大阪プライム法律事務所

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「裁判員休暇」を導入しましたか?

09.04.12 | 企業の法制度

2009年5月からスタートする裁判員制度を受けて、昨年から、いくつかの企業から、就業規則などで裁判員休暇制度を設ける相談がありました。春闘を経て中小企業でも導入が広がっていますが、皆さまの事業所でも導入はなされたでしょうか。候補者になった会社員の方も含め、一読ください。

2009年5月からスタートする裁判員制度を受けて、昨年から、いくつかの企業から、就業規則などで裁判員休暇制度を設ける相談がありました。春闘を経て中小企業でも導入が広がっていますが、皆さまの事業所でも導入はなされたでしょうか。

 

休暇取得の権利 裁判員の仕事で休みをとることは、労働基準法7条で、「選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない」 との規定があるため、会社は従業員が裁判員の職務を執行するために必要な時間を与えなければなりません。そして、裁判員となったことで会社を休んだことを理由に解雇などの不利益取扱をすることは、裁判員法第100条で禁止されています。

特別の休暇制度 このように、会社は、裁判員の職務のために必要な時間を与える義務はありますが、特別の休暇制度を設けることや、その休暇を有給とすることについては、法的には義務付けられていません。従って、裁判員休暇制度を定めること、有給か、無給かは、会社の判断に委ねられています。 ただ、最高裁としては、有給休暇制度の導入への協力を求めていますし、できれば、各企業での導入を検討していただきたいところです。就業規則で、休暇の取扱い(付与の仕方、有給か無給か、申出方法等)を定めておくとよいと思います。

具体的には、まず、「裁判員休暇の期間は特別有給休暇とする。」との規定を置くことになりますが、さらに、何日間の特別休暇を付与するかを定めておく必要があります。ただし、必要な休暇日数は、裁判員等として関与する事件等によって異なりますから、「裁判員等の職務を遂行するために必要な日数」と抽象的に定めておくことになります。また、特別休暇を有給とするか無給とするかを、給与規定等で定めておく必要があります。有給の場合は、支給額も定めておきます。

 

なお、「裁判員候補者」として裁判所に出頭しても、全員が裁判員等に選任されるわけではなく、不選任となって、半日で終了する場合もあります。このような場合に備えた取扱いについても定めておく必要があります。例えば、「不選任となったときは、休暇は当日のみとする。」とかが考えられます。

ちなみに、従業員が裁判員候補者として出頭したときは、呼出状中の出頭証明書欄に証明スタンプを押印してもらえ、また、裁判員として職務についたときは、その旨の証明書を発行してもらえます。このため、従業員が裁判員の職務についた際には、こういった書類を会社に出してもらえば、よいかと思います。

 

年次有給休暇との関係 有給の裁判員休暇制度を設けない場合、従業員が裁判員につく日を、本人の申出により年次有給休暇として取得することは問題ありません。ただし、会社側から、その日を年次有給休暇として休むように指示することはできません。年次有給休暇をいつ取るかは、原則として労働者の自由だからです。(労働基準法第39条4)

裁判員の日当・交通費 選任手続きや審理・評議の時間に応じて決められています。ちなみに、「裁判員候補者」・「選任予定裁判員」は1日当たり 8,000円以内、「裁判員」・「補充裁判員」は1日当たり10,000円以内と決められています(裁判員の参加する刑事裁判に関する規則7条)。裁判員候補者が、選任手続きのため裁判所へ出頭し、裁判員に選任されず、午前中で終わった場合は半額の4000円程度が支払われると聞いています。

有給とした場合に、日当と給与の両方を受け取ることになり、問題にならないかについては、「日当は裁判員の職務に対する報酬ではありませんので、裁判員が有給休暇を取って裁判に参加した場合でも、日当をお受け取りいただくことに問題はありません。」(最高裁HP)

交通費は、原則として、最も経済的な(安価な)経路・交通手段で計算した額が旅費として支給されます。 鉄道・船舶・航空はその区間の運賃、上記以外(バス・徒歩・自転車)は距離に応じて1kmあたり37円となっています(裁判員の参加する刑事裁判に関する規則6条)。実際にかかった交通費が支払われるわけではありません。

裁判員日当の確定申告 日当は、職務にあたっての損害の一部を補償するものですので、給与所得及び一時所得のいずれにもあたらず、「雑所得」として扱われます。このため、裁判所は源泉徴収を行いません。給与を1か所から受けていて,年末調整をする場合は、この日当による雑所得の金額など各種所得金額(給与所得と退職所得を除きます。)の合計額が20万円以下の場合、所得税の確定申告を行う必要はありませんが、一定の場合は所得税の確定申告を行う必要がある場合も考えられます。詳しいことは税務署や税理士にご確認ください。

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