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大相撲の力士は「労働者」?

08.10.15 | ニュース六法

大麻所持容疑で逮捕され、処分保留で釈放された大相撲の元若ノ鵬(ガグロエフ・ソスラン元力士)が、9月11日に、本相撲協会を相手取り、解雇処分の無効確認を求めて提訴したことが報道されました。その後、元若ノ鵬は、八百長疑惑を証言するなど迷走し、代理人弁護士を困らせていますがそれはさておき、解雇論争で主に議論となるのは「解雇権行使が濫用かどうか」です。

しかし、そもそも大相撲の力士は「労働者」なのでしょうか。 

 

 

 

大麻所持容疑で逮捕され、処分保留で釈放された大相撲の元若ノ鵬(ガグロエフ・ソスラン元力士)が、9月11日に、本相撲協会を相手取り、解雇処分の無効確認を求めて提訴したことが報道されました。その後、元若ノ鵬は、八百長疑惑を証言するなど、迷走し、代理人弁護士を困らせていますがそれはさておき、解雇論争で主に議論となるのは「解雇権行使が濫用かどうか」です。しかし、そもそも大相撲の力士は「労働者」なのでしょうか。 

 

「解雇権濫用法理」 若ノ鵬の弁護士によると、今回の解雇は協会が過去に下した処分と比較して重すぎると主張しています。特に、昨年の時津風部屋での力士急死事件の被告人3力士が解雇されていない例などを挙げて、「解雇は濫用で無効」と述べました。この主張は、労働法でいう「解雇権濫用法理」です。この主張は、労働法的には十分に論争する価値はありそうです。 

プロ野球選手は労働者か 力士の労働者性を論じる前に、「プロ野球選手が労働者」なのかという議論もあります。2004年にあったオリックス・ブルーウェーブと近鉄バファローズの球団統合を巡る労組・日本プロ野球選手会(古田敦也会長=ヤクルト)と日本プロフェッショナル野球組織(NPB)との労使紛争の際にも話題になりました。結論だけを言うと、プロ野球選手は各球団に雇用された労働者であり、「日本プロ野球選手会」は、「労働組合」です。正確には「社団法人日本プロ野球選手会」と「労働組合日本プロ野球選手会」の2法人になっていて、前者は1980年8月15日に社団法人として法人格取得し、後者は1985年11月19日に労働組合として認定を受けています。 

財団法人日本相撲協会寄付行為 この第35条で、「この法人には、力士をおく。(中略)力士は、相撲道に精進するものとする。力士は、有給とする。」とし、力士は協会に所属して有給と規定されているほか、給与やその他の福利厚生規程が別に定められることなっています。 

この別の規程たる「財団法人日本相撲協会寄付行為施行細則」では、第53条で「力士は、協会所属力士とする。」とした上で、十枚目以上の力士は、協会が採用して登録を受け、協会のもとで給与等を受けることとなっていて、協会に雇用された者、つまりは「労働者」だろうということが分かります。 これからして、「相撲部屋」は、協会の一内部部局に過ぎないようです。 

幕下以下の力士 これはどうかといえば、「力士養成員」と呼び、「本場所中のみ」「電車貸および手当を支給する。」とされ、電車賃は、実際支給する必要あると認めた者に対してのみ「乗車券」という現物支給があって、手当の額は決められてはいるが、本場所中のみで、小遣いのようなものです。これからして、幕下以下は労働者ではなく、「いわば研修生」のようなもので、十両までが労働者と言える感じです。 

「力士会」 力士会という、あたかもプロ野球選手の選手会と同じような存在があります。しかし、プロ野球の選手会が自主的に結成された労働組合であるのに対して、力士会は違うようです。力士会は、細則が根拠で結成されていますが、会員の親睦を図り、人格向上・修業の機関として、協会が認めた組織で、十枚目以上の力士で構成され、理事会で決められた助成金が支給されるとあり、協会内組織といえそうです。ちなみに、2008年07月01日の日経NETに、「月給アップを呼び掛け 朝青龍が力士会で発言」とのタイトルで、「大相撲の横綱朝青龍が1日、愛知県体育館で行われた力士会で月給を上げることを呼び掛けた。自身が会長を務める同会で発言し、他の力士からも賛同を得たという。朝青龍は『(個人としてではなく)みんなの考えだよ。地方では交通費が掛かる人もいるしね』と説明した。」と報じていました。組織内組織とはいえ、やや労働組合的機能も持っているようです。 

 

(詳しくはニュース六法をご覧下さい)

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