与や未来のための投資に再分配されますが、タックスヘイブンでの節税は、自国外に蓄財されてしまいます。一説によれば、日本国内で課税されないでタックスヘイブンへ流れる年間の資金額は、日本の年間税収約50兆円を超えるほどの額だそうです。本来日本国内で課税され震災復興や医療・福祉等に再分配されるべき資産が、日本国外に移転してしまっていることになります。
 タックスヘイブンを採用している国や地域にとっては、この経済政策を取らざるを得ない事情がある訳で、この問題の解決は相当に困難と時間を要するとは思いますが、世界各国が協調して是正に向かって欲しいものです。トマ・ピケティが言うように、税制をグローバルに統一の方向に向けていかないと解決は見えてこないように思うのですが、時間がかかりそうです。

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