大阪プライム法律事務所

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ニューハーフとの同性婚!?

11.10.14 | ニュース六法

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福岡県警は10月12日、ニューハーフのフィリピン人男性と偽装結婚したとして、福岡県県の定暴力団系組長を、電磁的公正証書原本不実記録・同供用容疑で逮捕したと報道されました。県警によると、「女性だと思っていた。偽装結婚ではない」と容疑を否認しているといいます。同性と知っていたかどうかはこれからの調べになると思いますが、結果的には同性同士の婚姻届出がなされていたことになります。
 
同性婚は、日本の法律ではできませんが、ときどき、今回のような事件が生じています。
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「発表によると、容疑者は2009年2月26日、福岡市博多区の区役所に、容疑者を夫、フィリピン人の男(40)を妻とする婚姻届を出し、戸籍にうその記録をさせるなどした疑いがある。妻の名前は偽名を使い、女装した写真を貼った偽造旅券を窓口で示したという。県警などは昨年3月、別のフィリピン人のニューハーフの男3人を出入国管理法違反(不法入国)の疑いで逮捕。3人が、容疑者との婚姻届を出した男の紹介で入国したと話したことから、容疑者が浮上した。暴力団がフィリピン人を組織的に不法就労させていた疑いがあるとみて、容疑者ら2人の関与を調べる。不法入国容疑で逮捕された男らの一部は「2人は愛し合っていた」と話しているという。」(2011年10月13日朝日新聞記事)(個人名は省略)
 
ちなみに、相手のフィリピン人男性は、女性名義の偽造旅券を所持し、昨年3月に帰国したといいます。
 
今回の事件は、外国籍の者との婚姻届出であったために、見抜けなかった面があったものと思います。日本人同士であれば「戸籍」で、双方の性が分かり、男女の届出のみを受け付ける形式になっていて、「同性婚」などは生じえません。
 
今回とよく似た事件例(エメリタ事件)
平成11年(1999年)1月7日の佐賀家庭裁判所審判で、今回とある意味でよく似た事例についての判断が示されています。「エメリタ事件」と呼ばれて、判例集で公刊されていますが、ここに出てくるAさんは、少し気の毒です。
 
これは、フィリピン人「ロムアルデス・マリア・エメリタ」と、フィリピン国の方式により婚姻した日本人男Aについて、日本で婚姻の届出がされた後、フィリピン人「エメリタ」が、実は男であったことが判明し、Aから「戸籍訂正許可の申立て」がされた事案において、家庭裁判所がそれを認めたものです。(家庭裁判月報51巻6号71頁)

その判示によると、
「婚姻の実質的成立要件は、法例13条1項により各当事者の本国法によるところ、申立人Aの本国法である日本法によれば、男性同士ないし女性同士の同性婚は、男女間における婚姻的共同生活に入る意思、すなわち婚姻意思を欠く無効なものと解すべきであり、申立人Aと婚姻したエメリタの本国法であるフィリピン家族法によれば婚姻の合意を欠き無効になるものと解される。」

「認定事実によれば、申立人Aの戸籍中、前記婚姻事項は、エメリタの偽造旅券に基づいて作成されたフィリピン国の婚姻証書の提出により記載されたものであること、したがって、前記の報告的婚姻届出により、戸籍に錯誤ないし法律上許されない戸籍記載がされたことが明らかである。そして、このように、明らかに錯誤ないし法律上許されない戸籍記載がされている場合、それが重大な身分事項に関するものであっても、その真実の身分関係につき当事者間において明白で争いがなく,これを裏付ける客観的な証拠があるときは、ことさらその真実の身分関係について確定裁判を経るまでもなく、直ちに戸籍法113条にしたがい戸籍の訂正をすることができるものと解するのが相当である。」

どうしてこのようなことに?
ちなみに、関心のある方のために、なぜこんなことになったかを説明すると、Aは、平成7年ころ、福岡市内のフィリピンパブで働いていたフィリピン国籍のエメリタと知り合い、まもなく親密に交際するようになった。その後Aは、エメリタから求婚されたこともあって、平成8年、フィリピン国内でエメリタの両親の立ち会いのもと、フィリピン国の方式で婚姻した。そしてAは,その月に役場に婚姻の届出をし、その結果、Aの本籍地に新戸籍が編成されました。その後、Aはエメリタと同居していましたが、平成9年に、エメリタの入国査証の更新のために福岡入国管理局にエメリタと共に赴いたところ、エメリタが偽造旅券を使用して日本に入国したこと、そして真正の旅券では男性になっていることを告げられました。その後、役場からAに対して、エメリタとの婚姻届出が不法である旨の戸籍法24条1項による通知がなされ、Aが本件戸籍訂正の申立てをしたものでした。なお、エメリタは、そのころ、入国管理局職員に身柄を拘束されてフィリピンに強制送還されました。ちなみに、エメリタ本人は、入国管理局の事情聴取の際には、みずから、自分が女性ではなく男性であることを認めたとのことでした。このAさんのケースは、少し、気の毒な気がします。

同性婚について
冒頭に述べた今回の福岡での事件は、不法就労の摘発逃れのための背景があると思えますが、同性の純粋な愛情からの結婚の場合もあるかもしれません。ただし、その場合でも、「同性婚」は、現在の日本では認められてはいませんしかし世界には、認めている国や地域はいくつかあり、認めるかどうか議論されている国もあります。
 
例えば、アメリカマサチューセッツ州2003年11月に、州最高裁が、同性結婚を認めないのは州憲法の「状態の平等な保護条項」違反であるとして実現を指示する判断を示し、2004年 5月から同性結婚の登録が始まりました。では、
 
カリフォルニア州、州最高裁が「同性結婚を認めないのは州憲法違反」との判決を下し、シュワルツェネッガー知事も「判決を尊重する」と表明し、全米2番目の同性結婚合法州となりました。ところが、その後に裁判で、この住民投票の有効、無効が争われています。では、随分ともめています。2008年5月に
 
ヨーロッパでは、さらに進んでいて、オランダ世界で初めて異性同士の結婚とまったく同じ婚姻制度を採用、ベルギー、スペイン、ノルウェー、スウェーデンでは認められています。
 
日本では、このような方向での議論はほとんど進んでいません。同性婚を認める法律がないのはもちろん、これを禁止する法律すら存在していません。憲法自体が24条で、「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立」するという表現で、当然の前提として「男女」のみを婚姻の対象としています将来は、欧米のような議論が生じるかもしれません。
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