大阪プライム法律事務所

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「中小企業経営承継円滑化法」が施行されました

08.10.13 | 企業の法制度

中小企業の経営者(オーナー)は、子らへの事業承継を考え悩んでいませんか。

相続時の遺産分割問題や資金需要、税負担の問題から生じている中小企業の減少に歯止めをかけるため、経営者死亡の事業承継が円滑に進められるよう支援する法律ができ、一部が施行されました。(Photo by (c)Tomo.Yun)

中小企業の経営者(オーナー)は、子らへの事業承継を考え悩んでいませんか。

相続時の遺産分割問題や資金需要、税負担の問題から生じている中小企業の減少に歯止めをかけるため、経営者死亡の事業承継が円滑に進められるよう支援する法律ができ、一部が施行されました。 

中小企業経営承継円滑化法

これは、先の通常国会で成立した「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(略称「中小企業経営承継円滑化法」)です。この法律の柱は以下の3つですが、②③が10月から施行、①が来年3月から施行です。 

①遺留分に関する民法の特例(平成21年3月1日施行)

民法には、法定相続人に一定の相続権を保証する「遺留分」制度があり、たとえ遺言書で特定の承継予定者に事業資産を集中させようとしても、遺留分として保護された一定割合の相続権が他の相続人に(被相続人の兄弟姉妹は除く)あるため、その権利を行使された場合、自社株や事業用資産まで遺産分けをしなければならなくなり、事業後継者が事業を継続することが困難になる場合も出てきます。そこで、一定の要件を満たす中小企業者の後継者が、先代経営者の遺留分権利者全員と合意を行い、所要の手続(経済産業大臣の確認及び家庭裁判所の許可)を経ることを前提に、以下の遺留分に関する民法の特例の適用を受けることができることになりました。

(1)後継者が先代経営者からの贈与等により取得した株式等について、遺留分を算定するための財産の価額に算入しないこと

(2)後継者が先代経営者からの贈与等により取得した株式等について、遺留分を算定するための財産の価額に算入すべき価額を合意の時における価額とすること 

②金融支援措置(平成20年10月1日施行) 

代表者の死亡等で経営の承継が起きた際に、事業継続に何らかの支障が生じていると認められる場合、経済産業大臣の認定を受けた場合において、以下の支援が受けられるようになりました。

(1)中小企業信用保険法に規定する普通保険等を別枠化する

(2)株式会社日本政策金融公庫及び沖縄振興開発金融公庫が必要な資金を貸し付けることを可能とする

 

③相続税の課税についての措置(平成20年10月1日施行)

事業後継者にとって大きな悩みの種は「自社株相続に係る相続税」です。高い相続税を支払って後継者に事業を継がせることは大変なことでした。特に、業績の良い会社ほど、非上場株式の評価額が高くなるため、相続税額が多くなります。一方で非上場株式なので、換価しにくく、結果として納税が困難となることが多くありました。こうなると,株式の物納やあるいは相続放棄・廃業へと至ってしまい、せっかく長年築き上げた事業が消えてしまい、社会にとっても大きな損失となっていました。このような悩みを解消して、事業承継がスムーズに行くよう、平成20年度中に相続税の課税について必要な措置を講ずるということが定められました。

これについては、後継者が相続した非上場株式に係る相続税について、特定の要件を満たす場合には税額の80%分の納税を猶予する制度を、平成21年度税制改正で創設することが予定されています。これが創設されれば、施行は通常であれば平成21年4月1日からですが、平成20年10月1日に遡って適用される見込みです。

Photo by (c)Tomo.Yun(http://www.yunphoto.net)

 

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