大阪プライム法律事務所

大阪プライム法律事務所

震災倒産を防ぐには

11.05.14 | ニュース六法

"

東京商工リサーチが5月12日にまとめた全国企業倒産状況で、東日本大震災が影響したと解される経営破たんが、震災2カ月目で86件であったと公表しています。これによると、破産や民事再生などの倒産が46件、事業停止、弁護士一任や破産準備などの実質破たんが40件と分類しています。同社によると、阪神淡路大震災のときと比べても急激なペースで増加しているようです。
倒産を防ぐにはどうしたらいいでしょうか。

 

"

"

震災倒産の原因
大きく分けて「直接倒産」と「間接倒産」があります。前者は工場などの機械設備が津波等で消失するなどして事業が立ち行かなくなった場合ですが、割合的には多くはありません。90%を占める後者は、取引先の被災、商品や原材料等の流通不足、予約キャンセルなどが原因となるものです。両方の混合型もあります。
 
業種別
業種別に見ると、サービス業が最多で14件でした。次いで多いのが製造業(12件)で、以下、卸売業(9件)、小売業(4件)、、建設業(3件)、運輸業(2件)不動産業(1件)で、意外に少なかったのが農・林・漁業でした(1件)。
 
地域分布
地域的に見ると、東北地域が26件ですが、関東地域がより多く33件となっています。近畿地区は7件でした。他に多い順にいうと、北海道6件、九州5件、中部4件、北陸3件、中国1件、四国1件でした。これだけでも、災害の影響が現地だけでなくて、間接的にも全国に広く及んでいることを示しています。
 
倒産を防ぐ
倒産を防ぐためにはどうしたらいいのでしょうか。災害対応として、ぜひ活用されるべきと考える制度を、いくつかご紹介します。
 
■法人に係る破産手続開始の決定の留保
今回の災害で債務超過となった法人に対しては、支払不能等の場合を除き、平成25 年3 月10 日までは破産手続開始の決定をすることができないこととされました。自己破産は入りません。
■中小企業倒産防止共済制度
中小企業倒産防止共済制度に加入している場合、積み立てた掛金総額の10倍を限度に、無利子・無担保・無保証人で共済金の貸付が受けられます。今般の震災で、債務者が振り出した手形等が「震災不渡り」として不渡り処分が猶予となって支払が停止された場合や、取引先(債務者)が死亡又は行方不明等となり、債務者自らでは債務整理手続を行うことが困難な事態になった場合にも適用が拡大されました。詳細は中小企業庁のホームページか、今回のトピックをほ参照ください。
■金融機関の対応
政府は金融機関に対し次の要請を行っています。
①預金通帳を紛失しても名前や住所などが確認できれば預金の払戻しに応じること。②震災により手形の支払いができない場合でも不渡りとしないこと。手形には「災害による」旨の記載をした「不渡付箋」が貼られますが、手形交換所規則に基づく不渡処分(不渡報告への掲載及び取引停止処分)は猶予されます。③借入金の返済猶予やつなぎ資金の申し込みにできるかぎり応じること。④生命保険や損害保険の保険金の支払いを迅速に行うこと。
■未払賃金立替払
災害救助法適用地域に所在し、地震によって事業が停止した中小企業は、会社に代わって未払い賃金の一部が支払われます。
雇用調整助成金
従業員が出勤できない、原材料が入手できない、風評被害により農産物の売り上げが減少したなど、地震被害に伴う経済上の理由によって事業活動が縮小した場合、この助成金の利用が可能です。
■融資
中小企業金融円滑化法が、平成23年度末まで延長されています。金融機関は、返済期限の延長やつなぎ融資に柔軟に応じるよう求められています。また、日本政策金融公庫、日本政策投資銀行、商工組合中央金庫において、融資についての相談窓口を設置しています。(詳細は財務省ホームページ参照)さらに、岩手、宮城及び福島の信用保証協会に75.8億円を貸与し、財務基盤を強化されています。
■下請かけこみ寺
中小企業庁の委託で財団法人全国中小企業取引振興協会が開く下請事業者を対象にした相談窓口。「全商品に放射線測定検査証明を求められた」など、不当な取扱いを受けて困った場合は利用価値があります。
ちなみに、経済産業省は、親事業者及び都道府県下請企業振興協会に対して、東日本大震災により影響を受けている下請中小企業について、できる限り取引関係を継続することや優先的に取引あっせんを行うこと等を要請しました。詳しくは、今回のトピックをご参照ください。
■貿易保険
放射能汚染の風評被害で、輸出相手国における新たな規制の導入等により輸入が制限・禁止された場合や、輸出相手国で違法又は差別的対応を受けて損失が生じた場合、貿易保険から保険金が支払われます。
■株主総会の開催時期
法務省が、当初予定した時期に定時株主総会を開催できない状況にある場合でも、そのような状況が解消され、開催が可能となった時点で定時株主総会を開催すれば、定時株主総会の開催時期に関する会社法や定款の規定に違反しないことになるという見解を公表しています。
■税務上の特例
特例が次々と定められ、4月27日には被災者・企業を支援する税制の特例を定めた法律が施行されました。法人税関係でのポイントは以下の通りです。
①災害により滅失・損壊した資産等の取扱い→損失・費用の額は、損金算入。
②復旧のために支出する費用→被災資産について原状を回復するための費用は修繕費。一部補強となっても修繕費とすると認められる。
③従業員等に支給する災害見舞金品→一定の基準に従い支給する災害見舞金品は福利厚生費として損金算入。
④取引先に対する災害見舞金等→交際費等に該当しないものとして損金算入。
⑤取引先に対する売掛金等の免除等→復旧支援を目的として売掛金、貸付金等の債権を免除する場合、寄附金又は交際費には該当せず損金算入。
⑥取引先に対する低利又は無利息による融資→復旧支援を目的として低利又は無利息による融資をして、通常収受すべき利息と実際の利息との差は、寄附金に該当しない。
⑦自社製品等の被災者に対する提供→被災者救援のため自社製品等の提供費用は、広告宣伝費に準ずるものとして損金算入。
⑧費用に関する取扱い→災害により被害を受けた資産の修繕について一定の要件を満たすものは、被災があった事業年度に災害損失特別勘定に繰り入れて損金算入することができる。

〈以下は震災特例法関係〉
①震災損失の繰り戻しによる法人税の還付→欠損金のうち震災による損失部分を黒字であった事業年度に繰り戻して、対応する税額の還付。
②仮決算の中間申告による所得税額の還付→中間決算を組んで中間申告を行う場合、前払いしている源泉所得税について法人税から控除しきれない分があるときは還付。
③被災代替資産の特別償却→被災資産の代わりに取得した固定資産について、被災前と同一用途に使用する場合、特別償却をすることができる。
④特定の資産の買換えの圧縮記帳→被災区域内外に関連して土地・建物の譲渡を行った場合、譲渡した利益分を圧縮記帳することができる。
⑤中間申告書の提出不要→申告期限の延長により、中間申告書の提出期限と確定申告書の提出期限が同一になる場合、中間申告書の提出は不要。
 
 
 
"

TOPへ