大阪プライム法律事務所

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「あのねのね」原田伸郎さんの猟銃騒ぎ!?

09.06.13 | ニュース六法

6月はじめに、「あのねのね」のメンバーでタレントの原田伸郎さんが、テレビの番組中に許可なく猟銃を手にしたとして、滋賀県警がびわこ放送本社を銃刀法違反容疑で家宅捜索し、原田さんからも立件を前提に事情を聴かれたことが、話題を呼びました。その後、立件は見送られましたが、そもそも、当初から、原田さんを立件対象としたことに大きな問題があったのではないでしょうか。
 (Sako M-75 本記事とは無関係です Photo by (c)cabelas)

6月はじめに、「あのねのね」のメンバーでタレントの原田伸郎さんが、テレビの番組中に許可なく猟銃を手にしたとして、滋賀県警がびわこ放送本社を銃刀法違反容疑で家宅捜索し、原田さんからも立件を前提に事情を聴かれたことが、話題を呼びました。その後、立件は見送られましたが、そもそも、当初から、原田さんを立件対象としたことに大きな問題があったのではないでしょうか。  (Sako M-75 本記事とは無関係です Photo by (c)cabelas) 

 

原田さんは、1月に生放送された地域情報番組の中で、地元猟友会の男性から手渡された猟銃を約6秒間だけ手に取って「うわ、重たいもんですね」と話したそうです。その後、猟友会の男性やびわ湖放送関係者ら3人のみが、銃刀法違反(携帯)容疑で書類送検され、原田さんの送検は見送られました。 

6月2日に、このニュースが流れた際は、これは一体どういう事なのだろうか、と思いました。滋賀県警の意図が分かりません。果たして、こういった行為が、銃刀法で禁ずる所持に当たるのか。また、そもそも、猟友会の男性から手渡されて、その目の前で約6秒間手に取り「うわ、重たいもんですね」と言って返した行為について、可罰的違法性があるのでしょうか。 

猟銃の「所持」に当たるのか

今回の原田氏の行為が、銃砲の「所持」に当たるのかどうかが問題となります。この点で、昭和52年11月29日最高裁判所決定が参考となります。これによれば、同法にいう「所持」とは、所定の物の保管について実力支配関係をもつことをいい、たといそれが数分間にとどまる場合であっても、所持にあたるとして、拳銃の購入を依頼され、自分が買主であるかのように振舞って買い入れた後に売主が帰った後、廊下に出て依頼者に拳銃を手渡した場合は、この数分の保管行為が「所持」にあたるとしました。ただ、この決定をよく読み限りでは、持っていた間は、「売主及び依頼者のいずれにも右拳銃等に対する排他的な実力支配関係はなかった」という点が強調されていたからです。このことからすると、今回の原田伸郎氏のように、免許所持者の目の前で、その監視のもとで猟銃を手にしたようなケースとは全く異なっていて、原田氏に「排他的な実力支配関係」が生じたと言えないかと思われます。このことから、滋賀県警が、原田さんの所持容疑について、「銃の受け渡しがアドリブ的に行われ、所持には当たらない」と判断して立件を見送ったのは当然です。

 

「可罰的違法性」はあるのか(一厘事件)

そもそも、今回のように、猟友会の男性から手渡されて、その目の前で約6秒間手に取り「うわ、重たいもんですね」と言って返した行為について、可罰的違法性があるのでしょうか。この観点から、テレビのコメントで、滋賀県警の原田氏立件の動きについて批判した弁護士がいましたが、もっともな意見と考えます。 

この問題で、よく引用されるのは、「一厘事件(大判明治43年10月11日刑録16輯1620頁)」です。これは、タバコの葉一枚を当時の専売公社に納入せず、自分で吸ったことから、煙草専売法違反罪で起訴された事件です。吸ったタバコの葉一枚の価値が、わずか「一厘」であったことから、この名前で呼ばれています。大審院は、この事件を無罪としたが、その理由として、「犯人ニ危険性アリト認ムヘキ特殊ノ情況ノ下ニ決行セラレタルモノニアラサル限リ共同生活上ノ観念ニ於テ刑罰ノ制裁ノ下ニ法律ノ保護ヲ要求スヘキ法益ノ侵害卜認メサル以上」と述べました。つまりは、このような零細な行為については、被告人に危険性があると認めるべき特殊の情況のもとに決行されたものだけが、刑罰の対象とすべきであるというものでした。

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