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ホステス課税逆転判決 所得控除で最高裁初判断

10.03.07 | ニュース六法

ホステスさんの必要経費を考慮した基礎控除額の算定方法が争われた裁判で、最高裁第3小法廷(田原睦夫裁判長)は、3月2日に、報酬計算期間の全日数分を控除できるという、源泉納付をする雇い主に有利な初判断を示しました。この判決は、平成22年03月02日に最高裁判所第三小法廷が出した所得税納税告知処分取消等請求事件判決です。

訴えていたのは東京や神奈川などでパブクラブ(キャバレー)を経営する2社で、被告は税務署でした。・・・(続きを読むをクリックして本文をお読みください) (Photo by (c)Tomo.Yu )

ホステスさんの必要経費を考慮した基礎控除額の算定方法が争われた裁判で、最高裁第3小法廷(田原睦夫裁判長)は、3月2日に、報酬計算期間の全日数分を控除できるという、源泉納付をする雇い主に有利な初判断を示しました。 

この判決は、平成22年03月02日に最高裁判所第三小法廷が出した所得税納税告知処分取消等請求事件判決です。

訴えていたのは東京や神奈川などでパブクラブ(キャバレー)を経営する2社で、被告は税務署でした。 (Photo by (c)Tomo.Yu )

1、2審の判決では、「実際の出勤日数分しか控除できない」として税務当局が勝ちました。最高裁は、「ホステスの業務に関する報酬の額が一定の期間ごとに計算されて支払われている場合において,所得税法施行令322条にいう『当該支払金額の計算期間の日数』は,ホステスの実際の稼働日数ではなく,当該期間に含まれるすべての日数を指す」と解釈して、高裁の判決を破棄したのです。 

事案の概要

上告していた経営会社(X社)はパブクラブでホステスを使用していました。そして、ホステスが記載した出勤可能な曜日・時間を目安に、開店前までに、ホステスに当日の出勤の可否を電話して、その日のホステスの必要人数を確保して出勤を管理していました。そして、月の前半と後半で分けて、集計期間ごとに各ホステスの報酬額を計算し、15日までの報酬をその月の25日に、16日から月末までの報酬を翌月10日に、ホステスに対して支払っていました。その報酬額は、「1時間当たりの報酬額」に「勤務した時間数」を乗じ、「同伴手当」等を加算していました。

所得税法や同施行令では、経営者について、ホステスの所得税を源泉徴収して国に納付する義務がありますが、その際、ホステスの報酬から「報酬の計算期間の日数に5000円を掛けた額」を差し引いた上で、税額を算定すると定めています。つまり、ホステスさんは個人事業者となるので 働いているお店のオーナー(経営者)が 源泉徴収する場合の税額算定に際しては便宜上、1日当たり一律5000円を控除できると、所得税法で定めているわけです。

X社は「計算期間」を月約30日として、ホステス1人につき月約15万円を控除するなどして源泉所得税を納付していましたが、税務署が「控除額はホステスの実際の出勤日数をもとに算出するもの」として、納付すべき源泉所得税が足らないとして、追徴課税したというものです。これに腹を立てたX社側が、その追徴課税処分の取り消しを求めたのです。

争点

この裁判での争点は、「実際の出勤日数×5000円の控除」か、「計算期間中の全暦日数×5000円」の控除かでした。前者が税務署側、後者がX社の主張です。

最高裁は、これについて、施行令が定める「計算期間」について、「報酬を計算する期間の初日から末日までと理解するのが自然」と文言通りに解釈して、「実際の出勤日数」とする税務署側の主張を退けました。

地裁と高裁の判決は、「出勤日のみ必要経費が発生すると考えるのが自然で、その方が実際の必要経費額に近い」と、分かり易い意見を指摘して請求を棄却しました。

これに対し最高裁判所は、税法が報酬の計算期間に合わせて控除額を算定すると定めていることを挙げて、「みだりに規定の文言を離れて解釈すべきではない」と指摘した上で、「ホステス報酬で基礎控除方式が採られたのは還付の手数を省くため」と指摘し、条文上も契約期間を基にすべきだとして、1、2審の解釈は採用できないと結論づけたのです。

クラブ経営者にとっては、大変な朗報となりました。

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