大阪プライム法律事務所

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民法(債権法)の抜本的改正論議が進んでいます

09.03.14 | 企業の法制度

現在、民法典の債権法を中心とする領域について、抜本的改正が検討されています。その準備作業として、学者や法務省民事局参事官等で構成される「民法(債権法)改正検討委員会」が、平成18年10月に設立され、議論が重ねられています。本年3月には「改正の基本方針(改正試案)」を決定し、春のシンポジウムで公表されるようです。

(Photo by (c) C.MIKI)

現在、民法典の債権法を中心とする領域について、抜本的改正が検討されています。その準備作業として、学者や法務省民事局参事官等で構成される「民法(債権法)改正検討委員会」が、平成18年10月に設立され、議論が重ねられています。本年3月には「改正の基本方針(改正試案)」を決定し、春のシンポジウムで公表されるようです。

(Photo by (c) C.MIKI)
 

改正の目的 今回の民法(債権法)改正は、民法を市民にとって理解しやすい法典とすること、現在の社会経済情勢に適合させ取引ルールの国際的調和を図ること、解釈で認められてきていた部分を明文化し基本的ルールとして透明性を高めること、などを目的としています。特に、これまで当然のこととして規定されていなかった事項や、判例上認められてきた理論を明文で蜆定することが検討されています。 

検討内容

(1)債務不履行責任 これまで履行遅滞、履行不能、不完全履行と3つの類型に分類されてきましたが、改正検討委員会では、これを統一化して理解すべきと指摘しています。債務不履行に基づく解除の要件については、履行不能の場合でも債務者の責めに帰すべき事由の有無にかかわらず「重大な不履行」を解除要件とすることの提案がなされています。

また、債務不履行に基づく損害賠償請求について、これまでは「債務者の責めに帰すべき事由」(=債務者の故意又は過失による不履行)が必要とされてきましたが、改正検討委員会委員会では、客観的な不履行の事実があれば損得賠償請求権が発生し、「契約において債務者が引き受けていなかった事由」によって債務不履行が生じた場合には損害賠償責任を免除するという考え方の提案がなされています。 

(2)債権者代位権・詐害行為取消権 債権者代位権は、事実上の優先弁済機能となっていることへの批判から、制度自体を廃止するか、保存行為に限定して存続させるか、一般債権者のための責任財産保全のための制度及び非金銭債権の債権者の権利の間接・直接の実現のための制度として存続させるか、という3つの方向性で検討がされています。詐害行為取消権でも、事実上の優先弁済機能となっていることへの批判から、責任財産保全のための制度ととらえて、要件・効果を明確化することとしています。その要件(受益者の悪意のみで足りるか、受益者及び債務者の悪意が必要か等)と効果(絶対効・相対効等)は、この制度をどのように捉えるかで大きく2つの理論が示されています。 

(3)契約 貸借型契約、役務提供契約、継続的契約の分類規定を設けて、それぞれに共通する規範規定をおくことが検討されています。また、新しい典型契約としてファイナンス・リース契約の規定がおかれる見込みで、これ以外に、診療契約やライセンス契約等の規定をおくことも検討されています。 

(4)消滅時効 現行民法の「債権の短期消滅時効」などの規定によって、債権の時効期間が6ヶ月から20年まで複雑となっていて、実務では常に混乱ぎみでした。その区別の合理性自体が疑わしいと思われていたこともあって、期間の統一が予定されています。また、同じ理由から、債務不履行による損害賠償債権、不当利得返還債権、不法行為債権などの法定債権についても同一の時効期間として設定することが検討されています。消滅時効の効果についても、援用による遡及的消滅という従来のままの効果にするか、援用をしなくても時効期間満了によって効果を生じさせるかといったことが議論されています。

 

今後について

民法(債権法)改正は、国民社会に大きな影響を及ぼすものであることから、慎重な議論が必要であることは言うまでもありません。特に、民法に消費者法の理念・考え方を取り込むか否かは重要な論点であり、消費者保護のためにいかなる立法のあり方が望ましいかという点での充分な議論が必要です。なお、気になる点としては、改正試案作成にあたる改正検討委員会は、主として法律学者による学理的観点で進められていますが、弁護士その他実務法曹の意見も充分に取り入れた上で、検討を進めるべきだろうと思います。  

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