大阪プライム法律事務所

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Winny開発者、逆転無罪!

09.10.13 | ニュース六法

2009年10月8日、ファイル共有ソフトWinnyの開発者に対する著作権法違反事件公判において、大阪高裁は一審判決を破棄し、無罪を言い渡しました。

当事務所の那須智美弁護士は、弁護団の一員として参加していました。

 (Photo by (c)Tomo.Yu )

2009年10月8日、ファイル共有ソフトWinnyの開発者である金子勇氏に対する著作権法違反事件公判において、大阪高裁は一審判決を破棄し、無罪を言い渡しました。当事務所の那須智美弁護士は、弁護団の一員として参加していました。 (Photo by (c)Tomo.Yu )

 

事件の流れ 本件は、Winnyを開発して一般に公開した行為は、違法な著作物をネット上に流すという犯罪を幇助(手助け)したことになるとして起訴されたものです。06年12月の京都地裁判決では、ほう助罪成立の判断基準について、「Winnyの利用状況と、それに対する被告の認識、さらにWinnyを提供する際の主観的態様」の3点を示したうえ、「利用状況では、大半が違法ファイルをやりとりしており、金子被告もその現状を知りながら、開発・改良を重ねた」としてほう助罪の成立を認め、有罪としました。

控訴審判決 今回の控訴審は、Winny自体を「多様な情報の交換を通信の秘密を保持しつつ効率的に可能にする有用性があるとともに、著作権の侵害にも用い得るという価値中立のソフト」であると認定し、幇助犯が成立するには「ソフトの提供者が不特定多数の者のうちには違法行為をする者が出る可能性・蓋然性があると認識し、認容しているだけでは足りず、それ以上にソフトを違法行為の用途のみに又はこれを主要な用途として使用させるようにインターネット上で勧めてソフトを提供する場合に幇助犯が成立する」との基準を示しました。 

そして、開発者である金子氏については「インターネット上の記載、発言をみても、本件Winnyを著作権侵害の用途のみに又はこれを主要な用途として使用させるようにインターネット上で勧めて本件Winnyを提供したとは認めることは出来ない」と認定し、無罪を言い渡しました。

技術の提供者は幇助犯か この事件は、難しい論点が多く、技術そのもの、技術を適用して配布・公開する行為、どのような意図・方法で配布・公開するかを、ソフト開発技術者や著作権団体、法律家などが、それぞれの関心のもとで議論が続いていました。特に法律家の場合は、この3番目が議論の中心になっていたように思います。このような中、壇俊光弁護士(弁護団事務局長)は、一審判決後、「誰かが、不特定多数の人が悪いことをするかもしれないと知っていて、技術を提供した者は幇助なんだということを、裁判所が真っ向から認めてしまった。高速道路でみんなが速度違反をしていることを知っていたら、国土交通省の大臣は捕まるのか」と、ブログでコメントを出していました。Winnyを包丁に例えて、包丁で殺人が行われた場合に、それを製造販売した者も殺人幇助となるか、という議論がなされます。著作権では、CDやDVDの製造販売でも同じ議論が生じます。一審判決は、この辺の議論整理が十分でないように思われました。

いずれにせよ、金子氏の逮捕は、ソフト開発に大きな痛手を与えたと言われています。Winnyを、社会的にもっと有用で安心なソフトとして進化するはずであったのが、その途中で悪用されわけで、その技術の芽が逮捕で摘まれてしまった感があります。社会は、むしろ、金子氏の協力を得て、悪用ができないような仕組みづくりや、悪用者を摘発する方策をしていくべきであったのではないでしょうか。そうでないと、新たな技術やソフトを開発が、萎縮してしまい、日本の技術はますます世界に遅れを取っていくのではないでしょうか。

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