大阪プライム法律事務所

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地域猫をご存じですか?

10.06.12 | ニュース六法

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餌付けで集まった野良猫のフン尿などで被害を受けたとして、東京都三鷹市の住民17人が、同じ集合住宅に住む将棋の元名人加藤一二三九段に、「餌付けの中止」と慰謝料を求めた訴訟の判決が、2010年5月13日に、東京地裁立川支部であり、餌付けの差し止めと204万円の損害賠償の支払いを命じました。

この裁判の判決文の中で、裁判長が「地域猫」に言及していました。・・・(イラストもしくは「続きを読む」をクリックして本文をお読みください)

 

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餌付けで集まった野良猫のフン尿などで被害を受けたとして、東京都三鷹市の住民17人が、同じ集合住宅に住む将棋の元名人加藤一二三九段に、「餌付けの中止」と慰謝料を求めた訴訟の判決が、2010年5月13日に、東京地裁立川支部であり、餌付けの差し止めと204万円の損害賠償の支払いを命じました。この裁判の判決文の中で、裁判長が「地域猫」に言及していました。

 

判決は、加藤九段が、猫への不妊去勢手術やトイレ設置などの対策を取った点について、「動物愛護の精神に基づき、少しずつ地域猫活動の理念に沿うものになってきた」と評価したものの、他方で近隣住民との話し合いの場に出席せず、与え続ければ猫が寄ってくることを知りながら、なお餌やりを続けた点などを問題であるとして、これが「限度を超え、原告らの人格権を侵害する」としたものでした。

地域猫とは

地域猫とは、特定の飼い主がいない猫で、かつその猫が住みつく地域の猫好きな複数の住民たちの協力によって世話され管理されている猫のことをいいます。特定個人だけから餌をもらう猫は、その個人の「飼い猫」であり、地域猫とはいいません。また、不特定多数の人からただ餌やりだけをされていて管理責任者のいない猫は「野良猫」であり、地域猫とはいいません。

「地域猫活動」とは

特定の飼い主がいない猫に不妊去勢手術を施して、これ以上不幸な猫をつくらないようにしたうえで、一代限りの命を全うするまで、猫のトイレ、エサなどを地域で適正に管理することにより、野良猫の数と被害を減らしていく活動のことをいいます。その地域の住民と地域猫活動に取り組むボランティア、そして行政の三者が協力しあって、野良猫の拡大を防ぎ、人と猫とが共生する地域づくりをしていくことを目的にしています。

地域猫活動を始めたのは横浜市磯子区の猫好きな住民たちで、野良猫たちを共同で世話をし、増やさないようにしはじめたのが最初と言われています。これが全国に広がって、「地域猫活動」として普及してきました。

早稲田大学地域猫の会(通称「わせねこ」)
なんと早稲田大学に、大学公認の地域猫活動サークルがあるようです。このサークルは、大学のキャンパス内に住む猫を対象に地域猫活動を行なっています。そこでの活動が、正統派地域猫活動と言えそうで、そこで行っている活動の主な内容は、定期的な餌やり、構内の猫の不妊去勢手術、猫の餌場やその周辺の清掃、地域猫に関するシンポジウムへの参加、活動への理解を求める為の広報紙の発行、メンバーによる定例会等とのことのようです。

関西での動き

2010年3月17日の大阪日日新聞で、「野良猫を『街ねこ』に 避妊去勢し地域で飼育」というタイトルで、以下のような記事が出ていました。■  阪南公園愛護会の会長を兼ねる竹田会長。以前から、同公園内に捨てられる子猫が増えたのを感じていたため、約6年前から野良猫40匹に自費で避妊去勢手術を施してきた。転機は昨年の10月に訪れた。活動の輪を広げようと、同区の中川喜彦区長に相談。同区役所から、大阪市が進める「大阪市街ねこモデル地区事業」を紹介された。同年末には、ネコ愛護会を結成。大阪市の補助を受けながら活動を続ける。主な活動時間は夜間。捕獲した猫は、同事業に協力する獣医師の元で手術を実施する。その後、「街ねこ」として耳に印を付けて、他の猫と区別。餌やりの時間と場所を決め、健康管理などを行う。竹田会長は「餌を与えるだけで満足している人は、あまりにも無責任。避妊去勢しなければ増えるだけ」と話す。また、竹田会長が属する阪南連合振興町会の石田宏会長からは「来年度からは猫予算を取って活動を充実させたい」と、後押しを受けている。ネコ愛護会の活動が認知されて協力者が増えれば、「阪南公園とその周囲が中心の活動から、連合町会全域に広げたい」と、竹田会長は今後の活動について話す。■

課題

この活動の課題は多くありますが、そのひとつに、猫に餌を与える活動を安易に「地域猫活動」として、トラブルになるケースが相次ぐようになったことでしょうか。今回の加藤棋士のケースがこれに該当するかどうかは、私には断定できませんが、加藤棋士自身は、自らの行為を「地域猫活動」の概念の範囲内として主張をしていたようです。これに対して原告住民側は、「合意形成も無いのに集合住宅内でやってよいわけが無い」と反論していました。判決は、同棋士が猫に避妊手術を受けさせていたことなどを指摘して「少しずつ地域猫活動の理念に沿うものになってきた」と評価しましたが、他方で近隣住民との話し合いの場に出席しなかったことや、地域対立が生じながらなお餌やりを続けた点が、違法と判断されました。その地域住民の理解が不可欠であることが、この活動の重要な要素だと思います。

 
 

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