大阪プライム法律事務所

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韓国の最高裁判所で「姦通罪」は合憲と判断

08.11.15 | ニュース六法

韓国憲法裁判所は、08年10月30日に、同国で残る姦通罪は合憲と判断しました。韓国での憲法裁の合憲判断は90年以降4回目です。

姦通罪は、現在の日本ではない犯罪ですが、戦前にはあった刑罰でした。 


(Photo by (c)Tomo.Yun)

韓国憲法裁判所は、08年10月30日に、同国で残る姦通罪は合憲と判断しました。韓国での憲法裁の合憲判断は90年以降4回目です。

姦通罪は、現在の日本ではない犯罪ですが、戦前にはあった刑罰でした。

(Photo by (c)Tomo.Yun)

 

今回の合憲判断は4回目となりましたが、裁判官9人のうち過半数の5人が違憲という意見でしたが、違憲決定には裁判官の3分の2(6人)以上が同意しなくてはならないため、結果的には合憲となったようです。この事件は、オク・ソリという、韓国で有名な女性タレントが、ある男性と姦通した疑惑で在宅起訴されたというもので、姦通罪に対する違憲法律審判を求めたために、刑事裁判が一旦中断され、今回の憲法判断を待っていたとのことである。この日の合憲決定によって、この姦通罪事件裁判が再度進行されることになりました。

 

戦前の日本には、有夫の女性を対象とした「姦通罪」という刑罰があり、2年以下の懲役でした。夫を告訴権者とする親告罪でしたが、他方、妻のある男性が妻以外の女性との関係については処罰されませんでした。つまり、妻側にだけ貞操の義務を科したものでした。

 

今から考えると、これほどの男女不平等はありません。このため、戦後の日本国憲法の制定に伴って、男女を平等にするためには、妻のある男性の姦通も処罰することで平等を保つのか、夫のある女性の姦通も処罰しないか、のいずれかにする必要がありました。結局、日本の国会は、昭和22年の刑法改正で、後者を選んで姦通罪そのものを廃止することにしたのです。ちなみに、当時の国会議員は2号さんを抱えていたことが多い時代でもあって、男性の姦通も罰することになったら大変だという気持ちが影響したと推測されています。

 

もし、このときの国会で、男女ともに姦通罪を残していたら、今の日本はどうなっていたのでしょうか。「不倫は文化だ」と述べたタレントもいますが、少なくとも不倫行為は、少しは減っていたのでしょうか。ただ、このように道徳面での規制を法律が厳しくするということが、本当に社会全体にとって幸福をもたらしたかどうか、を考えると、廃止をした当時の決断は正しかったように思います。

 

韓国の姦通罪では、日本の旧規定と違って、既婚者の場合は男女を問わず姦通罪が適用されます。韓国で姦通罪が残った経緯はよくは知りませんが、99年に、政府が姦通罪を廃止しようとしたところ、女性界の厳しい世論のために断念したということでした。女性が反対するということは、男性の不倫行為の処罰を廃止することへの女性の危惧からだったようです。

 

ただ、東アジアで姦通罪を置いているのは韓国と台湾くらいだそうで、時代の流れとかみ合っていないのも事実です。その後、韓国女性の考え方も大きく変化しているようで、最近は、女性の自由を奪うという考え方が浸透したためか、韓国女性団体連合は、今回の憲法裁判所の決定を受けて、「姦通罪が夫婦間に成されるべき信頼や責任を、国の刑罰権にのみ任せ、実質的な代案作りや認識変化の機会をさえぎっているという側面で懸念される」という声明を出しました。将来的には違憲の決定がなされる日が到来するのではないでしょうか。(詳しくはニュース六法参照)

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