大阪プライム法律事務所

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同性婚とは?

09.12.12 | ニュース六法

この12月1日に、AFP通信が、中南米初の同性婚夫婦となるはずだったアルゼンチンの男性カップルが、挙式を目前にして、最高裁の判断が出るまで婚姻許可の一時停止を言い渡されたと報道しました。同性婚とは・・・(ご興味のある方も無い方も、ぜひ続きをお読みください)

(Photo by (c)Tomo.Yu )

この12月1日に、AFP通信が、中南米初の同性婚夫婦となるはずだったアルゼンチンの男性カップルが、挙式を目前にして、最高裁の判断が出るまで婚姻許可の一時停止を言い渡されたと報道しました。 (Photo by (c)Tomo.Yu )

2人は数年前に結婚を申請した際は、男性同士であることを理由に許可されませんでしたが、異議申し立てを行った結果、ブエノスアイレス地裁は前月、2人の婚姻を公式に登記するよう命令を出したため、12月1日に結婚式を挙げることとなったそうです。しかし、挙式前日の30日になって、同地裁は、婚姻には最高裁判所の許可が必要だとして、2人に最高裁判断が出るまで挙式と婚姻を延期するよう言い渡しました。

同性婚(same-sex marriage)とは

男と男、女と女が結婚することをいいます。マスコミで報道される際は、「ゲイの結婚」とか「同性愛者の結婚」と呼ばれることが多いのですが、国によっては、慣習や法制度で、男女の夫婦と同じく一定の社会的な承認のもとで、法的な保障や保護が与えられています。

日本の法制度では、このような婚姻は全く想定していません。同性婚を認める法律がないのはもちろん、これを禁止する法律すら存在しないのです。憲法自体が24条で、「婚姻は両性の合意のみに基いて成立」するという表現で、当然の前提として「男女」のみを婚姻の対象としています。日本の「戸籍」制度でも、両性の届出のみを受け付ける形式になっており、そもそも「同性婚」などは、もうとう念頭にありません。

しかし、世界的に見たら、そうでもないのです。たとえば、オランダやベルギーなどは、法律上も同性同士の婚姻関係を異性同士の婚姻関係と同等としています。 

同性間の関係を認める法制度

これには、大きく二つのパターンがあります。

①法律上の婚姻の定義をジェンダーレスにする方法

オランダやベルギーなどがこの方法で、「愛情や性的な親密さに基づいた男女の関係」から「愛情や性的な親密さに基づいた両当事者間の関係」と定義を変え、法律上も同性同士の婚姻関係を異性同士の婚姻関係と同等としています。

②パートナーシップ法による方法

デンマークやノルウェー、スウェーデンのほか、イギリスやドイツなど、割と多くの国で見かけられる制度で、男女の婚姻とは別制度にして、異性夫婦に認められる権利の全部または一部を同性婚者にも認めるという法律(パートナーシップ法などという)を作っています。これは、同居、協力、扶助などの義務と、生活財の共有権や遺産相続権などの権利とを相互に規定した民事的な契約関係であるとみなし、そうした権利と義務の全てもしくは一部を同性婚者に認め、制度的に保障したりする法律です。ドメスチックパートナー法(domestic partner)、登録パートナーシップ法(registered partnership)、シビルユニオン法(civil union)など、呼び方はいろいろです。

 

エメリタ事件(男同士夫婦の戸籍を無効にした裁判例)
日本には、同性婚を認めるかどうかに関する直接の判例は見当たりませんが、平成11年(1999年)1月7日の佐賀家庭裁判所審判で、参考になる判断が示されています。これは、フィリピン人「ロムアルデス・マリア・エメリタ」と、フィリピン国の方式により婚姻した日本人男Aについて、日本で婚姻の届出がされた後、フィリピン人「エメリタ」が、実は男であったことが判明し、Aから「戸籍訂正許可の申立て」がされた事案において、家庭裁判所がそれを認めたものです。(家庭裁判月報51巻6号71頁)
同家裁は、申立人A(男)と婚姻したエメリタ(男)の本国法であるフィリピン家族法によれば、婚姻の合意を欠き無効になるものと解されるとしました。

ちなみに、なぜこんなことになったかを説明すると、A男は、平成7年ころ、福岡市内のフィリピンパブで働いていたフィリピン国籍のエメリタと知り合い、まもなく親密に交際するようになりました。その後A男は、エメリタから求婚されたこともあって、平成8年、フィリピン国内でエメリタの両親の立ち会いのもと、フィリピン国の方式で婚姻したのです。そしてA男は,その月に役場に婚姻の届出をし、その結果、A男の本籍地に新戸籍が編成されました。その後、A男はエメリタと同居していましたが、平成9年に、エメリタの入国査証の更新のために福岡入国管理局にエメリタと共に赴いたところ、エメリタが偽造旅券を使用して日本に入国したこと、そして真正の旅券では男性になっていることを告げられたのです。その後、役場からA男に対して、エメリタとの婚姻届出が不法である旨の通知がなされ、A男が本件戸籍訂正の申立てをしたものでした。 

なお、エメリタは、そのころ、入国管理局職員に身柄を拘束されてフィリピンに強制送還されました。ちなみに、エメリタ本人は、入国管理局の事情聴取の際には、みずから、自分が女性ではなく男性であることを認めたとのことです。

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