大阪プライム法律事務所

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「予備試験合格者」から初の司法試験合格

12.09.16 | 企業の法制度

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法務省は9月11日、2012年度の司法試験の結果を発表しました。8387人の受験者に対し、合格者は2102人で、合格率は25.1%でした。

今回から法科大学院を修了しなくても受験できる「予備試験」経由の合格者58名が出ました。予備試験そのものは、昨年の平成23年度から開始されましたが、この予備試験を経由した合格者が出たのは、今年が初めてでした。合格率は68.2%で、いずれの大学院の合格率よりも高いという結果が出ました。この予備試験とはどういうものか、ご存知でしょうか。

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今年の合格者数は、法科大学院修了者を対象とした制度としては最も多く、下がり続けた合格率も初めて上昇に転じました。男女比では、男性が1557人、女性が545人、合格者の平均年齢は28.5歳、最年長合格者63歳、最年少21歳でした。法科大学院修了から5年以内に3回という受験制限があり、今回の試験で3回目の不合格となった1415人が受験資格を失いました。

新司法試験の導入と「予備試験」
法科大学院制度ができた際に、それまでの旧司法試験による合格者と、法科大学院修了者のみを対象とした新司法試験による合格者とが併存してきました。いずれも司法研修所に入って修習をするのですが、研修所の入所期に合わせて、前者を「現行○○期」、後者を「新○○期」と呼んで区別していました。そして、今年度から旧司法試験が完全に廃止になり、法科大学院修了者らを対象とする司法試験のみとなりました。

ところが、法科大学院に入学して学ぶためには大きな経済的負担がかかる事実があります。このため、経済的事情などで法科大学院に通えない人を法曹の途から閉ざすことへの問題から、法科大学院を経ていなくても司法試験を受ける道を設けようということになりました。これが予備試験というものです。 

予備試験は、司法試験法第5条第1項で、法科大学院課程の修了者と同等の学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養を有するかどうかを判定することを目的とし、短答式及び論文式による筆記並びに口述の方法により行うものとされています。

このように、予備試験は、法科大学院修了者と同等の学識を持つかどうかの判定試験です。この試験に合格した者は、司法試験の受験資格を得ることができ、昨年(平成23年)から実施されています。 

昨年の予備試験には、受験者は6477人で、116人が合格しました。合格率は1.8%の狭き門でした。法務省によると、合格者の内訳は男性103人、女性13人、平均年齢は31.6歳、最年長59歳、最年少20歳です。職種別では、あくまでも自主申告ですが、大学生40人、無職32人、公務員13人で、法科大学院修了者19人、現役の法科大学院生8人でした。

この予備試験合格者116人のうち85人が、今回の司法試験を受け、58人が合格したわけです。合格率は68.2%と高いものですが、そもそも1.8%という門を潜り抜けてきた方々です。 

予備試験に合格すれば、法科大学院を修了した者と同じ司法試験の受験を得ることができます。つまり、合格後の最初の4月1日から「5年内に3回」の範囲内に限って司法試験を受験することができます(司法試験法4条1項2号)。予備試験の受験資格について制限はなく、誰でも受験することができます。 

両方の受験資格を持った場合
法科大学院修了の司法試験受験資格と、予備試験合格の司法試験受験資格を両方持っている場合、一方の受験資格で受験すると、その受験にかかる受験資格に対応する受験期間(5年間)はもう一方の受験資格では受験できなくなります(司法試験法4条2項前段)。5年を経過した場合であっても、最後に司法試験を受験してから2年経っていない場合には、もう一方の資格では受験できません(同法4条2項後段)。 

予備試験に対する議論
このように、予備試験の本来の趣旨は、経済的事情などで法科大学院に通えない人も法曹になれるようにというものでした。したがって、この判定が適切に行われて、法科大学院を中核とする新たな法曹養成制度の理念を損ねることのないようにする必要があると言われています。しかし、受験資格が制限されていないため、制度が本来想定する「経済的事情や社会的経験」のある受験者よりも、むしろ旧司法試験受験者や法科大学院修了者で受験回数制限内に合格できなかった者、また受験予備校で予備試験と本試験の受験トレーニングを積んで受験する受験者も多く出ることが予想されます。今後の予備試験の内容や難易度によっては、こういった受験者層が大量に発生し、バイパスルートが拡大して、法科大学院を法曹養成の中核とした理念が損なわれるといった危惧が強く言われています。この点から、予備試験は中止すべきであるとか、制限していくべきであるという批判がなされています。 

他方で、現在の法科大学院の新司法試験での成果を考えると、合格率が低迷し、合格率上位校ですらせいぜい半分、低位校になると目を覆いたくなる状態で、合格者の中には能力・知識面で不安な者が多いといった意見も出ていて、法科大学院至上主義への批判も多くあります。そこに学費の面で多額の負債を背負うリスクもあるならば、大学在学中に早く司法試験を受けたいとか、仕事と両立して会社から収入を得ながら法曹を目指せる予備試験を目指そうという傾向が出てきて当然であるから、予備試験の枠を拡大すべきという声があります。 

これらの議論は、予備試験を経た合格者の年齢、学歴、経歴などを見ながら、予備試験が本来の制度趣旨に沿ったものとなっているかどうかについて、検証していかなければなりません。その際には、真の「法の支配」の担い手の育成、法曹の養成のあり方がどうあるべきかの視点が大事だろうと思います。

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