大阪プライム法律事務所

大阪プライム法律事務所

中小企業金融円滑化法案の公表

09.11.15 | 企業の法制度

亀井金融相が提唱した「モラトリアム法案」の具体策として、中小企業向け融資や個人向け住宅ローンの返済猶予を盛り込んだ「中小企業金融円滑化法」の最終案が公表されました。政府は臨時国会に提出し、年内の施行を目指しています。 

一時は、金融機関に強制的に返済を猶予させる「モラトリアム」法案のように言われましたが、実際はどのようなものでしょうか。(ぜひ、続きをお読みください) 

(日銀大阪支店 Photo by (c)Tomo.Yu )

亀井金融相が提唱した「モラトリアム法案」の具体策として、中小企業向け融資や個人向け住宅ローンの返済猶予を盛り込んだ「中小企業金融円滑化法」の最終案が公表されました。政府は臨時国会に提出し、年内の施行を目指しています。

一時は、金融機関に強制的に返済を猶予させる「モラトリアム」法案のように言われましたが、実際はどのようなものでしょうか。 (日銀大阪支店 Photo by (c)Tomo.Yu )

この法案(中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律案)のポイントを簡潔に言えば、モラトリアムのイメージが薄れ、2011年3月までの時限立法とし、金融機関に対し、返済期限の延長など貸し付け条件の変更に応じる努力をするよう要請したものとなっています。信用保証制度を活用し実質的に政府保証を付けることで、金利を含めた返済猶予もできる仕組みも用意しました。つまり、一言でいえば、金融機関の貸し付け条件変更努力義務を課したものです。

 これを利用して、貸し付け条件の変更を要請できるのは、中小企業です。金融機関や大企業の子会社を除かれますが、酒造組合や医療法人などは含まれます。住宅ローンを抱えた個人も対象となっています。

この法案での対象となる金融機関は、銀行や信金、信組、農協などに限定されています。金融庁の金融検査マニュアルや監督指針の改定で不良債権の基準を緩和するなど、金融機関が申し込みに応じやすい環境を整えるようです。また、金融機関には、返済猶予などの申し込みがあった際に適切に対応するよう実施状況や体制整備の開示を義務付け、金融当局への報告制度と、虚偽報告に対する罰則規定が設けられています。 

このように、間接的な措置はされてはいますが、あくまでも返済猶予に応じるかどうかは、金融機関に判断を「丸投げ」したものとなっています。このために、実効性がどの程度のものか、気になるものです。金融庁が検査・監督に力を入れ、虚偽開示の罰則適用を積極的に示せば、結構、効果は高いかもしれません。ただ、これで企業体質の改善ができればいいですが、結局、これができないままで、政府保証と形で税金の投入がなされれば、モラルハザードの面での課題が浮上するかもしれません。


中小企業金融円滑化法案の概要

第173回国会における金融庁関連法律案(金融庁ホームページ)
http://www.fsa.go.jp/common/diet/173/
■目的
・中小企業者の事業活動の円滑な遂行及びこれを通じた雇用の安定
・住宅資金借入者の生活の安定
これによって、国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展を図る。
■中小企業者から債務の弁済に係る負担の軽減が申込みがあった場合等の金融機関の対応
債務者の事業の改善又は再生の可能性等を勘案しつつ、できる限り、貸付条件の変更、旧債の借換え、債務を消滅させるための株式取得等を行うよう努める。
(金融機関の範囲)
銀行、信金・信組・労金・農協・漁協及びその連合会、農林中金
(中小企業者の範囲)
業種:従業員規模・資本金規模
製造業・その他の業種:300人以下又は3億円以下
卸売業:100人以下又は1億円以下
小売業:50人以下又は5,000万円以下
サービス業:100人以下又は5,000万円以下
金融業その他政令で定める業種は除かれる。
■住宅資金

借入者から債務の弁済に係る負担の軽減の申込みがあった場合の金融機関の対応
債務者の財産および収入の状況を勘案しつつ、できる限り、貸付条件の変更、旧債の借換え等を行うよう努める。
■金融機関自らの取組み
金融機関はその責務の遂行するための体制整備を行い、実施状況と体制整備状況等の概要を開示する。また実施状況の詳細を行政庁に報告する。、
■行政上の対応
行政庁は、金融機関の報告をとりまとめて公表する。
金融機関に対する検査及び監督の実施にあたり、この法律の趣旨を十分に尊重する。
■政府の責務
信用保証制度の充実を図る。 

TOPへ