大阪プライム法律事務所

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てのひらのメモ

10.09.18 | ニュース六法

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「保護責任者遺棄致死罪」などに問われた元俳優の裁判員裁判の判決が、9月17日にありました。この事件は、合成麻薬で容体が悪くなった女性に適切な救護措置を取らずに死なせたとして起訴されたものでした。公判では、被告が女性の容体に異変が生じた直後に119番していれば、救命できたかどうかが最大の争点でした。 
この事件を見ていて、私は、夏樹静子原作小説「てのひらのメモ」(講談社)を思い出していました。この小説は、同じ「保護責任者遺棄致死罪」がテーマの裁判員裁判を題材に描いたものです。このたび、NHKでドラマ化され、10月23日(土)放送予定とのことで、キャストは田中好子さん、板谷由夏さん、風間トオルさんほかのようです。・・・・(写真もしくは「続きを読む」をクリックして本文をお読みください)(写真は「てのひらのメモ」表紙)


 

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「保護責任者遺棄致死罪」などに問われた元俳優の裁判員裁判の判決が、9月17日にありました。この事件は、合成麻薬で容体が悪くなった女性に適切な救護措置を取らずに死なせたとして起訴されたものでした。公判では、被告が女性の容体に異変が生じた直後に119番していれば、救命できたかどうかが最大の争点でした。  
この事件を見ていて、私は、夏樹静子原作小説「てのひらのメモ」(講談社)を思い出していました。この小説は、同じ「保護責任者遺棄致死罪」がテーマの裁判員裁判を題材に描いたものです。このたび、NHKでドラマ化され、10月23日(土)放送予定とのことで、キャストは田中好子さん、板谷由夏さん、風間トオルさんほかのようです。
(写真は「てのひらのメモ」表紙)

 

今回の元俳優の被告の判決では、裁判長は「致死」の部分は認めず、「保護責任者遺棄」にとどめた上で、懲役2年6月(求刑・懲役6年)の実刑を言い渡しました。

保護責任者遺棄致死罪とは

幼児やお年寄り、身体障害者、病人を保護する責任がある人が、これらの人を放置したり、生存に必要な保護をしなかったりした結果、死亡させた場合に問われる罪をいいます。懲役3年以上の有期懲役に処され、裁判員裁判の対象となっています。致死がはずれると、保護責任者遺棄罪となって、3カ月以上5年以下の懲役で、そもそも裁判員裁判の対象となりません。

夏樹静子原作小説「てのひらのメモ」のストーリー

私は、これが出版されたころに、買って読みました。非常に感銘を受けた本でした。

内容を、文藝春秋社公式HPより引用しますと、「広告代理店で働くシングルマザーの千晶は、大切な会議に出席するため、喘息の発作が起きた子供を家に残して出社し、死なせてしまう。検察は千晶を『保護責任者遺棄致死』で起訴。市民から選ばれた裁判員は、彼女をどのように裁くか? 徹底した取材の末に書かれた、誰よりもリアルな書下ろし法廷小説」です。
この小説の主人公(主婦)は、この千晶被告の裁判の裁判員に選ばれました。千晶被告は夫を交通事故で亡くし、5才くらいの子供を一人で育てている広告製作会社のキャリアウーマンでした。その被告は、喘息気味の子供を家で寝かせたまま、仕事に戻り、いろんな事情が重なって家に帰るのが遅れたら、子供が喘息の発作を起こして死んでいたという事件。これが、保護責任者遺棄致死に当たるとして訴えられた裁判です。

小説では、審理が続くにつれ、シングルマザーの苦労が浮かび上がり、被告千晶が目立った子供への虐待を行った事実はないことが判明していくが、他方で義理の母が死んだ孫の世話をしたいと訴えていた事実や、死亡当日、子供が病気で伏せっていたにもかかわらず愛人の家を訪ねていた事実などが明らかになっていきます。母子家庭で生きていくために育児と仕事を両立しなければならない環境、被告の人並み以上のキャリア志向、義母との固執、近所の人の目、再婚を夢見ていた相手の不誠実な態度。裁判員の心は揺れ動いていきます。そして、さらに驚愕の事実が明かされます。果たして千晶は有罪か無罪か。そして量刑は。評議では、裁判員たちは、それぞれが自分の生い立ちや境遇と重ね合わせながら、思い思いの結論を述べていきます。主人公も・・・。

この被告は有罪か無罪か。ぜひ、直接に読んで、結果をみてください。ドラマも楽しみです。
 

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