日高税務会計事務所

多角化が良いのか 専門性特化が良いのか?

16.10.11 | 所長メルマガ

個人の趣味の世界において、特定の分野でプロ級の腕前の人がいます。趣味は多彩だがどれも中途半端な人もいます。複数の趣味を持っていてもそれぞれが高いレベルの人もいます。これは才能が異なるから仕方ないと考えることも出来ます。しかし、ビジネスでは得意分野が無ければ存在し続けることが困難です。会社の多角化や専門特化がうまくいくのは社長の才能が影響するのでしょうか、あるいは環境要因なのでしょうか、今回はこれを考えてみましょう。

結論から言いますと 経営体力に応じた優先順位とバランスが重要 なのです。創業期は経営体力が極めて弱い(人・もの・金・経験・実績のどれもが不足しています)ことから、地域や分野・商品を絞って事業を始めるのが良いでしょう。ソフトバンクの孫さんが一年程度調査を行ってから事業を開始したと言われてますが、多くの起業は準備が不十分ななか、やむ得ない事情で始める場合が多いので、十分に絞り込まれていなくても良いと思います。実際やってみて初めて分かることも多いからです。「これしかない、イチかバチか」は精神性は高くても損得勘定から見ればギャンブルです。とにかく、この時期の多角化は無理でしょう。共倒れになる可能性が高いです。次に、試行錯誤の上、うまくいっているものに注目します。その分野で深掘りする(専門性を高める)か、周辺に広げるか、あるいはその両方を行うか検討します。ここで道が分かれると思います。ただ、中小零細企業においては、本格的な専門特化も多角化も難しものです。だから、同業者に比べ専門性が高いとか周辺分野に強いで良いと思います。それでも十分です。これから上が本格的な多角化や専門特化です。中小企業は資金力からみて専門特化の方が望ましいでしょう。専門分野で競争相手がほとんどいない状態を目指します。そうなれば大手企業にも負けません。生かさず殺さずの下請けから脱却して指名で注文が入るようになります。探せばそうした中小企業は全国的に結構あるようです。周辺分野事業から離れた多角化は、一見無謀のようですが、実力が上がってくると可能となります。身体能力の高い一流のスポーツ選手は、本業以外でも一般人より遙かに上手だったりします。これと同様、経営基礎体力の高い企業であれば、本業以外でも、優れた営業力や管理力などで新たな分野でついて行くことができ、短期間で、その分野の専門性をマスターすれば存続が可能です。以上のように状況に応じて取る道が違って来ると思います。ただ、多角化を考えたとき、組織や人の教育の問題も重要となりますので、社長が少数精鋭の職人集団を理想と考えるならば専門特化の方が良いでしょう。ところで、商品や取引先を集中させ過ぎないことがリスク管理の視点から言われます。ひとつで50%以上は大変危険であり、30%(3分の1)以下に抑えるのが望ましいそうです。こうした点から中小零細企業でも緩やかな多角化は考えておく必要があるでしょう。ただし、他所に真似できない独自な専門特化が出来ていれば必要ありませんが。これが出来る企業は限られます。ところで、効率性や利益性を考えると絞り込んで専門特化することが有利だと考えられます。大手でも家電等で事業を絞り込んだことが原因?で業績が悪化したところもあります。一昔前、米GEの立て直しに成功したジャック・ウェルチ氏の経営手腕が注目された時期がありました。業界の第一位あるいは二位に 現在あるかあるいは将来成れる見込の有る事業 以外から撤退(売却)するとのこと。これが欧米の経営スタイルのように思われました。ところが米コンサルタント業界の歴史について書かれた書物によりますと、当時アメリカでは事業部制が大流行し、有名コンサルタント会社も積極的にそれを提言し、その結果、数多くの事業部が乱立していたそうです。その結果、GEでも数十の事業部があり、ウェルチ氏はそれを整理して結果として業績を回復させたそうです。その辺の事情が分からず大企業でも絞り込み集中させるのが良しとされる風潮が生まれたのでは無いのでしょうか。バランス感覚を持って集中と分散を図り、企業が長く存続することを願います。

TOPへ