大阪プライム法律事務所

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行旅死亡人のこと知ってますか?

10.08.11 | ニュース六法

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全国で100歳以上の高齢者の所在が確認できないケースが相次いでいます。

死亡したことを知りつつ、年金不正受給のため隠していた親族の例(詐欺罪等の犯罪になります)もありますが、親族も知らないとか、身寄りもないままどこに行ったか本当に分からないケースが多く報道されています。都市化や核家族化が生んだ社会現象のようで、大阪で起こった2児放置殺人事件とも根底でつながるような気がします。地域社会を結ぶストロングコミュニティーの必要性を改めて思いました。この高齢者不明問題には、「行旅死亡人」(こうりょしぼうにん)も含まれているものと考えられます。・・・・(写真もしくは「続きを読む」をクリックして本文をお読みください)
 

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全国で100歳以上の高齢者の所在が確認できないケースが相次いでいます。

死亡を知りつつ、年金不正受給のため隠していた親族の例(詐欺罪等の犯罪になります)もありますが、親族も知らないとか、身寄りもないままどこに行ったか本当に分からないケースが多く報道されています。都市化や核家族化が生んだ社会現象のようで、大阪で起こった2児放置殺人事件とも根底でつながるような気がします。地域社会を結ぶストロングコミュニティーの必要性を改めて思いました。この高齢者不明問題には、「行旅死亡人」(こうりょしぼうにん)も含まれているものと考えられます。


行旅死亡人とは
 身元がわからないまま亡くなった場合や、身元がわかっても遺体の引き取り手が現れない場合に呼ばれる名称で、「行旅病人及行旅死亡人取扱法」によって、官報にその個別情報が掲載されています。

先日のNHKの報道によると、行方不明で家族などから警察に届けが出ている70歳以上の高齢者は、去年1年間に1万1707人と、行方不明者全体の14%余りに上っていて、前の年に比べて356人増えているとのことで、そのニュースの中で、行旅死亡人のことが触れられていました。

NHKによると、一昨年から今年8月5日までの「官報」における行旅死亡人公告を調べたところ、70歳以上とみられる高齢者だけでも396人が身元のわからないまま死亡していたとのことでした。ほとんどは名前すらわからない「氏名不詳」や本名かどうかわからない「自称」とされており、こうした人たちの中には戸籍や住民登録が残されたまま、生存していると見なされているケースもあると考えられると報じていました。

行旅病人及行旅死亡人取扱法

この法律は、明治32年に作られた法律ですので、名称が古色を帯びているのもうなづけるところかと思います。行旅中の病人と、行旅中に死亡した人の取り扱いに関して定めています。(本文はカナ漢字交じり文ですが、以下、現代語表記にしています。)

この法律では、行旅死亡人について、第1条で「行旅中死亡し引取者なき者をいう」としており、同条2項で「住所、居所もしくは氏名知れず、かつ引取者なき死亡人は、行旅死亡人とみなす」としています。このため、本人の氏名または本籍地・住所などが判明しない人で、かつ遺体の引き取り手が存在しない場合、行旅死亡人として取り扱われることになります。そのため、発見場所が自宅であっても、本人と断定することができなければ、行旅死亡人として取り扱われることになります。

行旅死亡人あるときは、その所在地市町村は、「その状況相貌遺留物件その他本人の認識に必要なる事項を記録したる後、その死体の埋葬又は火葬をなすべし」とし、墓地もしくは火葬場の管理者は埋葬又は火葬を拒むことができないことも規定しています(同法第7条)。

行旅死亡人の住所、居所もしくは氏名が分からないときは、市町村はその「状況相貌遺留物件その他本人の認識に必要なる事項を公署の掲示場に告示し、かつ官報もしくは新聞紙に公告すべし」としています(同法第9条)。つまり、市町村が遺体を火葬して遺骨として保存し、死亡推定日時や発見された場所、所持品や外見などの特徴などを市町村長名義にて官報に公告として掲載し、引き取り手を待つことになります。

ちなみに、発見された状態を問わないため、遺跡発掘現場で発見された人骨について、死亡推定日時を「江戸時代初期」とか、「遺棄から150年以上は経過していると見られる」といったような官報公告がなされることもあります。

行旅死亡人の住所もしくは居所及び氏名が分かったような場合は、市町村はすみやかに相続人に通知し、相続人がはっきりしないときは、扶養義務者もしくは同居の親族に通知し、又は公共団体に通知すべきこととしています(同法第10条)。ただ、本人の身元が判明した場合でも、「死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないとき」は、墓地埋葬法第9条によって、行旅死亡人と同じく市町村の取り扱いとなっています。

行旅死亡人の取扱にかかった費用について、この法律は、随分と細かい規定を設けています。遺留の金銭等を当てるとし、これに不足するときは相続人に請求することとしています。そして、市町村が官報公告後60日を経過しても費用弁償を受ける事が出来ない時は行旅死亡人の遺留物品を売却して費用に優先して充てることも規定されています。

 
 

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