大阪プライム法律事務所

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捜査特別報奨金制度とは?

09.11.15 | ニュース六法

英国人女性リンゼイ・アン・ホーカーさん(当時22歳)の死体遺棄の容疑者が逮捕されました。

指名手配を受けて逃走中に整形手術をうけていたことなどから、大きな話題となりましたが、この事件でかけられていた懸賞金も関心を呼んでいます。懸賞金は、正式には「捜査特別報奨金」といいますが、どのようなものでしょうか。

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英国人女性リンゼイ・アン・ホーカーさん(当時22歳)の死体遺棄の容疑者が逮捕されました。指名手配を受けて逃走中に整形手術をうけていたことなどから、大きな話題となりましたが、この事件でかけられていた懸賞金も関心を呼んでいます。懸賞金は、正式には「捜査特別報奨金」といいますが、どのようなものでしょうか。

 

捜査特別報奨金とは、都道府県警察が捜査中の事件のうち、警察庁が特に指定するものに関し、その事件の検挙に結び付く有力な情報を提供した者に対して金員を支払う旨を広告した場合において、有力な情報を提供した者のうちの「優等者」に対して、民法の規定に従って支払うものをいいます。懸賞金は100万円または300万円で、特に必要がある場合には、1,000万円を超えない範囲内で増額できます。匿名者や警察職員やその親族、共犯者などには支給されません。 

この制度は、松山ホステス殺害事件やマブチモーター社長宅殺人放火事件において、遺族らが情報提供を懸賞金つきで募集して、事件解決に結びついたことが導入のきっかけとなって、平成19年4月にスタートしました。当初は、警察がすべきことを、懸賞金をかけて市民に通報を促すことに躊躇の面もありましたが、他人とのかかわりを持たない現代社会においては、警察への情報提供に消極的な傾向がみられ、犯罪解決に役立つ情報が得られにくくなっていることなども、制度創設の背景となりました。 

これまで55の事件が対象となり、16の事件で懸賞が継続しています。今回の事件は、指名手配容疑者に関する初のケースとして、制度の対象になりました。懸賞金の金額は、指名手配者のうち、「警察庁指定被疑者特別手配要綱」に基づく警察庁特別手配その他警察庁が重要なものとして指定する手配がなされている者に係る事件について100万円、その中でも社会的反響の大きい特異又は重要な事件の場合は300万円が上限額ですが、リンゼイさん事件は「特に必要がある」として最高額の1000万円まで引き上げられていました。 

この懸賞金は、民法の規定に基づいて運用されていますが、この規定とは第529条と第532条の規定をいいます。そこには次のように規定されています。
(懸賞広告)
第529条 ある行為をした者に一定の報酬を与える旨を広告した者(以下この款において「懸賞広告者」という。)は、その行為をした者に対してその報酬を与える義務を負う。
(優等懸賞広告)
第532条 広告に定めた行為をした者が数人ある場合において、その優等者のみに報酬を与えるべきときは、その広告は、応募の期間を定めたときに限り、その効力を有する。
2 前項の場合において、応募者中いずれの者の行為が優等であるかは、広告中に定めた者が判定し、広告中に判定をする者を定めなかったときは懸賞広告者が判定する。
3 応募者は、前項の判定に対して異議を述べることができない。
4 前条第2項の規定は、数人の行為が同等と判定された場合について準用する。  

捜査特別報奨金制度は、この民法532条の「優等懸賞広告」であることを明示しているため、原則としては、「優等者」のみが賞金を受け取ることになります。しかし、情報提供者は複数現れることが通常で、そこに明確な優劣が付けにくい場合もあります。このように、数人の行為が「同等」と判定された場合は、民法532条4項では、前条の規定が準用されるため、各自が等しい割合で報酬を受ける権利を有するとされています。準用であり、同等といっても多少の優劣はあることから、貢献度合に応じて、上限額の範囲内において分割して支払われることになります。 

世の中の関心は、誰に支払われるかですが、支払については、都道府県警察の長からの申請に基づき、警察庁刑事局長が、警察庁長官官房審議官を委員長とする「捜査特別報奨金審査委員会」に諮問されて決定されます。 

支払先予想では、大阪市内のフェリー乗り場で「似た男がいる」と通報した人、容疑者が1年2カ月間潜伏していた大阪府茨木市の土木会社の人、整形手術を通報した名古屋市のクリニックなどが可能性として語られています。ただ、フェリー会社や茨木市の会社でも、複数の人々が関わっていることから、警察庁としては、今後のよい先例となるよう、慎重に審査していただきたいものです。

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