大阪プライム法律事務所

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選択的夫婦別姓の導入へ

09.10.12 | 企業の法制度

民主党は、8月の総選挙でのマニュフェストで「選択的夫婦別姓制度の早期導入」を明記していました。 

このため、民主党政権は、速ければ来年の通常国会で、制度導入に向けた民法改正案を提出する計画です。
(夫婦の石像 Photo by (c)Tomo.Yu )

民主党は、8月の総選挙でのマニュフェストで「選択的夫婦別姓制度の早期導入」を明記していました。このため、民主党政権は、速ければ来年の通常国会で、制度導入に向けた民法改正案を提出する計画です。

(夫婦の石像 Photo by (c)Tomo.Yu )

 

現行制度 現行の民法は結婚すれば夫婦の姓(民法上では「氏(うじ)」といいます)を夫か妻のどちらかの姓に統一するよう定めています。これを「夫婦同氏原則」(民法750条)といいます。これにより夫婦は婚姻届出の際に、どちらの氏(姓)にするかを決めて届け出をしないとなりません(戸籍法74条1項)。これらの規定は夫婦ともに日本国籍を有する場合に適用されます。 

この結果、日本人夫婦の場合は、婚姻期間中は、公文書上では、夫婦が異なる姓となることはありません。そのために、姓を変更する側(妻側が圧倒的に多い)が、仕事などで旧姓を使用し続けたい場合などは、婚姻届を提出せず改姓を回避する「事実婚」や、婚姻届を出した上で改姓したほうが旧姓を使う「通称使用」などの涙ぐましい努力で、事実上別姓を続けています。しかし、事実婚は相続問題では正式な婚姻とは違う扱いになるし、通称使用は、日常使用と公文書とが異なるため、いろいろな場面でややこしいことになっています。 

改正の動き このため、「夫婦同姓は、現実問題として女性のアイデンティティとキャリア維持などに障害となる」として、夫婦同氏の原則の緩和を求める声が高くなり、「選択的夫婦別氏制度」の導入など民法750条の改正が提案されてきました。法制審議会も、96年に、その方向での改正を答申しました。その一方で「家族の一体感を損ない、家族崩壊につながる」などとして、現状制度の維持を望む人も多く実在するために、長く論争が続いてきました。 

これまでも、民主党は他の野党と一緒に民法改正案を国会に提出してきましたが、国会での廃案が続いてきました。そのうち、世論も変化してきたためか、01年に内閣府が行った世論調査では、夫婦別姓制度に賛成する意見が42.1%、反対が29.9%と、賛成意見が多くなりました。

この改正案は、「夫婦別姓」を押し付けるものではなくて、あくまでも「選択肢」の一つとして加えるものであることと、現実的に別姓を強く求める者がいる以上は、その選択肢を制度的に奪うことに合理的理由はないように思います。 

他国は 世界的に見ても、氏と名の組み合わせで個人を特定する制度や習慣を持つ国々では、夫婦別氏あるいは旧姓の併用を認めています。日本のような制度を持っていたトルコやタイなどで、近年ともに法改正があり、氏統一の規定が無くなりう、「夫婦別姓の選択の自由が全くないのは、世界広しといえども日本だけ」と言われるようになりました。 

民法改正案の骨子 民主党と法務省がまとめている民法改正案の骨子は、次のようなもので、おおむね法制審議会答申に沿った内容となっています。(1)結婚する際に夫婦が同姓にするか別姓にするかを決定できる。(2)結婚可能年齢を男女とも18歳(現行では女性は16歳)にそろえる。 

子供の姓の問題 夫婦が別の姓を持つ場合の子どもの姓を決める方法については、民主党と法務省の立場が異なっていました。これまで民主党は「出生時に選択できるようにする」としていましたが、法務省は「2人以上の子どもが生まれる場合には姓を統一する」とする方針でした。

これに関して、千葉景子法相は、10月9日の閣議後の記者会見で、別姓夫婦の家庭に複数の子供がいる場合は姓を統一させる方向で法案作成を進めたいとの考えを示しました。法相によると、子の姓の統一を打ち出した96年の法制審議会(法相の諮問機関)の答申案が「いろんな意見を集約した結論であり、(政府案の)ベースになる」と指摘しました。これで、この法案の提出は、加速されるものと思われます。

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