大阪プライム法律事務所

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認定死亡とは?

11.04.13 | ニュース六法

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今回の東日本大震災では、極めて多くの方々が死亡し、行方不明になっています。行方不明の方々の中には、残された家族も多くいます。この家族の方々は、本人を懸命に探しておられますが、ほとんどが未だに見つかっていません。その心中は察するに余りがあります。(Photo by Ms N.Uchida)

こういった場合において、残された家族は、これから生きていくためにも、早期に遺族年金や労災保険の遺族給付を受け取れるようにすることも重要です。しかし、遺体が見つからず、死亡したことが不明なままで、死亡を前提にした手続きがとれるのでしょうか。こういった質問が多くあります。現在は、民法の失踪宣告制度がありますが、これでは1年の経過が必要です。政府は、東日本大震災の行方不明者について、死亡したと推定するのに必要な期間を現行の1年から3か月に短縮する方針を固めました。・・・・(写真または続きを読むをクリックして本文をお読みください)
 

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今回の東日本大震災では、極めて多くの方々が死亡し、行方不明になっています。行方不明の方々の中には、残された家族も多くいます。この家族の方々は、本人を懸命に探しておられますが、ほとんどが未だに見つかっていません。その心中は察するに余りがあります。

こういった場合において、残された家族は、これから生きていくためにも、早期に遺族年金や労災保険の遺族給付を受け取れるようにすることも重要です。しかし、遺体が見つからず、死亡したことが不明なままで、死亡を前提にした手続きがとれるのでしょうか。こういった質問が多くあります。(Photo by Ms N.Uchida)

現在は、民法の失踪宣告制度がありますが、これでは1年の経過が必要です。政府は、東日本大震災の行方不明者について、死亡したと推定するのに必要な期間を現行の1年から3か月に短縮する方針を固めました。この政府の方針は、残された家族が早期に遺族年金や労災保険の遺族給付を受け取れるようにするのが目的です。関係法の改正案を今国会に提出して、早期成立を図るとのことです。

 

失踪宣告

民法の規定では、行方不明者の死亡認定は行方不明になって7年以上、災害時は1年以上が経過してから、家庭裁判所の失踪宣告を受けて行われています。 これによれば、津波などの行方不明者は、災害発生から1年以上たたないと、家庭裁判所が失踪宣告できず、死亡として扱われないため、遺族年金や労災保険の遺族給付が遅くなってしまいます。

 

労災保険の認定死亡規定

一方で、労災保険法と国民年金法や厚生年金法などの年金関係法には、船舶の沈没や航空機の墜落事故で行方不明になった場合は、3か月で死亡したと推定できる規定を設けています。

 

労災保険法10条に、「船舶が沈没し、転覆し、滅失し、もしくは行方不明となった際、現にその船舶に乗っていた労働者若しくは船舶に乗っていてその船舶の航行中に行方不明となった労働者の生死が三ヶ月間わからない場合(中略)には、遺族補償給付、葬祭料、遺族給付及び葬祭給付の支給に関する規定の適用については、その船舶が沈没し、転覆し、滅失し、もしくは行方不明となった日又は労働者が行方不明となった日に、当該労働者は、死亡したものと推定する。」とし、さらに、航空機事故についても同じように定めています。

今回の政府の計画は、被災者支援や復興関連の法案の中で、これらの規定を今回の災害にも適用できるようにするものと思われます。つまり、この船舶が沈没し、転覆し、滅失しの要件を、今回のような津波等の災害に適用しようというものです。

阪神大震災ではこうした法改正は実施されませんでしたが、今回は導入されることになったものです。家族の申請を前提とするとのことですから、これが成立すれば、死亡推定の期間が3カ月に短縮され、行方不明者の家族が申請すれば、遺族年金などは災害が起きた月に遡って受け取れることになります。

岩手、宮城、福島の労働局は避難所などで労災に関する出張相談をしているようですので、そこでの申請も可能です。厚生労働省は、事業主や医療機関の証明書がなくても受理するとしています。

国民年金と厚生年金でも

労災保険法と同様の規定があります(国民年金法第18条の2、厚生年金保険法第59条の2)。

これについても、同じように法改正するとのことです。

 

戸籍法による「認定死亡」

上記以外にも、戸籍法に「認定死亡」という制度があります。これも、生死が不明な者(死体が確認できていない者)を死亡したものとして扱うための制度のひとつです。よく似た制度としては、民法の失踪宣告(後述)がありますが、違う点が多くあります。

認定死亡を定めた戸籍法第89条には、次のように定めています。

「水難、火災その他の事変によって死亡した者がある場合には、その取調をした官庁又は公署は、死亡地の市町村長に死亡の報告をしなければならない。」

これを読むと、死体の確認がない場合も含むかどうかが明確ではありませんが、実務の運用では、その場合でも、死亡したと考えるに充分な状況があれば足りるとされています。

本来は、死亡届には、死亡診断書(死亡証明書)か死体検案書(変死の場合)のいずれかの添付が必要です。これらは医師が死体を確認して作成するのが本来ですが、死体が発見されていないが死亡が確実と思われる場合でも戸籍への死亡の記載ができないと不都合な場合が生じえます。この不都合を排除するために設けられた制度です。これが適用されて死亡の報告がなされると、法律上、死亡したものとされ、戸籍に記載され、死亡者の婚姻は解消され、相続が開始することになります。

 

失踪宣告

これは、民法第30条に定められた規定により、家庭裁判所の宣告によって死亡とみなす制度です。不在者の生死が7年間明らかでないときや、戦地や沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者が、その危難が去ったあと1年間生死が継続して不明であったときに、利害関係人の請求があった場合に、家庭裁判所で審理されて宣告がなされます。

 

生命保険会社の扱い

生命保険各社は、今回の地震で被災して行方がわからず、死亡したとみられる場合には、死亡保険金を支払う方向となっています。残された被災者らの生活再建を支援するためとしています。

ちなみに、災害関係特約については、約款上に地震等による災害死亡保険金、災害入院給付金を削減したり支払わない場合があるとの規定がありますが、今回はこれを適用せず災害死亡保険金等を全額支払いすることとしています。
 

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