大阪プライム法律事務所

大阪プライム法律事務所

子どもとの面会

12.10.14 | 企業の法制度

"

離婚時の子の監護に関する改正民法が、今年の4月1日から施行されています。

改正後の民法は、未成年の子どものいる家庭で親が離婚する際、養育費と親子の面会交流について取り決めをするよう規定しました。養育費と親子の面会交流は、これまでも家庭裁判所の調停や審判で認められてきたが、これまでは法律上の規定がなかったのです。今回、これを明記したことになります。その後の現状はどうでしょうか。

 

"

"

改正内容
改正前の民法では、「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者その他監護について必要な事項は、その協議で定める。」としか明記されていませんでした。

改正点は、以下の2点です。
①子どもの監護について協議で定めるべき事項として、「面会交流」と「養育費の分担」を明記しました。
②父母が子の監護について必要な事項を定める場合には、「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」としました。

ただ、協議すべきことを定めただけであって、面会交流の権利化、離婚後の共同親権化などは見送られました。

裁判所や弁護士が関与する離婚の場合は、その多くで養育費や面会交流の問題は取りきめの対象にしていますが、当事者だけで進める「協議離婚」が9割を占めている状況では、これらが決められていないケースが多くあります。その多くが離婚後に困っていると思われます。

離婚届書式の変更
この状況を少しでも改善するため、この改正を受けて、離婚届には、親子の面会交流と養育費の分担について「取り決めをしている」「まだ決めていない」のいずれかに印をつける項目がでました。
ただし、チェックを入れるかどうかは本人の自由で、取り決めがなくても届け出は受理されていて、役所の窓口では、記入をするような指導はなされていません。これは、この変更について法務省は「法改正を周知するための措置」との説明し、離婚届を受理する要件ではないとしているからです。(このことから、「子の権利を守るための法改正なのに、実効性が乏しい」との声も出ていて、国がガイドラインを作り、行政が窓口で情報を提供すべきだとの意見もあります。)
 
現場での感覚
ただ、今回の民法改正は、実は、実務家の間では、あまり注目されていません。知らない弁護士もいるほどです。というのも、今回の改正は、これまでなされてきた家裁での実務を明文化しただけであるからです。ただ、これを契機に、面会交流についての、関与者を含む関係者、当事者のこれに対する意識が高まり、相談件数が増えてきていると思われます。

民間の面会交流支援団体
今回の民法改正で、離婚後に連絡を取り合うことが難しくなった父母の間に立ち、面会交流を援助する民間団体が重要性を増しています。

離婚事件で協議が難航し、特に、離婚後に子どもと会いたいという「面接交渉」をめぐって争いが過熱したような場合は、離婚成立後の対応に不安が生じることが多々あります。親権者になった側が、子どもを他方の親に会わせた際に、そのまま子どもを連れ帰られるのではないかという不安から、子どもに会いたいという要求を拒否することがよくあります。このような不安から、事件を処理した双方の代理人弁護士が同席して会わせるといったようなこともなされる場合があります。しかしながら、離婚調停中ならばまだしも、離婚が成立した後も、ずっとこれに弁護士が関与していくことも困難です。そういった意味からも、これに継続的に関わってもらえる民間の面会交流支援団体の関与は、非常に意義のある活動であると思います。

公益社団法人「家庭問題情報センター(エフピック)」
ここは、こういった民間の面会交流支援団体の一つです。家庭紛争の調整や非行少年の指導に長年携わってきた元家庭裁判所の調査官などが、その経験と専門知識、技法を活用して、 健全な家庭生活の実現に貢献することを目的として設立されています。

現在のところ、東京、大阪、千葉、福岡、宇都宮、名古屋、松江、広島で、ファミリー相談室という名称で活動をしています。夫婦仲の調整や離婚などの夫婦の問題、離婚後の子をめぐる問題、いじめなど子育ての悩み、ひきこもりなど成人した子の悩み、老親をめぐる兄弟間の悩み、職場の人間関係や男女関係のトラブルあるいは生き方や性格の悩みなど、人間関係、子育てやこころの問題についての相談に応じています。今回の法改正後は、特に協議離婚した親の支援も積極的に取り組んでいますが、非常に対応件数が増えているようです。このため、こういった団体への公的支援や、自治体での取り組みなどへの必要性が高まっています。

NPO法人「FLC安心とつながりのコミュニティづくりネットワーク」(大阪市)
ここは、DV被害を受けた母子を対象にした心理教育プログラムの実施などをするNPOですが、Vi-Project(ビー・プロジェクト)と称して、子どものためという視点から、親の離婚後、一方の親と離れて暮らす子どもの気持ちや成育に添った子どもと非養育親・家族との面会・交流サポートをしています。

東京都の事業
厚生労働省は、今年度から面会交流の支援事業をする自治体に費用の一部を補助する制度を始めています。しかし、これを利用して事業を始めたのは、現在のところでは東京都だけです。多くの自治体側では、慣れないこともあり、トラブルを恐れてためらっているのが現状のようです。

"

TOPへ